第92話 二度目の試練②

 こちらの飛んでくる炎をまとった小さな岩石。


 どれも吸収できないまま避けるだけとなっていた。


 炎はそれほど速いモノではないので歩いて避けることもできるが、このまま時間が経過すると暑さで体力をどんどん奪われてしまいそうだ。


 それにリンがいない以上、水を飲めないのも痛い。これだけ暑いところならあと十分くらいしか活動できないと思われる。


 念のためガチャ画面を確認してみると、やはり前回同様特殊な画面だった。


《ポイント:0》

《1連を回す:100ポイント》

《10+1連を回す:1,000ポイント》

《100+20連を回す:10,000ポイント》


 前回は、ガチャポイントを獲得すると《魔女ガチャ》と表記されたはず。今回は、火竜ガチャとでも表記されるのだろうか。


「エムくん!」


 マホたんが俺を呼ぶ。


「ちょっと試したいことがあるよ! リリナのところに炎が行くようにして!」


「私!?」「リリナに!?」


「時間がないから早く!」


 仕方がないので言われた通り、リリナに炎が向けられるようにする。


 どうしたのかなとみんなで見守る。


 炎は連続というよりは、ポツンポツンと放たれるので少し飛んで避けることだって難しくなさそう。


 炎一つがリリナに近づいていった。


「リリナ! 思いっきりやっちゃって!」


「…………しゃおらああああ!」


 大きな声と共に飛んできた炎――――いや、正確には中にある岩石を手に持っていた長い鉄棒で叩いた。


 バギッと石が壊れる音が響いて、その場で炎が消え去った。


 えっ……あれ壊せるのかよ……。


『脳筋聖女さすがwwww』

『おいっす~また緊急配信でびっくりしたわ!』

『火山ダンジョンにこんなステージあったんだな? フロアボス?』


 石が壊れると共に、黒い文字コメントが流れる。


 試練はまた緊急配信になるんだな。


「以前あった試練ってやつだぞ!」


 そういう、前回は余裕がなかったから気づかなかったけど、いつもなら配信カメラがコメントを映してくれるが、これはどうなっているんだ?


 だって、配信カメラはどこにも見当たらないし、コメントもカメラを中心に見えるのではなく、ステージにまばらに表示されている。


『またあの時と同じか! エム氏頑張れ!』

『前回のこと思い出すな……気を付けろよ!』


「おう! ありがとうな!」


「エムくん! ポイントはどうなった!?」


 ん? ポイント?


 リリナが炎を叩き壊しているのを指差すマホたん。


 ハッとなって急いでガチャ画面を確認する。




《火竜ポイント:100》




「っ!? ポイントが増えたぞ! 炎の中の石を壊せばポイントが増えるみたいだ!」


「よ~し! ばんばんリリナに向かって炎を飛ばした!」


 そこは自分じゃなくてリリナかよ!


『脳筋聖女頑張れ!!』


「私ばかり……!」


『頑張ったら酒貰えるかも?』


「エムくん! 私から離れないで!」


「エムくん! 私にも炎を送ってちょうだい! お願いいいいい!」


 こいつら……試練だというのにそれでも酒が大事らしい。


 ひとまずリリナに直撃しないように少し横を通り過ぎるくらいにしてポイントが貯まるのを待つ。


 マホたんは悔しそうにしているが、まだこれで終わるとは思わない。


「最初は十連を引く! たぶんそれで敵が強くなると思うから、みんなそのつもりでいて!」


「「「了解!」」」


 ふと見たシホヒメが少し心配そうに俺を見つめていた。


「あ~マホさん! 一つ頼みがある! 魔法で壊せるか試してくれる!?」


「分かった!」


 それからリリナに向かう炎の一つに氷魔法と雷魔法二つを試してみたマホたんだったが、やはりどれも効かなかった。


 やはり、棒で叩き壊さないといけないんだな。


 それから十回程繰り返し、1,000ポイントが貯まった。


「よし! 十連いくぞ!」


 さっそく十連を引く。


 現れたガチャ筐体は禍々しい火竜とは違って、赤色竜をかたどった帽子を被った筐体だった。


 出てきたガチャカプセルは、当然のように黒十個と白一個だった。


『また最低保証かよwww』

『さすが元底辺配信者やんww』

『期待を裏切らない男。エム氏』


 カプセルから現れたアイテムは、金色に輝く小さな矢が登場した。


 大きさは小指くらいのサイズ。ただ、金色に輝いているので置物として持っておきたいくらいだ。


 そして、白からは矢より三倍くらい大きい棍棒が出てきた。それでも二十センチくらいなのでかなり小さい。


『光り輝く矢と棍棒ww』

『なぜ矢と棍棒? てか黄金なの面白すぎるww』


 俺も不思議だなと思いながら、矢と棍棒を投げつけてみる。


 矢十本が真っすぐ飛び、棍棒がくるくる回って火竜に向かって飛んでくる。


 火竜に当たると、痛そうに咆哮を上げた。


 むろん、それによってまた凄まじい音圧が広がる。


「み、みんな! 気を付けて!」


 みんなその場で地面にうずくまって音圧を耐え凌いだ。


 六つあった火竜の頭のうち、三つが取れて溶岩の中に落ちていった。


 そして火竜はより凶暴化した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る