第30話 試練①
十層に降り立つと、画面が現れた。ただし、今までの画面とは違い、画面の縁が真っ赤に染まっている。
緊急事態を示すかの色に心臓が跳ね上がるが、俺の想いとは裏腹に
「エムくん!?」
俺達の下に不思議な魔方陣が展開され――――その場から転送された。
◆
視界に映る世界は、どこまでも続く青い空。
黒に染まった地面は曇りやデコボコ一つない綺麗な地面だ。人工物とは思えない程に。
「エムくん!」
「お、おう! どうやら俺の試練が始まったらしい。リンもよろしくな」
「うん!」
シホヒメの返事は聞こえるが、リンの声は聞こえない。
「リン!?」
いつも頭の上に乗っているリンの感触がない。
手を伸ばして触ってみても何もない。
その時、目の前にあまりにも巨大過ぎる魔物が一体現れる。
風貌は魔女の姿で、形は丸々としたカボチャを何段にも重ねたような姿。
その右手には黒い光が灯っているランタンと、左手には鳥かごが一つ。
「リン!?」
「ご主人しゃま……」
鳥かごの中にスライム状態のリンが入っており、触手や棘を伸ばすが、不思議と鳥かごから出ることができずにいた。
「見た目は鳥かごだけど、何かの結界かも」
「なるほどな……」
「それにしても大きいね……どうやって倒したらいいのだろう?」
「そもそもあれは戦うものなのか?」
「そう言われてみればそうね。エムくんへの試練だし」
俺への試練って一体何なのか。
そもそも戦闘系のギフトでもないので、こんな魔物を相手できるほどの力は俺にない。
十層まで来れたのもリンのおかげだしな。
その時、魔女は口を開いた。
『
魔人!? 祝福!? 断罪!?!?
「エムくん! くるよ!」
魔女の頭部から無数の大きな炎が吐き出される。
「や、やべええええ!」
俺達に次々降り注ぐ爆炎を全力ダッシュで避けていく。
「――――フレイムバレット!」
シホヒメが火の魔法を放つ。
魔女に当たるが、あの大きさにとってはただの灯火にしかならなさそうだ。
顔を見るにも見上げて首が痛くなるほどに大きい。
左手の鳥かごの中のリンが全力で暴れはじめるが、鳥かごはピクリともせず轟音が周囲に虚しく響いているだけだ。
「エムくん! 試練というからには必ずしも倒すだけじゃないかも知れない!」
倒すだけじゃない?
そもそもどうしてリンだけが鳥かごの中に?
ここまでのリンの力は凄まじいものだった。つまり魔女はリンの力を恐れていると言っても過言ではない。
そもそもガチャへの試練と言っていた。開幕でも魔神の祝福とも言っていた。
それを総合してみると――――そもそもただの戦いではないかも知れない。
ガチャ画面を開く。
《ポイント:0》
《1連を回す:100ポイント》
《10+1連を回す:1,000ポイント》
《100+20連を回す:10,000ポイント》
やはりおかしい。
その時――――
『すげぇ! エム氏の配信再開かよ~!』
えっ?
『エム氏が何かと戦ってるぞ~!』
『リン様☆彡 リン様☆彡』
「ちょ、ちょっと待って!? どうしてコメントが!?」
『なんか緊急配信になっていたぞ?』
『エム氏が試練に挑戦中って書いている~』
一体何が起きているのか理解できない。
配信は一週間以上停止中だし、そもそも緊急配信なんてできる程に俺はランクが高いわけでもない。
『そんなことよりも今は目の前の試練に注意しろ!』
っ!
降り注ぐ爆炎を全力ダッシュで避け続ける。
「――――タイダルウェーブ!!」
後方から凄まじい水の波が現れて空を翔けて魔女に直撃する。
巨大な魔女をも飲み込みそうな凄い波だ。
しかし、魔女の右手に持っていたランタンの中の黒い光が周囲に溢れ始めると波を全て吸収し始めた。
「魔法が吸われた!? っ…………エムくん……ごめん……私…………」
強烈な魔法を使った反動なのか、シホヒメがその場に跪いた。
魔女が放った爆炎が無情にもシホヒメに向かって飛んでいく。
「っ……!」
一瞬奈々の顔が思い浮かんだ。
それでも俺は全力でシホヒメに向かい、こちらに向かう爆炎からシホヒメを守った。
「エム……くん? だ、ダメえええ!」
「いつも助けてもらってばかりだからな」
そして――――俺の目の前が爆炎に包み込まれた。
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