第3話病院

加藤さんの母親を捜索する我々は、まず加藤さんが産まれた病院を当たってみることにした。

加藤さんが産まれたのは大宮大学総合病院、我々は車を走らせて向かった。

車に乗っているのは椿とスタッフの道草と小岩井、病院には事前に連絡を取っておいた。

受付に向かうと椿は、係員に説明した。

「すいません、調べたいことがあるのですが、伊久喜いくきさんはいらっしゃいますか?」

「はい、少々お待ち下さい。」

係員は伊久喜を呼ぶために席を外した。

少ししてスーツを来た伊久喜さんが現れた、こちらを若干迷惑そうな顔で見つめている。

「話は聞いているよ、調査したいことがあるそうだね。とりあえずここは患者がいるから、場所を変えよう」

「お手数おかけしてすみません」

我々は伊久喜さんに案内され、応接室へ通された。

「それで、調べたいことは何でしょうか?」

「調べたいのは加藤鹿波さんのことについてです、我々は彼女の母親について調査すべくここに来ました。これが彼女の戸籍謄本の写しです」

椿は伊久喜に資料を渡した、伊久喜は少し目を通すと椿に言った。

「それで加藤さんは今何歳ですか?」

「二十五歳です」

すると伊久喜は資料を椿に返して言った。

「ここには二十五年も前の出生記録はありません、もう処分されています」

椿たちは残念そうな顔をした、しかし椿は引き下がらない。

「それではもうお引き取りください」

「それでは当時のことを知っているかたにご存知はありませんか!?」

「さぁ、私は知りませんよ?」

「お願いします!!加藤さんをお母さんに会わしてあげたいのです!!」

椿は深く頭を下げて頼み込んだ。伊久喜は考えた末、難しい顔をしながら言った。

「それでは一人、心当たりのある人を紹介しましょう。ここで三十年ほど産婦人科に勤めている方です、これ以上は私でも手の打ちようがありません。」

「ありがとうございます!」

こうして我々は助産師の雷羽福実らいはふくみを紹介してもらうことになった。




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