やたらとオレに何かくれるクラスメート

卯野ましろ

第1話 一部が切り取られている雑誌

「お前、彼女いんの?」

「は?」


 隣の席の女子がオレに質問してきた。予想外の言葉に、一気に眠気が飛んでしまった。こいつとオレは席とか関係なく、普段から結構話す。ついさっき席替えして初めて隣同士になったオレたち。しかし隣の席になった途端、そんな質問をされるとは思わなかった。そして、もちろん答えは……。


「……いねぇよ」

「え! マジ?」


 案の定の反応。

 ああ、人の不幸は蜜の味ってか。


「何だよ、嬉しそうな顔しやがって……」

「はっ? しっ、してねぇーよぉー」


 いやしてるしてるしてる。

 顔に出やすいんだよ、お前……。

 今更、焦んなくていーから。

 茶番だよクソ。


「よーし! そんな淋しいお前に、これやるよ! ほらっ!」

「え?」


 隣の奴はカバンからゴソゴソ何かを取り出した。そして、それをオレに投げ付けた。


「っぶね! 何だよ、お前!」

「エロ本だよーん♪」

「は?」


 バシッと机に当たったそれを、オレは急いで拾った。


「何お前~。そんなに読みたかったのかよ~」

「ちっ、ちがわいっ!」


 否定しながら、オレは手に取った本の表紙を確認した。

 水着のお姉ちゃんたちがおっぱ……いや、いっぱいいる。


「何だ、早速た」

「ってねーよバカが!」

「安心しろよ、ただの漫画雑誌だから」

「知っとるわ!」

「さすがにお前にガチなのは早いから、まずこういうグラビアで慣れろよ」

「ケッ!」

「授業中にコッソリ見んなよ。あたしが金払ってんだから、没収なんてされたら承知しねぇからな」

「……はいはい」


 まだまだ休み時間は明けない。とりあえずオレは、その雑誌をパラパラとめくってみた。


「……ん?」

「お、どーしたよ」

「何か、ここおかしくね?」

「あぁそこ、あたしの好きな漫画があったんだよ。他は興味ないから、そこだけ切り取ったの」

「じゃ、これはもういらないものなんだな?」

「うん、そうだよ」

「オレはお前にゴミを押し付けられたってことだな?」

「次の授業の準備しーようっと♪」

「おい! ゴミ箱じゃねーぞオレは!」


 隣の席の奴は、ご機嫌で机から教科書やノートを出し始めた。

 帰宅後オレは、一部が切り取られている雑誌を読んだ。なかなか楽しめたので、ゴミと言ったことは反省しよう。

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