第47話 モテ男到来!?

 次の日。


 大の字で眠っている女性が目に入る。


 マホたんとリリナ。二人ともシホヒメに負けないくらい可愛いのに、スカートがめくれそうではっとなった。


 昨日のどんちゃん騒ぎでみんなその場で眠ったようで、部屋とリビングが地獄みたいだ。特にディンとヤオは見なかったことにしよう。というか、ディンにその気はなさそうなのにな。


 妹とリンはお互いに顔を寄せ合って眠っていて、俺の左右には残念美女二人が腕を抱いたまま眠っていた。


 はあ……まあ、いっか。


 屍みたいになったみんなを乗り越えて、家を出て、隣の家に入る。


 昨晩、朝食の準備のために綾瀬さんから鍵を借りていた。


 早速買っておいた食パンを並べて、ハムや玉子焼きを作ったりと、初めての大人数分を作り始める。


 調理の合間に待っている間、スマホを開いてチャンネルページを開いた。


《アカウント名:エム》《チャンネル名:怠惰なスライムと愉快な仲間たち》《チャンネル登録者数:4,782名》


 リンと会うまで200人くらいだったはずなのに、気づけば4,000人に上っている。


 その時、扉が開いて、綺麗な銀色の髪をなびかせた可愛らしい妹が入って来る。


 どちらも全てリンのおかげだ。


「お兄ちゃん~おはよう!」


「おはよう。奈々」


「えっ!? お兄ちゃん!?」


 朝一で会った妹を抱き締めると、驚いたのかあたふたする妹がまた可愛い。


 最初は戸惑っていた妹も、俺を抱き締めてくれた。


 暖かい体温が伝わってきて、ようやく妹と再会を果たした現実を受け入れられる。


 昨日は目が腫れるくらい泣きすぎたなと思いながら、ここまで頑張ってきて良かったと思う。


「お、お兄ちゃん……そろそろ……」


「!? す、すまん」


 離れると、顔を真っ赤にした妹がまた可愛らしい。


 というかうちの妹、世界一可愛すぎなのでは!? いや、世界一可愛いな。


「て、手伝う!」


「ああ」


 俺と一緒に立って、食パンに食材を盛り付けていく。


 それを今度はレンジに入れて軽く焦げ目が付くくらい温める。


 取り出すと、チーズが解けて香ばしい匂いが部屋に充満していく。


 朝食のピザ風トーストがとても美味そうだ。


 というか、うちの妹が盛りつけたんだから世界一美味しいに決まっている。


 出来上がったトーストを俺の部屋に運んでいくと、みんな起き上がって部屋の掃除をしていた。


 意外にもこういうとこは律儀なんだな。


「お~めちゃ旨そうな匂い~!」


 真っ先にディンが声を上げると、みんなも目を輝かせてこちらに注目した。


「朝食にしようぜ。軽めにトーストにした」


 それぞれの分を渡して、俺と妹も部屋にあるテーブルに座って食べ始める。


 リンはスライム状態でソーセージを堪能する。


 朝食を平らげたマホたんがおもむろに俺の前にやってきた。


「ねえ。エムくん」


「ん? どうした?」


 俺の前に正座したマホさんは上目遣いで両手を合わせて俺を見上げる。


「昨日の頼み、考えてくれた?」


「昨日の頼み?」


「うん――――――私の彼氏になって欲しいの」


「ええええ!?」


「「「ええええ!?」」」


「リン! その棘はやめろおおお!」


 昨日のデジャヴ!?


 というか、あれって酔ってたから言ったんじゃないのか!?


「あんなに美味いワインが作れるエムくんなら、私の彼氏になっても問題ないと思うの!」


「い、いや……待ってくれ。昨日は酔ったあれじゃなかったのか」


「違うよ? 昨日は酔ってはいたけど、酔ってたとしても嘘は言わないよ?」


 うっ……美女から上目遣いでこういうお願いをされたら、どんな男でもイチコロだな。


 その時、俺の隣にシホヒメがやってきた。


「ダメ。エムくんの女は私だから」


「!?」


「エムくんは私のために枕を引かないといけないの」


「俺は枕製造機かっ!」


 シホヒメの頭に優しくチョップを叩き込む。


 すると振り返ったシホヒメは、「違うの?」と言わんばかりの表情で俺を見る。


「違うわ!」


 今度はちょっと力を込めて叩く。


「そ、そうよ! エムくんは私達のリーダーだから、誰かの彼氏にはなれないよ!」


 今度は綾瀬さんも参戦する。


 マホたんとシホヒメ、綾瀬さんの言い争いが始まった。


 その姿に溜息を吐いていると、リリナがやってきて、「じゃあ、私ならどう?」と言ってきた。


「いやいやいやいや、あんたたち、どんだけお酒大好きなんだ!? お酒だけで男と付き合うとか大丈夫なわけ!?」


「ん~それも一つの魅力だけど、それだけじゃないわ。お酒だけなら私達の収入でも十分買えるし。まあ、あんたのお酒みたいに美味い酒は見つけられないけどね。まあ、それ以外も含めてってこと」


 言い争っていたマホたんもリリナと同じ視線を送ってくれる。


 女性からこういう視線を送られることが人生初めてなので、心臓が張り裂けそうなくらい跳ね上がってるが、どうしたらいいかよくわからない。


「ご、ごめん。ひとまず――――考えさせてくれないか?」


「もちろんいいよ。ゆっくり考えてみてね~」


「あ、ああ…………」


 どうしてかうちのメンバー達の目の色も変わった気がした。

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