第2話 自分は飲めないコーラ

「おい、お前。これやるよ」

「あ? 何だ?」


 朝の挨拶もなしに、また隣の奴はオレに何か差し出してきた。それは……。


「コーラ?」

「学校の近くの自販機で当たった。運が良ければ、二本目タダで貰えるのあるじゃん。あたし炭酸ダメだから、お前にやるよ。お前コーラ好きじゃん?」

「おお、よく知ってんな」

「前に自分で言っていたの、忘れてんのかよ? 記憶力やベーな」

「そんなどうでも良さげなことをいちいち覚えている、お前も記憶力やべーよ。ある意味」

「うっせ」


 ……ん?

 少し顔が赤くなっている奴を見ながら、あることにオレは気付いた。


「あれ? でも、その二本目って自分で好きなの選べるんじゃ……」

「あーあー、そういえば! お前、昨日のグラビアどーだったよ?」

「は? チラッと見て終わり。それより漫画が結構良かった。サンキュ」


 急に話題が変わった。なぜか目の前の奴は焦っているが、すぐにオレは質問に答えた。すると目の前にある顔はパアァと明るくなった。


「ま、マジ? お前、あーいうの興味ないんだ!」

「いやいや全員かわいかったけど、別にオレそこまでは……」

「そうかぁ~、そうかぁ~……」


 ……何だよ、その反応……。


「やけに嬉しそうだな」

「そっ、そんなことねーよぉ~! あぁ、あとコーラは全然あたし飲んでいないからな!」

「あー、昨日とは大違いか。雑誌は思い切り中古だったもんな」

「そうだよ~。間接キスできなくて残念でしたぁ! あっ、でもお前インポだから別に気にしないよねっ!」

「……は?」

「アハハ! じゃーな!」


 そう言うと、奴は笑いながら自分の友達グループの元へと(なぜか)逃げるように向かっていった。

 ……オレは健康な男子だよ。

 悪態を気にしながら、オレはペットボトルに入ったコーラを飲み始めた。


「……うまい」

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