第64話 猫耳カチューシャ
次の日。
いつもと変わらない配信を行う。
何だか見栄えのない配信になるなと最近感じる時があるけど、元々俺の配信って一年間最弱魔物に苦労してる姿を流していただけだったから、気にするべきじゃないな。
『配信乙~!』
「シホヒメだよ~キラッ★」
『隈できてて草w 昨日寝なかったらしいww』
『キラッに覇気というより狂気あって草www』
シホヒメは珍しく枕使用を拒否。その理由は、これから週末配信をしないってことで、ガチャを引けないから寝るのは最短でも二日間隔にすると言った。
あれだけ眠れないのを怖がってたのに、どうして二日間隔でいいのかと聞くと、眠れない日は俺を膝枕できるからと答えた。
一緒に聞いていた奈々に怒られるかなと思ったら、意外に奈々からも一緒に寝たいから賛成だという。
それでなんやかんかんやで話が進み、シホヒメが眠れる日もみんなで一緒に寝ることが決まった。
シホヒメと奈々はともかく、綾瀬さんと美保さんまで一緒に寝るとなると、緊張してしまうが、不思議とシホヒメの膝枕は一瞬で眠りにつくので、気にしないことにしている。
「シホヒメ。残念だったな」
「うん?」
「お前のアイドルタイムはもう終了だああああ!」
「ええええ!」
わざとらしい演技。特に打ち合わせはしていないから当然か。
「さあ、今日は二度目の最終兵器、我が最愛妹に登場していただこう~!」
『最終兵器が最終じゃなくて草www』
『最終兵器妹!』
『最終兵器ナナちゃん!』
『ナナちゃん☆彡 ナナちゃん☆彡』
シホヒメとアヤが以前天使となったナナを紹介したのと同じポージングを取る。
大きな柱の後ろからチラッと見えたのは――――
『尻尾!?』
『猫の尻尾が見えたぞ?』
すると、柱の裏からぴょこりと顔を出すのは、
「にゃ、ニャー」
『猫耳娘ええええええ!』
『ナナちゃんかわえええええええ!』
『やべ。応援ボタン連打してるけど、灰色で押せない。運営なんとかしろ』
『鼻血でた。神降臨。』
『猫ナナ可愛すぎやろ……』
あーはははははっ! 見たか! これが我が最終兵器ナナの第二形態。猫獣人モードである! 天使モードももちろん可愛いし、めちゃくちゃ美しい。だが、猫獣人は美しさではなく、可愛さを前面に押し出している。
顔を出した柱の反対側には猫尻尾がふわふわしている。
「は、恥ずかしい……」
「ナナの可愛さはこんなもんじゃないぜ!」
「う、うぅ…………」
恥ずかしそうにゆっくりと柱の裏から出て来たナナ――――
「ぶふっ……は、鼻血が……」
「エムくん!? 私が看護してあげる!」
「あ、アヤ……ありがとぉ……」
注目する点は頭に猫耳が生えていることと、手が猫の手に、腰の後ろに尻尾が生えていること――――だけではない!
その衣装にも注目だ。
白い肌を全面的に出して、肩、腕、腹、太もも、足が全面的に
『探索者配信でビキニ!? は!?』
『ナナちゃん可愛すぎぃぃぃぃぃ!』
『配信規制越えきたあああああ!』
『水着……? いや、衣装?』
「ていうかなんでビキニスタイルなんだ!?」
俺が渡したのは前回ガチャで引いた【猫耳カチューシャ】である。装着者に獣人神の力を与えると書かれていたから、天使と同じく天使の姿、つまり、獣人の姿になると想像していた。なのに、衣装がどうしてこうなった。
「ま、待って……何か服を……」
「お、お兄ちゃん? 私なら大丈夫だよ? 凄く可愛いし……」
満面の笑みを浮かべるナナ。
ちょっぴり恥ずかしそうにしながらも笑うナナが神々しい。
『てかまた規約違反にならないのすげぇな~』
『これも衣装判定か~』
『強制変身最高すぎやろ~!』
『今日からナナちゃんイチオシです』
『エム氏! クラン名を変えようぜ~!』
「それはダメだ。やっぱ俺達にはリンが一番だから!」
「そうだよ! リンちゃんが一番だからねっ!」
一緒に怒るナナがまた可愛い。
ナナにぴょ~んと飛ぶリン。リンを抱きしめた姿はもはや世界、いや全宇宙で一番と言えよう。
『リン様×ナナちゃん。最高のコラボをありがとぉ……』
『運営えええええ! 応援ボタン連打させろおおお!』
『俺、一生この配信見るわ』
俺とリスナーが興奮しすぎて、暫く配信はナナを見せる配信となった。
暫くして、やっと落ち着いたので、狩りを再開する。
十層に着くまで、全ての戦闘は――――ナナが行った。
猫耳カチューシャは何も衣装が変わったり、猫耳手尻尾が生えるだけではない。
その真価というのは、
ナナは目にも止まらぬ速さで動き、地面、天井、壁を飛び回りながら、魔物を一撃で粉砕した。
倒した魔物からドロップする魔石は、器用に尻尾を使って俺に投げてくる。
飛んできた魔石をキャッチして魔石ポイントに変えていく。
そうやって十層での狩りも楽になった。
リンはずっと俺に撫でられてご機嫌で、ナナも全力で動き回って気持ちよさそうに楽しんでくれた。
配信時間が終わり、百連を回す。
今日は白までしか落ちず、枕はなんと一個落ちた。
「配信はこれで終わるんだが、今日は大事な告知がある! もし興味がある人は聞いてくれ!」
少し緊張の中、俺は真剣な表情で話し始めた。
「実は――――――」
俺の告知に、嬉しコメントで埋め尽くされた。
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