第31話 試練②

 爆炎に包まれる――――と思った矢先。


『すげぇえええええ!』

『爆炎が画面に吸われて草w』

『ガチャ画面ってそういう使い方もあるのか?ww』


 いつの間にか爆炎が消え去り、コメントが流れる。


「は?」



《規定の魔女ポイントを確認しました。現在【ガチャ】を1回、使用できます》

《ポイント:100》

《1連を回す:100ポイント》

《10+1連を回す:1,000ポイント》

《100+20連を回す:10,000ポイント》



 画面のポイント表記が変わっているし、何より名前が変わっている。そもそもここまで来るまでに魔石を貯めているのでポイントが0だったのはおかしい。


 それに本来なら《魔石ポイント》と表記されるはずが、今はただの《ポイント》となっている。


 さらに一番上に表記されているポイントの名前。


 《魔女ポイント》


 それが魔石と違う意味なのかも知れない。


「シホヒメ! 無事か!」


「う、うん! 私は問題ないよ!」


「どうやら俺のガチャ画面が魔法を吸ってポイントが貯まるらしい!」


「ガチャ!?」


 見なくても分かる。目がガチャマークになっているな?


 あはは……シホヒメと付き合いはまだ浅いが、ここまで彼女を知るようになっているんだな。


『エム氏。ガチャは配信でしか回せないんだろ? はようはよう~!』


 そういや、ずっとリンが許してくれなかったっけ。今は特別処置として回せているしな。


「わかった。ガチャ一連を回す」


 ボタンを押すと、目の前に現れたガチャ筐体は――――魔女っ子姿をした筐体が現れる。


 魔女の帽子がこんなにも似合うガチャ筐体があるのだろうか?


 ハンドルが時計回りに回転すると、中から黒色に輝くガチャカプセルが落ちた。


『ハズレの王。エム氏だな』

『こんな緊迫した状況でも最初はちゃんとハズレを引く配信者の鏡』

『あれ? リン様がいない……』

『リン様☆彡 リン様☆彡』


 リスナーの数が最初は一桁だったのが、どんどん増えて五十人を超えている。


「今来てくれたリスナーには悪いな! リンは捉えられているから、少し待ってくれ!」


『リン様が囚われの姫となったようだ』

『囚われのスライム?』

『リン様は可愛いから姫様でおk~』

『リン様☆彡 リン様☆彡』


 こいつら絶対に楽しんでるだろ! まあいいけど。


 黒いカプセルを開くと、中から現れたのは小さなナイフだった。



《魔女ガチャからは全て攻撃アイテムがドロップします》



 そういうことか!


「シホヒメ! 俺は爆炎を吸収させてガチャを回す! 中から出るのは全部攻撃アイテムらしい! それで魔女を倒せるかも!」


「わかった!」


『残念美女久しぶりだな』

『しっかり残念美女になっているのが面白いw』

『配信できないからガチャを引けなかったのでは?』

『いや、今のクマはまだ数日目だ。一回眠ってると思うぜ』


 怖っ!? そこまでわかるのかよ!


「配信停止中はリンが特別に許してくれたんだよ! 次の日だかに一回出ただけ!」


『残念美女☆彡 残念美女☆彡』


 なぜそこで残念美女コールなんだ……。


 爆炎を次々吸収させてポイントを貯めていく。


 その間にシホヒメがナイフを投げ込むと、吸い込まれるように魔女に当たる。


 魔女から見たら小石よりも小さいサイズなのに、大袈裟なエフェクトと共にものすごく痛がり始めた。


『めちゃ効いてて草w』


 ああ。俺も同感だ。


「シホヒメ! 十連行くぞ!」


「はいっ! はいっ! はいっ!」


 お前、十連って言葉大好きすぎるな。


 十連ガチャを回すと、また魔女っ子筐体が現れてガチャカプセルを十一個落とした。


 黒十個と白一個。


『最低保証で草w』

『エム氏。こういう時くらいURを一発で引くんだぞ?』


 うっせ!


 黒カプセルからは、ナイフ、フォーク、スプーン、銀の箸が現れた。


 すさかず、シホヒメが投げつける。


 最後の白色の中からは――――銀の皿が現れた。


『魔女だから晩餐会ばんさんかいから来てるのか?』


 なるほど。だから食器ばかりなのか。


 シホヒメが銀の皿のブーメランのように投げ込むと、今までとは比にならないくらい大きな爆発が起きた。


「Rでも十分通用するな」


「このまま頑張って行こう~!」


 ガチャを回してご機嫌になったシホヒメが楽しそうだ。


 銀の皿の爆発から起き上がった魔女が俺を睨む。


 元々怖い目だったけど、今は真っ赤に染まっている。


 黒い光のランタンがより光を増していく。


 爆炎を放っていた魔女の攻撃に、黒い刃が混じるようになった。


 黒い刃も吸収――――と思った矢先、画面に吸収される爆炎とは違い、黒い刃が画面を突破してきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る