第10話父親の告白
椿と鹿波はビジネスホテルに宿泊し、佐渡島にいるスタッフに英輔に会えたことを報告した。佐渡島では引き続きカスミさんの捜索が行われているが、未だ発見にはいたっていないという。
翌日、椿と鹿波は再び英輔の家を訪ねた。撮影の許可を認め、英輔は椿と鹿波を家に招き入れ、話をしてくれることになった。
「それでは質問します、カスミさんの失踪について心当たりはありませんか?」
「・・はい、カスミさんは命を狙われていたのです。」
「母が命を・・・!?」
衝撃のセリフだった、椿と鹿波は絶句した。
「カスミさんは元々ある銀行の銀行員をしていました、私が独身の時に高校の同窓会に行って、そこでカスミと知り合い付き合いました。お互いの両親も結婚に同意してくれて、このまま結婚するはずだったのですが・・。
ある日、カスミから自分が命を狙われているということを告白したのです。」
「それで、どうして命を狙われているのですか?」
「理由は銀行の不祥事を自分が知ってしまったからです、それも裏社会絡みのヤバい秘密を・・」
そして英輔は一枚の新聞を持ってきた、発刊された日付は今から二十年前になっている。
「この記事が出た時には、すでに事件は解決していました。私はその後すぐにカスミと連絡を取って会おうとしたのですが・・、連絡は来ませんでした。」
「なるほど・・・」
「あの・・・、なんで会いに来なかったのですか?母さんの事件が解決して、会いに来れるようになったんじゃないのですか?」
「・・・すみません、鹿波にはカスミと一緒に会いに行く予定でした。でもカスミと連絡が取れなくなって・・・不安になったんです。ひょっとしたらあの連中が口封じにカスミさんを消してしまったんじゃないかって。それでずっと一歩踏み出せずにいました。」
「そうか、鹿波さんに会いたいという気持ちはあったのですね。」
「はい、すぐに会えなくて本当に申し訳ない・・・」
英輔は言い訳がない素直な気持ちで鹿波さんに頭を下げた。
「いえ、あたしのことを思ってくれていただけで幸いです。」
「そうか・・・、すまんなぁ・・」
英輔はただすすり泣くことしかできなかった。
とある一軒家の部屋に、今感動が起きたのだった。
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