第17話 リアルジャンピング――

 一人は体が大きい男。一人は俺と同年代くらいの男だ。


 かなり険しい表情をしている。


(こいつらが来る前にガチャ回して大正解だったな……また邪魔されて回せられないところだった)


 絶望して四つん這いになっているシホヒメと、新たなトラブルの気配がする二人。


 俺達の間に緊張が走った。


 ――――次の瞬間。
















「「すいませんでしたあああああ!」」
















 飛び上がった二人が俺達の前に土下座した。


「ええええ!?」


『ジャンピング土下座キタァァァ!』

『リアルジャンピング土下座初めて見たんだけどww』

『今度はなんだ?ww』


「この度はエム様に大変な迷惑をかけてしまい、誠に申し訳ございませんでしたあああ!」


「ちょ、ちょっと待ってくれよ! そもそもあんたたちは誰なんだ!」


「俺達は――――亮介りょうすけの仲間なんだ!」


 …………。


 …………。


 亮介?


「すまん。誰かわからない」


「!? そ、そうだった! 白騎士だ! 白騎士!」


『あ~ホワイトナイトくんのお仲間か~』

『リョウスケええええ!』

『リョウスケ呼ぶなよww』


「ああ、あいつの仲間か」


「そうだ。その……シホヒメも久しぶりだな」


 シホヒメ?


 俺達の視線がシホヒメに集まった。


「……まくら……まくら……」


 もうダメだこいつ。


「そもそもお前達は誰なんだ? シホヒメと何か関係があるのか?」


「俺達は――――シホヒメの元仲間だ」


「元仲間!?」


「……まくら……まくら……」


 シホヒメは彼らなど全く構わず、ずっと呪詛じゅそを吐き続けていた。


「そうか! だからあいつがシホヒメを取り返しに来たのか!」


「亮介はずっとシホヒメが好きでな。学生時代からずっと好きで頑張って強くなったんだが、シホヒメがあんな感じで亮介に振り向かなくてな……それが先日突然一方的に脱退を言い出したんだ」


「…………」


「それに納得しなかった亮介がシホヒメを探し始め……あんな事件になってしまったんだ」


「全部シホヒメのせいじゃねぇかよ!」


「そ、そんなことはない! 探索者のパーティーはお互いに納得した上で組むんだ。シホヒメが脱退したいのなら止める筋合いはないんだ!」


「……まくら……まくら……」


 シホヒメにとっては元仲間よりも枕の方が大切のようだ。


「亮介がまさかあんなことをするとは思わなくて……本当にすまなかった。これはお詫びの印だ」


 そう言いながら、彼らは背負っていたリュックの中から何かを取り出した。


 真っ白い鎧、高価そうな剣だ。


「って! あいつの鎧と剣じゃねぇかよ!」


「亮介はもう探索者にはなれないし、装備はパーティーの物だから、迷惑料として君に渡すのが道理だと思ってな。使うなり売るなり好きに使ってくれ!」


 その時、呪詛を吐き続けていたシホヒメがビクッと起き上がる。


「あんたたち!」


「シホヒメ?」


「誰?」


「「「元仲間だよ!」」」


「ふう~ん。それはどうでもいいわ」


「いいのかよ……」


『元仲間の空気ww』

『残念美女はどうやらあれしか興味がないらしい』

『エム氏のあれ☆彡』


 俺のあれとか言うな!


「それより、エムくんに迷惑をかけといてそれでおしまいではないよね?」


「えっ? そ、それならどうしろというんだ!?」


 男の言葉にシホヒメが暗黒笑みを浮かべる。


 初日は天使みたいな顔してるのに、三日目くらいになると悪魔みたいな顔になるのすげぇな。


「そりゃ――――これから毎日私のため・・・・に魔石を集めてきて」


『奴隷キタァァァァァ』

『シホヒメって頭いいのか悪いのかよくわからないよな』


「わ、わかった。俺達が迷惑をかけてしまったのは事実だ。これからシホヒメのために魔石を持って来よう」


「いやいや、待ってくれ!」


「止めるなああああ! 俺達は……俺達は亮介の想いを紡いで、彼が犯した罪を償うべきなんだあああああ!」


 こいつ。見た目通り暑苦しいな。


 二人の男は、亮介の武器と鎧を置いて急ぎ足で二層に向かって走って行った。


 それを見ながら、ニヤリと笑うシホヒメに溜息が出る。


「はあ……どうなっても知らんぞ? それよりこの鎧と剣どうする?」


「魔石に交換する」


「即答かよ」


「……まくら……まくら……」


「まだ終わってなかったのかよ!」


『残念美女☆彡 残念美女☆彡』

『腹黒美女☆彡 腹黒美女☆彡』


 また新しい称号が増えたな。


『リョウスケの装備っていくらしたのか教えてくれよ~』


「わかった。今日売りにいくか……それにしてもこんな重いもん持ってこられても困るんだがな」


 すると、頭の上にいたリンが剣と鎧に飛びつく。


 手で持てるくらいのサイズだったリンが一気に体を膨らませて剣と鎧を飲み込んで元のサイズに戻って、俺の頭の上に戻ってきた。


「リン?」


「保管……できる……」


「お~! こういうの保管できるんだな? 凄く助かるよ」


 リンが嬉しそうに頭の上で揺らいで、リンを称えるコメントの弾幕が流れた。


 俺が思っているよりリンは色んなことができるのかも知れない。


 それにしてもリンが活躍している度に応援が増えていく気がする。


 《視聴者数:1,251》《応援:320》

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