第58話 白の世界へようこそ
『白だああああ!』
「やめろおおおお!」
『白。神。』
コメントが『白』一色になる。白なだけに。
何が白かというと、以前ガチャで引いた【エンジェルブロッサム】を飲んだ我が天使がリアル天使になったのは、まごうことなき素晴らしさである。
だが一つだけ……たった一つだけご褒…………いや、デメリットがあった。
俺のイメージだと、ただ天使になると思っていたら、まさか全身そのものが天使となった妹。
天使の羽は飾りではなく、その気になれば、なんと空を飛べちゃうのだ。
さらに身体能力の向上。
武器は使えないという妹は、魔物をパンチで殴り飛ばしていた。
――――で、問題はここだ。
魔物が現れる⇒魔物に殴りかかる天使⇒全身の何から何まで天使に変わり、衣装まで天使の衣装になった妹の後ろ姿が見える⇒スカートが非常に短い⇒毎回殴り飛ばす度に、ふわふわミニスカートがひらりと、中が見える。
ああああああああああ!
妹のスカートの中が……中がああああああああ!
全人類に晒されてしまった。
もうお兄ちゃんは……お嫁にいけないよ…………。
頭の上のリンが俺の心を読んだらしく、ふにゅふにゅした触手を二本伸ばして、頭をぽよんぽよんと叩き続ける。
「変態」
「変態じゃねぇ!」
相変わらず『白』一色のコメントが横切る中、ナナは今までの鬱憤を晴らすかのように、次々魔物を殴り飛ばした。
アヤというと、ナナが倒した魔物の魔石を一生懸命に拾っている。
『白天使が倒して……ナースが拾って……この配信は天国か?』
『まさか配信でこんな特等席が見えるとは』
「お前らああああ! 見世物じゃねんだぞ!」
『いや、エム氏が飲ませたんだろ?』
「あ……そ、それは……そうだけど…………」
『一瞬でコメントに敗北する配信主がこちらです』
『敗北の男。その名をエム氏』
『天使とエム氏でこんなに差が出るとは……』
『全ての才能を妹に残した優しい兄』
その文言、ちょっと好きだわ。
『それにしてもおかしいな? なんで規制掛からないんだ?』
そういや、配信の規制で基本的にエロはダメなはずで、以前シホヒメが俺のズボンを下ろしてパンツ降臨して一週間停止を食らってるからな。
ちなみに女性だともっと酷くて、わりと一か月停止とか当たり前だったりする。
というナナだって女性なんだから、このまま一か月停止を言い渡されても仕方がないんだが……。
「そもそもエロ規制ってわざとと判断するかどうかでしょう? ナナちゃんがわざと見せてるわけないじゃん。だって天使だもん」
「そりゃそうだな。シホヒメ。いいこと言ったわ」
「それと多分、『そういう衣装』として判断されてるんだと思う。エムくんのことだから、ガチャ品で強制的に衣装を変えられたとすると、衣装を変えることもできないと、ちゃんと判断されてるんじゃないかな?」
「し、シホヒメ…………今日のお前ってなんか冴えてるな?」
「いつも冴えてるよ?」
「今日引けないと明日からは冴えないけどな」
「エムくうううううううううん! お願い! 枕をおおおおおお!」
「わ、分かった! でも引けるかどうかは分からないから! というか、もしかしたら試練のせいかも知れないな」
「試練…………前、言っていたやつだよね?」
安眠枕となると、全力でテンションが落ちるシホヒメは、可愛らしい顔が台無しになるくらい酷い表情になった。
配信停止中に挑んだ試練。何故か強制配信にはなったけど、あの時に勝った
あの時はシホヒメのこととか、ナナのことであまり深く考えなかった試練の報酬。
シホヒメのことで頭が真っ白になって聞き逃していたのを、リンが教えてくれた。
《ガチャ試練に突破した恩恵により、スキル【ガチャ】のレベルが2に上昇しました。》
という文言だ。
このレベルが上昇することで何が起きるかというと――――二つが良くなる。
一つは排出レア度上昇だ。
元々【Nが98.79%】【Rが1%】【SRが0.1%】【SSRが0.1%】【URが0.01%】だ。
それが試練を突破したことで上昇し、
【Nが96.37%】【Rが3%】【SRが0.3%】【SSRが0.3%】【URが0.03%】に上がった。
そこでもう一つ上昇したことがある。
内部ドロップ率の
そして、一番の問題はレア度Rの中で最も
「安眠枕あああああああああ!」
今日のガチャ百連でも安眠枕は出ずに終わった。
もちろん、配信には絶望するシホヒメが映ったのは言うまでもない。
そして、今日は同時視聴者7,299人と最多を記録。
そして、応援ポイントも、7,299と、まさか視聴者全員が応援するという記録を打ち出した。
半数以上はシホヒメではなく、うちの天使に入れてくれたものだ。
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