第91話 二度目の試練①
目の前に繰り広げられるのは、猫耳のナナと兎耳のアヤによるダブルアタック。
一言でいえば――――
「アヤも楽しそうにしているね」
「やっぱり兎耳も付けると身体能力が激増するみたいだな。シホヒメも付けてみたかった?」
「うん。すごく付けてみたいけど、兎耳はもうアヤのだし、私は次に出たのがいいな~!」
「「私達も諦めないわよ」」
「何とかみんなの分を引きたいね。ガチャもたくさん回しているし、いずれ出ると思うから、仲良くな」
「「「は~い!」」」
それからどんどん火山ダンジョンを進み、今日も配信終わり間際に百連を引いたら、めぼしい物は何も出なかった。
それとやはり火山ダンジョンは進むペースが非常に遅い。
暑さや傾斜がかなり体力を奪ってくる。
今日も一日中進んで、二層分くらいしか進められなかった。
◆
火山ダンジョンに来てから五日目。
十層までしかないのが救いだ。
今日の夜にはフロアボスに着く計算になるのだが――――十層への入口の前に一度休憩を取る。
これはシホヒメからの提案で、以前あった試練のことを思い出したからだ。あの時もいきなり試練が始まって飛ばされてしまった。それを踏まえて、また飛ばされても問題ないように最下層の入口前では休憩をすることになっている。
「火山ダンジョンも今日でおさらばか~やっとだね~長かった……」
「まだ十層が残ってるからまだまだ半日はかかるし、ダンジョンの前に夕飯にして、明日の朝に挑戦する感じでしょう?」
「このタイミングだとそうなりそうだね」
「え~着いてすぐにフロアボスと戦おうよ~」
駄々こねる子供みたいに口を尖らすマホたん。暑いのが苦手だと言っていたからな。
「まあ、ここで休憩してるし、フロアボスの前で少し休んでから攻略して外で休もうか」
「やった~!」
マホたんは無邪気な子供のようにぴょ~んと跳ねて喜んだ。
「さて、休憩もここまでにしていくか!」
「「「「は~い!」」」」
みんなと一緒に十層に踏み入れた。
――――《ギフト【ガチャ】への試練が開始されます。》
「っ!? 試練が始まった! みんな気を付けてええええ!」
予想はしていた。いや、いつでも試練が始まっても対応できるように、最下層に降り立つ時は神経を尖らせていた。
それが現実になると、思っていたよりもずっと心を焦らせる。
転移陣が展開され飛ばされる前の一瞬。みんなと目を合わせた。
そして覚悟を決めた瞬間に、俺達は別の空間に飛んだ。
◆
ずっと熱気に包まれていたが、
視界は無骨な黒い地面から、周囲が真っ赤に見える程に熱くたぎる場所だった。
急いで周りを確認して現状をいち早く冷静に分析する。
まず一つ、リンも仲間達も全員の姿が消えている。俺一人だ。
そして一面に広がるのは――――溶岩地帯そのものだ。
思わず、乾いた喉につばを飲み込んだ。
この異常な暑さは、やはり溶岩地帯か……。
その溶岩地帯に信じられないものが見えた。
半径三メートルくらいある円形のお立ち台が五つ。その上にそれぞれのメンバー達が立っていた。
「みんな!」
お立ち台までは相当な距離があって、今すぐに助けられる方法が思いつかない。
幸い、みんなも冷静に現状を把握して、落ちないようにそれぞれ中央に立っている。
その時、溶岩地帯のさらなる奥から姿を見せたのは、六つの頭を持つ大きな竜だった。
真っ赤な鱗と赤い目が恐ろしい。
前回の試練は相手の攻撃を吸収させてガチャを引いて攻撃した。今回も恐らくそういうものだろう。
『
そういや、前回も同じ言葉を聞いたな……でもそれを悩んでも仕方がないので、これは出てから考えるとして、今は目の前に集中だ。
グルァアアアアアア!
竜達の咆哮に凄まじい風圧が襲ってくる。
みんなはその場で地面にうずくまって耐え続けた。
あのまま下に落ちると…………想像したくない。みんなは慌てることなく、それぞれの状況を見ながら、竜から目を離さずに観察し続けている。
その時、みんなの所にそれぞれ三メートルの長い棒が現れた。
中心を持つと綱渡りをしている人のようにも見える。
あの棒に何の意味が……?
その時、竜から攻撃が放たれる。
どこから現れたか分からない火の玉が俺に向かって飛んでくる。六つある頭付近から飛んでくるな。
みんなに火の玉が当たらないようにして、こちらにやってきた火の玉にガチャ画面を当ててみた。
前回の試練では画面に吸収された攻撃だったが、今回は吸収されずに貫通してきた。
念のため構えていたから急いで避けて助かった。
ちらっと見えた火の玉の中に小さな石が見えた。
「エムくん! 大丈夫!?」
遠くからシホヒメが俺を心配する声が届いた。
「俺は大丈夫だ! みんなこそ気を付けてくれ! ガチャポイントを貯める方法を探すよ!」
それにしても、前回見えていたリンは一体どこに……? 今回はリンが見えない。
その時、リンの気配を感じた。
前回同様に怒り暴れるリンの気配を感じる。その気配は――――竜の腹の中から伝わってきた。
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