第5話 湖上公園
次の日の朝、恵子さんはぬいぐるみをカバンに入れて湖上公園に行った。恵子さんにはマイクが付けられているし、我々捜査1課の捜査員も変装して周囲を見張っている。ただ日曜日の公園だから人が多く、どうしても目が届きにくい。そこに恵子さんのスマホに電話がかかって来た。
「ぬいぐるみを出して右手に持て。それでゆっくりと展望台の方に向かうんだ。」
犯人の指示が聞こえてきた。いよいよ動き出したのだ。ただ犯人と接触してもすぐに逮捕はできない。泳がして美緒ちゃんの居場所を探らねばならない。
恵子さんは展望台の方に歩きだした。そこは人ごみでごった返していた。彼女は人ごみをかき分けて展望台にやっとついた。その右手にはまだぬいぐるみが握られている。まだ犯人は接触していない。捜査員は彼女のそばでじっと待機していた。だが恵子さんの様子が変だ。遠くの方を見ている。何かを目で追っているかのように・・・。
私はその方向を見た。そこに一人だけ急いでその場を離れようとしている作業着の男の姿を見た。
(もしかして・・・)
私はその方向に走り出した。その男は早足で川の方に歩いている。そして私が追ってくるのに気付いたのか、急に走って逃げだした。その手にはうさぎのぬいぐるみが握られている。人ごみの中で恵子さんの持っていたものとすり替えたのだ。
「怪しい男を発見! 川の方に向かっています!」
私は無線で連絡しながら走った。男はそこに留めてあったエンジンボートに飛び乗ると、結んでいた縄をほどいてそれで逃げようとしていた。
(このままでは逃げられてしまう。それなら男を逮捕して美緒ちゃんの居場所を吐かせた方がいい。)
私はそう判断して、男に向かって
「止まりなさい!」
と大声を上げた。しかしボートは岸を離れた。私は勢いよく飛んで、そのボートに飛び乗った。
「警察です。おとなしくしなさい!」
だが男はつかみかかって来た。私はその男の手をひねり上げて倒そうとした。しかし男の力は強く、逆に倒されて何かで頭を殴られた。そこから記憶がない・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます