第19話 巨大なたわわに顔を埋める現実は夢を見たい
一体何が起きたんだ。俺の顔に当たっている
めちゃくちゃ柔らかくて、まるで水風船を顔に押し付けているかのような弾力。さらに
顔を全部覆ってるけど、あら不思議。息はできる。それを剥がそうとするが、とても剥がせる
俺の全身に触れている感触から
この柔らかさは…………。
「うふふ♡ ご主人しゃま大好き♡」
透き通ったその声は、聞いた者の心を癒してくれるかのような、そんな綺麗な声が聞こえる。が、内容がおかしい。
「…………リン?」
「あい♡」
…………と言っている通り、いま俺を全力で抱きしめている
ただし、スライムのはずのリンではない。
リンが俺に向かって飛びついた瞬間、姿が一瞬で
「なあ。リン。ちょっと色々聞きたいことがあるから、少し離れてくれないか?」
「やー♡」
「嫌だじゃないわ!! そもそも俺の顔を覆ってるのって一体なんだ?」
「ん~――――――私の胸?」
「…………」
は?
「う、うわあああああああああ! は、離れろリン! 頼む!!」
「え~もう少しぃ……」
真っ暗だった視界がどんどん開けていく。
目の前に得たいの知れない巨大なたわわ二つが離れていく。
「ひ、ひい!?」
「ご主人しゃま♡」
声がするたわわの奥を見つめると、真っすぐ伸びた布のような黒い髪と、妖艶な赤みを帯びた黒い瞳が俺に向いている。
ゆっくりと赤い舌を出して艶のある唇を、舌なめずりをする。
「り、り、リン! い、い、色々聞きたいことがある! そ、そ、そこに座ってくれ!」
「落ち着いて~ご主人しゃま♡」
落ち着けるものか! 誰のせいだと思ってる!
必死に言いたいことを飲み込んで、リンを座布団の上に座らせた。
「も、もしかしてシホヒメは知っていたのか?」
特大魔石を大事そうに抱えたシホヒメが首を縦に振った。
「はあ……一体何がなんだか……ひとまず、リンは人型にも変化できるんだな?」
「あい♡」
その語尾で一々息を抜くのを止めてもらいたい……すげぇ妖艶なんだよな……はあ……。
「聞いてなかったのも悪いが、ブラックスライムは何を食べるんだ?」
「ん~何でも? でも、美味しい物~」
「美味しい物か。それでソーセージが好きなのか?」
「あい♡」
「普通のご飯も食べられるんだな?」
「あい♡」
「わかった。これからはリンの分も作ってあげるから」
「ありがとう! ご主人しゃま~」
「う、うわあああああ!」
いくら人型になっていてもブラックスライム。とんでもない速度で動けるようで、一瞬で抱き着かれた。
また顔がたわわに当たってしまった。
「り、リン! や、やめてくれええええええ!」
「やー♡」
い、いけない! 自制……自制だあああああああ!
うおおおおおおおおお! 男としての尊厳と威厳を思い出せ! お前は目の前の欲望に発情するただの獣じゃないだろ! 気合を入れろ!
それから暫くたわわの攻撃を必死に耐えた俺は何とかギリギリ男の尊厳を守れた。
◆
次の日。
リンにはできる限り人型はやめてくれと頼んでいるので、いつも通り頭の上に乗っている。
「シホヒメ。今日は配信始まったらすぐに百連を回そう」
「あいっ!」
その表情はまるで戦争に向かう戦士のようだ……。まあ、眠れないから必死になっているのがわかる。
食事中も風呂に入る時も眠る時ですら特大魔石を抱きかかえている。
小型魔石がビー玉サイズ、中型魔石が拳サイズ、特大魔石はサッカーボールサイズだ。
リンの人型のたわわのサイズが特大魔石のサイズなんだよな……それが二つ。
っ!? お、落ち着け俺。確かに胸には夢が詰まっていると聞いているが、リンはあくまでブラックスライムだ。人じゃない。それにあの大きさは人離れしているから人の物じゃない。落ち着け俺。
今日も配信のためにダンジョンに入る。
あと数分で開始するからコウモリ型カメラが飛んできて待機している。
ガチャを回すためにシホヒメと開始を待ち続ける。
5秒……4秒…………1秒……。
《配信が開始されます。》
《視聴者数:1,270》
『リン様☆彡 リン様☆彡』
『残念美女☆彡 残念美女☆彡』
始まってすぐに弾幕が流れる。
「俺はないのかよ!」
『エム氏の
「それはいらん! さて今日は最初に狩――――」
その時、俺達の前にある男が現れた。
「待たれよ~!
なんかまた変なのが出てきた。
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