第24話 ガチャ配信者の力
「あん……ん…………ひゃぁ…………っ……」
……? 何か変な音が……。
「ん……んっっ!」
ガバッ!
起きて声がする方に目を向けると――――
「朝から何をやってるんだあああああ!!」
「おはよう~ご主人しゃま~♡」
「んあ……あ……っ……」
うつ伏せになっているシホヒメのお尻に座り込んだリン(人型形態)がシホヒメの腰をマッサージしている。
「シホヒメ! 朝から変な声を出すな!」
「ん…………」
こいつ……初日は凄まじく可愛いから、この声は毒である。
溜息を吐いてリビングに向かって朝ごはんの準備をする。
その間もリンとシホヒメの声が聞こえてくる。
「シホヒメ~ここがいい?」
「んあっ……はひ……そこがいいです…………っ!!」
…………。
耐え難い声を聞きながら準備を整えた。
「リン~! シホヒメ~! ご飯だぞ!」
「「は~い!」」
むにゅーんというリンが人型からスライム型に変化する音が聞こえてきて、扉が開く。
キラーン☆
「うわっ。眩しっ!?」
「おはよう~エムくん!」
「お、おう……」
初日のシホヒメは神々しさすら感じる。
リンはソーセージ以外はあまり食べない。食べてと言えば食べるけど、進んでは食べない。普段から食欲はあまりないみたいだが、ソーセージだけは好き過ぎて食べたいらしい。
シホヒメも意外と好き嫌いはしない。野菜も好きみたいでパクパク食べるし、とても偉い。
…………一応シホヒメも同じ歳だった。いつもの感覚で小学生だと
「さて、食事が終わったらダンジョンに向かうぞ。当面の生活費は全部支払ってきたから、あとは魔石を集めてガチャを回すぞ」
「うん! 私、頑張るね? エムくん」
キラーン☆
眩しい…………。
「ご主人しゃま……私も……頑張る…………」
くう……スライム状態のリンは少し舌足らずなところがまた可愛らしい。
食事が終わり、俺達はダンジョンに向かった。
◆
「今日から一週間は配信がないからのんびりやるか」
「エムくん。せっかくだし、下層に行かない?」
「ん? 下層?」
「ダンジョンって下層があるでしょう?」
「…………」
ああああ! ダンジョンって一層だけじゃなかった!
いや、忘れていたわけではない。ただ、自分が一層より下に潜れるとは思いもしなかった。
そもそもだ。ギフトを授かった者は特殊なスキルで目覚める。俺なら【ガチャ】だ。
ただ本来なら【剣士】や【魔法使い】というスキルを授かる場合が多く、恐らくシホヒメは【魔法使い】だ。
こういう職業スキルを授かった人は職業に連なる行動を繰り返すことで新しいスキルに目覚めたりする。シホヒメは【魔法】とかが使えるはずだ。
それに比べて俺はない。【ガチャ】しかない。つまり、ガチャを繰り返して回しても強くなることはなく、ゲームのようにレベルを上げて強くなる方法もない。
「俺、下層に向かっても戦力にならないぞ?」
「えっ? エムくんってものすごく強いよ?」
「へ? いやいや、俺、自慢じゃないがめちゃ弱いぞ? ダークラビットすら怪しいぞ?」
「えっと……そういう意味じゃなくて――――エムくんの一番の力って」
シホヒメは俺を指差す。いや、俺じゃなく、俺の頭の上だ。
「――――リン様でしょう?」
「!?」
「私……ご主人しゃまの……従魔…………守るもん……」
「そ、そうなのか?」
「魔物使いは使役した魔物を戦わせるギフトだし、エムくんがリン様を使役したんだから、リン様はエムくんの力だよ~下層に行けば【極小魔石】ではなくて【小魔石】が出るからね」
「!?」
小魔石……! 喉から手が出るくらい欲しい!
「リン? 一緒に戦ってくれるか?」
「あい……♡」
「投げたら戻って来てくれるか?」
「それはいや……」
嫌なのかよ!
「わ、分かった。じゃあ、いつものように棘を頼むぞ?」
「あい……」
俺は人生で初めてダンジョンの二層を目指した。
向かってる間にリンの棘による攻撃で魔物たちが一瞬で消えていく。
魔石は俺とシホヒメで手分けして拾っては、ガチャ画面に入れて魔石ポイントに交換していく。
一度注入した魔石は戻らないので、後は引くしかできない。
そして、俺は初めて二層に降り立った。
そして、三層に降り立った
そして、四層に降り立っ…………
そして、五層に降り立…………
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