第53話 増えていく数字と減っていく確率

 休憩時間が終わり、十層で狩りを始める。


 と言っても巨大なダークドラゴンをリンが刺すだけだけど。


 相変わらず、ナナが最前線に出てドラゴンの注意を引く。


 今までずっと眠っていたからか、常に体を動かしたがる。


 その気持ちを知っているから、ひやひやするが最前線に出ても何も言わないでいる。


 それにしても、【超反応】という才能で反応するのは分かるけど、身体能力も非常に高いように見える。これも才能による成長なのだろうか?


 中型魔石を集めながら一時間狩りを続けて、百連分のガチャポイントが貯まった。


「では最後に百連を回そうと思う」


『百連☆彡』

『最近当たりばかりのガチャ配信だ~!』


 確かに最近ガチャの当たり率が上がった。


『いくら百連を回すとはいえ、以前より格段に上がってるよな~』

『面白いくらい当ててるよな~』


 俺も似た感想を抱いている。


 最初は偶然かなと思ったけど、元々最低率ばかり引いて来た。


 いくらR確定とはいえ、SRをこんなにも引けるのは不思議に思える。


 早速百連を回した。


 白い筐体が出て来て、ハンドルが回る。


 筐体口から黒いガチャが大量に落ちるが、時々白いガチャも出て来る。


 以前なら百連分全部Nなんてあり得たのに、今じゃ3%の割合でRが落ちて来る。


 まあ、Rが落ちればシホヒメが喜ぶのでいいけど。


 Nは落ちてすぐに開放されて、色んなものに変わっていく。


 ここでも一つ変わった点があって、元々ハズレだった何に使えるか分からないもの――――例えば、スリッパやラバーカップなどはあまり出なくなって、食べ物や飲み物がよく出るようになった。


 おかげで食費はかなり抑えられているし、なんならガチャ産食材は美味しい。


「今回Rが25個か……」


 Rは本来1%のはずなのに、百連に対して五個も出ている。


「枕……はあはあ……」


『シホヒメが壊れた~w』

『残念美女降臨しかけて草w』

『エム氏のいけず~はよう引いてやれ~』


「はいはい。じゃあ、R引くぞ~」


 Rからは触れないと開放できないので、一つ一つ開いていく。


 帰還の羽根、高級野菜セット、お酒、A5霜降り肉まで!?


 次々と明けていくが、残り二つになるまで安眠枕は出なかった。


「え、エムくん……お願い……」


 安眠枕の在庫が切れたからな。シホヒメも必死になるものだ。


 一つ目の白いガチャカプセルを開けた。


 出て来たのは、不思議な丸薬。


《空気丸薬:飲んだら一時間体内呼吸が可能になる。》


 体内呼吸?


 これを飲んだら水の中に自由に入れるとかか?


「え、エムく……ん」


「シホヒメ。まだ最後の一つがある」


「お、お願いね?」


 いや、俺にお願いされても困る。ランダムだし。


 最後の一つを開いた――――――




「ああああああああああ!」




『まだ初日なのに崩壊する残念美女の図☆彡』

『残念美女☆彡』


 出て来たのは安眠枕ではなく、十センチくらいの瓶だった。


《エンジェルブロッサム:――――――》


「!?」


「お兄ちゃん? どうしたの?」


 目を見開く俺を見て妹が可愛らしく見上げてきた。


「い、いや、なんでもない」


 俺はナナの頭をポンポンと撫でて、シホヒメの下に向かった。


「シホヒメ。今日は残念だったが、明日がある。だからそんな場所で伏せるなよ」


 こいつ……最近は初日も不眠モードっぽくなる時がある。特に安眠枕の件になると見境がない。


「エムくん……ふええ~」


「よしよし。ほら、今日はもう帰るぞ? 明日もここに来てガチャを引けば、きっと出て来るさ」


「うん…………」


 地面に伏せたせいでまた服が汚れたので、ハンカチで拭いていく。


「ここも拭いて」


「嫌だよ! 自分で拭けっ!」


『夫婦コントかよww』

『拭いてやれよww』

『おっ〇い☆彡 おっ〇い☆彡』


「伏字でもやめろ!」


「お兄ちゃん……触りたいの?」


「触りたくないよ!」


「えっ!?」


「えっ?」


 いや、なんでそこで驚くんだよ!?


『配信乙~!』

『今日も面白かったぞ~』

『おつおつ~!』


「視聴ありがとうな~」


『明日からは時間伸びそうだな~おめでとと言っとく~』


「そう……なるか。サンキュー!」



《時間になりましたので、配信は終了となります。お疲れさまでした。コネクト運営より》



 配信が終わる直前、カメラの下に映っていた画面。


《現在視聴者数:5,011人》《応援:3,980》


 視聴者数も遂に五千人を突破し、応援の数も凄まじい数に到達した。


 応援1ポイントで百円なんだよな……ってことは、今日の配信だけで四十万円……。


 自分の金銭感覚がどんどんずれていくが、毎日百連回しているのも十万円なんだよな……。


 この応援ポイントを全て魔石に換算したら明日は五百連引けるのか……?


 まあ、申し訳ないが、これは生活費に回してもらうことにしよう。


 帰還の羽根を使って、ダンジョンの外に出た。


 そして――――次なる目的地、総理大臣が待っているホテルに向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る