第4話 電話
私は藤田刑事とともに恵子さんのアパートで待機していた。私のそばにはあのうさぎのぬいぐるみがある。このぬいぐるみは山中から美緒ちゃんに渡されたものだ。その中に何かの目的でUSBメモリを隠したのだ。美緒ちゃんを連れ去ったのはそれを回収するためだろう。だがそれが果たされぬままに美緒ちゃんだけが拉致されたのだ。
(必ずこのぬいぐるみに入ったUSBメモリを要求してくる。美緒ちゃんを人質に・・・)
私たちはそう思っていた。
USBメモリの方は強力なセキュリティーがかかっており、すぐに開くことはできない。だが犯罪に関係しているのには間違いはないだろう。それが山中たちがやった宝石強盗とのつながりはどうか・・・それはまだわからない。しかし一つだけ確信があった。
(きっと彼らにとって大事なものだ。きっと接触してくる・・・)
私たちは恵子さんに張り付いていた。恵子さんは美緒ちゃんが連れさられたと聞いて心配のあまり青ざめていた。彼女もまた犯人からの電話を待っていた。美緒ちゃんは恵子さんのスマホの番号を覚えているらしい。犯人がそれを聞き出すはずだ。
やがて恵子さんのスマホが鳴った。藤田刑事が合図して恵子さんに出てもらった。
「もしもし。」
「中山恵子さんかね。」
機械で加工された声が聞こえてきた。
「ええ、そうです。」
「娘を預かった。返してほしかったらこちらの要求を呑んでもらう。」
「美緒は無事なんですか? 美緒の声を聞かせてください!」
「だめだ。娘のうさぎのぬいぐるみを持ってくるのだ。明日、10時に湖上公園だ。詳しくはスマホで指示する。サツの奴らがそこにいるだろう。ぬいぐるみの中身をすり替えるなど小細工をするな。変なことをしたら人質の命はない。いいな!」
そこで電話が切れた。犯人の要求はやはりこのぬいぐるみ、いや中に入っていたUSBメモリだ。セキュリティーが堅固で明日までにデータを見ることはできないだろう。仕方なくそのままUSBメモリをぬいぐるみに戻して犯人に渡すしかないのだ。美緒ちゃんの命には代えられない・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます