第73話 新しいパーティーメンバー
枕で幸せそうに眠るシホヒメと、その隣に気持ちよく酔っぱらったマホたんとリリナが眠る。
最近は広いシホヒメの部屋にみんなで眠っているが、俺以外は全員女性だ。
正直、色々困ることが多いが、シホヒメはともかく奈々がそうして欲しいなら、兄として男として頑張るしかないのだ。
次の日。
朝食を食べようとした時、珍しい二人がやってきた。
「エム殿~久しぶりだな~」
「相変わらずだな。ディン」
今日合流するとか言ってんだが、まさか朝からだとはな。
「リーダー。羽根は渡しておく~」
「おお~! 我がエターナルフレンドエム殿~感謝するぞ~!」
外人掘り顔で怪しい英語風に言われるとちょっと面白いな。
「そういや、ディンってダブルなのか?」
「おお~そうだとも! 母が日本人で父がイギリス人なのさ~!」
マホたんがクスクスと笑う。
「ディンってネームも本名だしね~」
「そうなのか!?」
「はははっ~! 僕の本名は――――
なるほど……? こういう場合、名前が長くなるんだな?
なんか絵本とかに出てくる王族の名前っぽくて面白いな。
ディンといえば、ヤオ。ヤオはディンに似せているため、カッコいいホストみたいになっている。きっと多くの女性を泣かせていそうだ――――偏見かもだけど。
「それにしても普段四人で活動するのか」
「六人でもいいんだが、僕達に付いてこれる人が中々いなくてな~それに何故かマホたんとリリナに色目を使う男ばかりだからね~」
まあ……実力も高いし、二人とも綺麗だしな。こう、流行を取り入れた若くて綺麗な女性って感じ。
「あ、リーダー」
「ん?」
「私達、無期限活動休止するから。これからエムくんと過ごすから」
「「「「ええええ!?」」」」
あまりにも突然の言葉に、全員が驚いた。
見守っていた美保さんの「あらあら~」とゆるふわな言葉が続く。
「ま、マホたん! ちょっと待ってくれ! どういうことだ?」
「どうもなにも、私達はやっぱりエムくんのお酒がないと生きていけない身体になっちゃったの。ディンとのパーティーだと、帰ってくるのに数日かかるし~」
「数日?」
「そうよ? ダンジョンだと五十層とかあるから、最近こそ、エムくんのおかげで簡単に帰ってこれるけど、お酒が飲めないからね~エムくんの隣なら毎日飲めるでしょう~」
「…………」
こいつら。絶対に酒が飲みたいだけじゃん。
間に割り込むシホヒメ。
「ダメッ!」
「シホヒメ?」
「属性が被ってるからいらないっ!」
属性……。
「魔法使いと白魔法使いはもういらないの!」
「ふっ。甘いわね。シホヒメ」
「えっ?」
マホたんが綾瀬さんにも視線を移す。
「後衛というのはパーティーを支えるものよね。でもあんた達のパーティーには絶大な弱点があるのよ」
「弱点……?」
「前衛であるエムくんとナナちゃんの実力があまりにも違うこと。これは決して悪いことではないわ。エムくんにはエムくんにしかできないことがあるからね。でもパーティーのバランスを取るのがとても大切なの。そこでパーティーを一つではなく、二つのメンバーに分けて構成する考えの方がいいのよ」
マホたんは俺の隣にシホヒメと綾瀬さんを立たせて、自分とリリナで奈々の隣に立った。
「一つのパーティーではあるけど、戦いは基本的にこのグループに分ける。そうすれば、漆黒ダンジョンからより難しいダンジョンになっても対応できると思う。もし四人だけで向かったら、最上位ダンジョンの深層には入れないわよ?」
「うむ。それは僕も賛成だ。でもマホたん? 僕達のパーティーから抜けられると困るのだが……」
「ヤオ!」
「うむ?」
「しばらく
「っ!? でぃ、ディン!」
「どうしたんだ? ヤオ?」
ディンとヤオの間にキラキラした何かが見える。
うん。見なかったことにしよう。
多分ディンは気づいてないだけで、ヤオってそういうことだよな。
マホたんがしてやったりみたいな不敵な笑みを浮かべた。
「でもパーティーって基本的に四人で組むのが普通なんでしょう?」
「そうね。基本は四人がいいんだけど、六人でも大丈夫よ。ナナちゃんもリンちゃんも強いからレベルなんていらないでしょう。シホヒメだって、どうせ漆黒ダンジョンではもうレベルが上がらなくなってるんでしょう?」
「えっ……? シホヒメ?」
シホヒメは「え、えへへ……」と申し訳なさそうに笑う。
ギフトを持つ者は、全員にレベルが存在する。
それは僕もそうで、一年間一人で漆黒ダンジョンの一層で頑張っても4までしか上がらなかった。
あれからリンやシホヒメのおかげでちょくちょく上がって入るが、何か恩恵があるかと言われれば、全くない。
普通はレベルが上がればより強くなるし、スキルも覚えるのだが、俺は何も変わってない。
ただ、漆黒ダンジョンの十層に入った時、試練があって、それをクリアすることでギフト【ガチャ】が強くなったので、試練を目指せばガチャも強くなるかも。でも僕自身が強くなるわけではない。
「それに――――エムくん」
「ん?」
「あんたはこの中で一番弱い。そうよね?」
「ま、まあな」
「でもそれは勘違いなのよ」
「へ?」
「今のあんたはそれなりに戦える。その理由は分かる?」
「えっと……リンがいるから?」
「違う。それはリンちゃんが強いの話だけど、リンちゃんがいなくてもあんたは普通に戦えるわ。その理由は――――」
マホたんが俺の胸を人差し指で優しく押した。
「爆炎剣。あれだけで十分強いのよ。でもガチャの可能性ってそれ以上だし、腕輪だってとんでもない効果なの。あんたがこれからするべきは、自分が強くなるのではなく、ガチャをよりたくさん回して、強力な
「お、おう……」
マホたんの言葉にものすごく納得いった。
「分かった。ディン達は――――まあ、何とかなりそうだな。マホたん。リリナ。しばらくの間、妹をよろしく頼む」
「「任せて~!」」
こうして新しいパーティーメンバーが二人追加された。
話し合いが終わるとマホたんとリリナがハイタッチして「いつでも酒が飲めるね~」と喜んでいた。
こいつ…………絶対酒のために、何かいいこと言ったって思ってる気がする。
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