魔眼推理の見つめる先に。 ~夢の館の二重密室~

よるか

魔眼を持つ少女 ――0――


 足桐あしぎり 蒼起そうき

 それが十七年間の記憶を失くしたぼくに残った名であり、ふたつ目に覚えた名であった。


 じゃあ、ひとつ目に覚えていた名がなんだったか、という話になるのだけれど、それをまあ、聞かれるまでもなく語ろうとしていたところだ。

 あの事件を通して思い知らされた、その名が持つ意味を。その名が持つ力を。


 だからひとつ、覚えておいてほしい。人の目を見て話すことは大事だけれど、その眼が光り輝くならば、覗くのだけはやめておけ。魅入り魅入られて、ぼくのように道を踏み外すことになるだろうから。

 それこそが特殊な力を宿した瞳――『魔眼まがん』である証拠で、只人ただびとは畏怖の念を込め、その異能を『光り目』と呼んだのだ。


 ぼくが記憶を失くしてものは、まさにそんな、魔眼を持つ彼女の名であった――。

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