第12話 ふたりの仲
『おお~シホヒメがキラキラしてる~!』
『シホヒメってちゃんと寝たら光り輝くんだな』
『めちゃ美女』
『だがしかし、普段は残念美女』
「残念美女じゃないよ~☆」
『眩しい!』
『これが……エム氏の配信?』
『俺達の暗いエム氏の配信が光の者にジャックされた』
「俺は暗い配信者じゃねぇ!」
今日の配信が始まって気になることがある。
《視聴者数:581》と書かれた画面だ。バグってはないはずだ。先日の倍を超えている数字に手の震えが止まらない。
『それにしても今日はやけにリスナーが多いな』
『例の画像が広まってるみたいだぜ』
「ん? 例の画像?」
『シホヒメを倒したリン様の画像が流行ってるんだ』
「へえーそんなことがあったんだな」
俺の知らないところで知らない画像が回っているのか。まぁリスナーが増えてくれれば、そのぶん応援されやすいはずなので気にしないでおこう。
「シホヒメ。今日はどうするんだ?」
「私は二層で狩ってくるよ~」
二層はダークウルフが出るはずだ。素早くて魔法使いにとっては戦いにくいはずなのに、一人で戦える彼女の実力の高さが伺える。
「わかった。じゃあ、また後でな」
「あい~」
シホヒメが二層に向かうために離れていくと、『いってらっしゃい~』というコメントもたくさん流れる。
「リン。今日もよろしくな」
「あい……」
相変わらず今日も眠そうだな。スライムっていつも眠そうなのか?
ダークラビットを見つけていつも通りリンを投げつける。
『リン様☆彡 リン様☆彡』
いつものウニ爆弾となってダークラビットに刺さると一撃で倒す。
相変わらず動かねぇ……どの道、魔石を拾うために行かなくちゃいけないしな。
その時、岩の影から何かが俺に向かって飛び掛かってきた。
「うわあっ!?」
『危ねぇ!』
『リン様☆彡』
俺を目掛けて飛んできたダークラビットが空中で止まったままその場で消える。
「えっ?」
思わず間抜けな声を出してしまったが、ダークラビットが消えた空中に遥か遠くから棘を伸ばしたリンの姿が見えた。
どうやら助けてくれたみたいだ。
急いで魔石を回収してリンのもとにやってきた。
「リン。助けてくれたのか。ありがとう」
「あいっ……」
感謝を込めてぽよんぽよんした体を撫でてあげる。
彼女の意志でくっつけるのにベタベタしないのが不思議な。むしろスベスベしてぷよんぷよんして気持ちいい。
『リン様ナイス~!』
『奴隷。リン様に感謝を述べろ』
「はいはい。リン様、助けてくださり感謝申し上げます~! ははっ~!」
両手に持つリンを
『リン様☆彡』
『リン様☆彡』
『リン様☆彡』
『リン様☆彡』
すぐに弾幕が流れ、応援数が増えていく。
動かないけど助けてくれるし、人気もでているし、本当にリンが様様だ。
「ん? リン。その棘ってどれくらい伸びるんだ?」
「ん……向こうくらい?」
「ちょっと伸ばしてみてくれるか?」
「あい……」
次の瞬間、リンの体から棘が俺が立っている場所から遠くの壁まで伸びて刺さる。軽く十メートルは伸びている。
『めちゃ伸びるな~』
『リン様最強~!』
『可愛いのにこんな得意が!?』
「リン。すまんがこれから投げずに俺の頭の上から敵を狙ってくれるか?」
「いいよ……」
「ありがとう。動くのは嫌だけど、棘はいいんだ?」
「うん……これは疲れない……」
「じゃなかったら投げられても棘を出さないしな。みんな~これからリンが棘で倒してくれるらしい」
『よかったな。奴隷」
『全力で走り回れよ~奴隷~』
「誰が奴隷だっ!」
言われなくても魔石のために走りまくりますよ!
今までとは違ってダンジョンの中をそれなりに早めに歩く。さすがに走る体力はないから無理はしない。
歩いていると、頭の上から黒い棘が伸びて、視界に入るダークラビットを倒してくれる。
倒れたダークラビットの魔石を回収するために歩き回る。
なんと、岩の裏にいるダークラビットすら、岩を貫いてダークラビットを倒してくれる。これは本当に助かる。
それから約二時間が過ぎ、シホヒメと合流して最後のガチャとなった。
《魔石ポイント:1,021》
ギリギリ十連が回せられる。
『ギリギリだったな』
「シホヒメのおかげだけど、今日はリンの頑張りもあったな」
「リンちゃん。頑張ったね」
手を伸ばすシホヒメに触れる直前、リンが棘を伸ばしてシホヒメの手を刺した。
「痛っ!?」
「シャー」
「リン!?」
『二人仲悪くて草』
『シホヒメが犬に嫌われたみたいで笑えるww』
ふたりって意外と仲悪かったんだな? というか、前回も頭突き(?)してたし、リンが一方的に嫌ってるのかも知れない。
「シホヒメ大丈夫か?」
「え、えっと……あ……あんか…………」
「シホヒメ!?」
体が壊れたロボットみたいにカクカクし始めるシホヒメが倒れそうだったので急いで介護する。
「か、体が……し、痺れ…………」
「シホヒメえええええええ!」
全身が固まったシホヒメだった。
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