第55話 妹と姉
ホテルで浅田さんとの会談が終わって、向かうのは――――
「どこに行こう」
「家ないもんね……」
「私の家も払ってしまったから……」
さすがに俺だけでなく、メンバーである綾瀬さんの家も解約してきた。
「不動産屋かな」
その時、俺の前に立って両手を広げて止めるのは――――
「エ~ムくん! 待った!」
「ん? どーした? シホヒメ」
「今から部屋探すの大変だし、部屋を借りてもまた同じことの繰り返しになるでしょう?」
「ま、まあ……そうなるかも知れないが……」
やっぱり浅田さんの提案を全面的に受け入れて、拠点を借りるべきだったか……?
「それなら――――私の家を拠点にしよう!」
「えっ? シホヒメの家?」
意外すぎる提案にみんなで驚いた。
「……シホヒメ。お前…………」
「えへへ~」
「…………家、あったのか」
「あるよっ!」
いや、毎日うちに入り浸って生活していたし、衣装もキャリーバッグに入れて持ってきてたから、てっきり家も解約しているんだと思った。
「うち、お姉ちゃんがいるけど、気にしなくて大丈夫だから」
「お姉ちゃん!? そりゃダメだろ!」
「え~大丈夫だよ! お姉ちゃんもエムくん大好きだし」
「えっ」
「さあ~行こう~!」
ちょっと嫌な予感がするが……行く当てもなかったので、シホヒメの厚意にあずかりたいと思う。
ホテルからバスに乗り込んで市街に進み降りた駅――――
「うわぁ……懐かしいな……」
「うん。エムくんにとっては懐かしいよね~」
俺とシホヒメが通った高校が見えた。
相変わらずでかい建物で、他の高校と違う点は四階建ての巨大なビル群になっており、色が真っ白という存在感を存分に放つ校舎だ。
グラウンドでは毎日シホヒメが走っていたのが懐かしい。
「そういや、シホヒメって学生時代、ずっとあそこで走ってたよな」
「えっ……?」
「いや、窓から見えてたからさ。うちグラウンド見えるクラスだったから」
「…………」
「いつも眠そうにしているのに、時間があれば走ってたら凄いなと思ってたよ」
「…………」
これって……何か地雷を踏んだのか? あのシホヒメが黙るとは…………あれかな。黒歴史だったのかな……。
「ご、ごめん……」
「…………多分違うと思う」
「え?」
「謝ったこと、多分理由が違う。エムくんのふ~んだ!」
「ええ!?」
急に拗ねたシホヒメの足が速くなる。
みんなでシホヒメの後を追いかけた。
高校から歩いて二十分くらいの所に、一軒の大きな屋敷が現れた。
壁も高くて、いかにも高級住宅でお金持ちが住みそうな家。いや、屋敷。
シホヒメは迷うことなく屋敷のインターホンを押す。
「は~い」
インターホンから若い女性の声が聞こえてきた。
その瞬間、シホヒメが一気にインターホンにくっつくんじゃないかってくらい顔を近づける。
「私」
「あら~おかえり~」
いやいやいやいや。まず至近距離をツッコめって。
ガチャっと音が響いて扉が開いた。
「さあ、みんな入って」
みんなで中に入ると、玄関までの道は百メートルくらいあり、両側には立派な庭が広がっていた。
道を進み、家に着く頃、玄関が開いて一人の女性がひょっこりと笑顔で顔だけ出した。
「おかえり~あらら? お友達~?」
「うん。パーティーの仲間達。こちらがエムくん。リン様。ナナちゃん。ストーカーナース」
「綾瀬です。よろしくお願いします」
ストーカーをツッコめよ!
「あらあら、みなさん。初めまして~志保ちゃんの姉、
扉を開いて歓迎してくれる美保さんは、身長はシホヒメと同じくらいの百六十くらい。女性にしては身長が大きい方かな?
そして、何より驚くのは、その大きさ。たわわの大きさ。メロン。スイカ。地球儀? は? 人間ってこんな大きなたわわが存在するのかってくらい大きい。もはやホラーかも知れない。冗談だけど。
リンが人型に変身した時よりも大きいのは事実で、大体メロンくらいの大きさはある。
「エムくんのすけべ」
「見てないわ!」
「何を見たの?」
「えっ……いや…………」
ジト目でじーっと見つめるシホヒメ。
「あらあら、エム様にあまり強く当たっちゃダメよ? 志保ちゃん」
え、エム様!?!?!!??!?
「さあ、エム様もどうぞ」
恐る恐る家の中に入る。
すると――――最初の玄関の脇に
「あ、お兄ちゃんだ」
「うふふふ。私、エム様の――――大ファンなんです~! ほら、うちわも作っちゃいました~!」
うちわに俺の顔写真があああああ!?
「エムくん? 知ったからには、もう逃げられないからね?」
「…………」
はあ、やっぱり来るんじゃなかったわ…………。
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