第74話 新しいダンジョン
今日は人生初めて、漆黒ダンジョンではない別のダンジョンにやってきた。
漆黒ダンジョンとは違い、ダンジョン入口前は人がたくさんいて、出店まで開かれているほどだ。
「すげぇ…………ダンジョンの前はすげぇ混んでるって聞いたことあったけど、想像以上だな」
「ふふっ。エムくんって初めてだっけ?」
「ああ。一年間ずっと向こうだったからな」
マホたんが得意げな表情で、俺の手を引いて中に向かう。
その時、周りの人達から視線が集まった。
「あれ? あの人ってマホたんとリリナじゃない?」
「嘘!? どうしてこんな場所にあの二人が? でもディン達はいないね?」
「あの黒いスライム見て! ネット記事になってた
周りからの声が嫌でも聞こえてくる。
マホたんとリリナは慣れたようで、全く気にする素振りすら見せない。
ちょっとした有名人気分を味わいながら、新しいダンジョンに足を踏み入れた。
目の前に広がるのは、漆黒ダンジョンのような洞窟景色ではなく、どこまでも青く広がる晴天が続く平原だ。
無限に続くと思える平原と、遠くに絶対にたどり着けなさそうな広大な山脈が見える。
「空だぁ……」
「だな……」
ナナと一緒にポカーンとしていると、目の前に配信カメラが飛んできて、配信を知らせる。
『いつものダンジョンじゃなくて草ww』
『ここのダンジョンって、わりと都心部に近いところダンジョンだよな~』
『なるほど。あの黒いダンジョンはここ近くだったんだ』
いつもと景色が違うからか、リスナー達が反応を見せる。
「今日は新しいダンジョンに来てみたよ。どれくらい潜れるか分からないけどな。それと改めて紹介する。しばらくパーティーメンバーになる二人だ」
「マホヒメだよ~キラーッ☆」
『マホたんキタァァァァ!』
『昨日もいたけどなwww』
『マホヒメwwwシホヒメが負けてるぞ~!』
「っ!?」
ビクッとなったシホヒメが、マホたんの隣に立つ。
「シホヒメだよ~キラーッ☆」
『本家なのに、マホたんに負けてて草ww』
『眠った次の日のシホヒメはまじで可愛い。残念美女☆彡』
『残念美女☆彡 残念美女☆彡』
「そういや、マホたんとリリナはリスナーから何て呼ばれてんだ?」
そう聞くと、二人が無表情のまま俺をじっと見つめる。
いや、普通に怖いですけど!? ただ聞いただけなのに!?
『脳筋聖女☆彡 脳筋聖女☆彡』
『アル中美女☆彡 アル中美女☆彡』
今度はカメラを睨む。
あはは……なんか納得だわ。ては二人ともアル中だろ。
「そういうことで私達はエムくんのパーティーメンバーになったわ~リスナー達もよろしくね~」
『リリナ☆彡 リリナ☆彡』
『聖女様! 踏んでください!』
お、お前ら……そういう……あれだったのか……聖女というより女王様じゃねぇか。いや、聖女だからいいのか……?
一層の広い平原には俺達以外にも探索者がかなり多くて、狩りの最中だというのに、ものすごくこちらを見ていた。
それに、他に配信を行っているパーティーまでいた。
「エムくん? どうしたの?」
アヤが頭を傾げながら聞いてきた。
「いや、俺以外に配信している人は初めてみるので……やっぱりいるんだなって……」
配信中はアヤは仲間として、お互いに敬語は使わないようにしている。
「ふふっ。そりゃそうよ。エムくんのように一人で配信している人も多いし、多いのはカップルで配信も多いわね」
「カップル配信!?」
俺の声に反応して、全員が一斉に俺を見つめる。
「カップル配信に興味あるの?」
「いや……そこまではないけど、色んな形があるんだなって驚いて」
「ふふっ。エムくんがやりたかったら、私はいつでもいいよ? 回復なら任せて~!」
「い、いや……俺なんかと……」
そもそもカップルだとか付き合うとか経験ないし、こういうのって男性がエスコートするんだろ? そんな……できるわけないだろ!?
すると、珍しく人の姿になったリンが、俺の右腕に抱きついた。
『リン様☆彡 リン様☆彡』
『リン様って人の姿もめちゃ可愛いよな』
『何より大きいのがいい。もはや人間のものじゃない』
『実際スライムだしな~』
「ぬわあっ! り、リン! 当たってる! 当たってるから!」
「ご主人しゃま♡ いつももみもみしてくれるのに~今は嫌なのぉ?」
「紛らわしいことを言うな! あれはスライムだからでしょう!?」
「さあ、触ってくれてもいいのよ?」
リンが俺の腕を素早く自分の胸に押し当てる。
「うわああああ!」
『胸揉んだのに規制かからなくて草www』
『そうか……従魔枠なら規制にならないんだな。初めて知った』
俺も初めて知ったよ!
急いでリンの腕から脱出すると、今度はうちの可愛い白銀の天使が待ち受けていた。
「お兄ちゃん……やっぱり大きな方が好き……?」
「ぬあっ!? ち、違う!」
「そっか! よかった!」
そもそも俺はナナの全てが可愛いと思っているが!?
『エム氏とハーレムパーティー♪』
『色気満載なのに全然羨ましくなくて草www』
『だってエム氏だし』
『間違いないなww』
「う、うわああ! お前らも押し付けにくるんじゃねぇえええええ!」
俺に胸を当てようとするシホヒメとアヤ、マホたん、リリナから俺は必死に逃げた。
広大な平原と壮大な青空の下。
俺は新しい仲間と新しいダンジョンで新しい配信生活を送ることになった。
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