第15話
図書室には俺と星森さんしかいなかった。珍しく新島さんは来ていなかった。
「健人君はゴールデンウィークの間何してたの?」
「俺は卓也と燈也と遊びに行ったのと妹と買い物に行ったぐらいで他は何もしていないよ」
ちなみに男3人でボーリングをした。スコアは俺>燈也>卓也の順でよかった。負けた卓也にはその日の俺の昼食を奢ってもらった。
「菜那ちゃんとは会っていないの」
「菜那とは会っていないな。あいつが旅行に行ってたのもあるが」
「そうなんだ。菜那ちゃんが健人君が買い物に行く女の子は私か家族ぐらいしかいないって言ってたからどこかに行ったりしたのかなって思って」
菜那と出かけることもある。だが、菜那の荷物持ちとしてついていくことが多いけど。
「たまにあるけど最近はないかな」
「そうなんだ」
私、星森沙奈は羨ましかった。菜那ちゃんは幼馴染だから健人君と一緒に出かけるのかな?私が一緒に行こうと行ったら迷惑かな?
私は一回自分から誘っているんだけど。ある日の帰り道に私、健人君、菜那ちゃん、有紗ちゃんで帰っていたときに私は「2人で抜け出す」と聞いた。でも健人君は「しないよ俺は」と言われた。それに私は小さい声で「二人きりになれるのに」と言った。健人君は聞こえていなかったけど。
そのことがあってからは断られるのではないかと思ってしまい。臆病な私が出てしまった。健人君は冗談と受け取ったかもしれないけど私は本気だったよ。だから出来るなら健人君から誘って欲しい。
「星森さんにお願いがあるんだけど」
えっ?!まさかデートのお誘い……。こんな早くに……。
「えーと、何かな」
真剣そうな表情。本当にデートのお誘い……。
「星森さんのおすすめのSF小説を教えてほしい」
……分かっていたよ。うん。分かっていた。私の妄想が現実になるとは思っていないかったよ。
「………」
「…星森さん?」
「健人君行こうか」
「う、うん」
……あーもう最悪だ私。態度に出てたかな。分かっているよ健人君が悪くないことぐらいは。過剰に期待した私が悪かったのは。でも期待しちゃたんだからしょうがないよね。
「これくらいかなここにある私のおすすめは」
正直知らない作品のほうが多い。学校の図書室の本が最近の作品だけではないのは分かるけどもう少し最近の作品も置いてほしいな。
「ありがとう星森さん。これを借りるね」
嬉しい。健人君からお礼を言われたの。もしかして初めてかも健人君からは。
「どういたしまして」
健人君と晴れやかな放課後を過ごした。少しは縮めたかな私と健人君の関係。小さなきっかけもそれが続けば大きなきっかけに変わる。そう信じていたい。
私、高鈴菜那は沙奈ちゃんと健人の関係が気になる。昼休憩のときに聞かれた健人と歩いていた女子の話を聞いて私は思った。たぶん沙奈ちゃんは健人のことが好きなんだと思う。
でもきっかけは何だろう?入学式の日に初対面なのに沙奈ちゃんから距離を縮めていた。過去に会っているなら私も知っているはず。でも私と健人が初めて会ったのは6歳のとき。それ以前だと私も分からない。
クラスで沙奈ちゃんのことを想っている人は多い。現に席替えをして沙奈ちゃんの隣になった青崎君もその1人だと思う。それは沙奈ちゃんの顔の可愛さもあるけど飾らない性格もあると思う。
だけど健人のことを好きとは限らない。だけど沙奈ちゃんと1番仲が良い男子は健人なのは間違いない。それは高校で初めて隣になった男子だったからかもしれないけど。
いつも私の隣にいる男子は健人。でも健人は私のことをただの幼馴染としか見ていない。1番近くにいるのに1番離れている。恋愛対象として見られていない。
高校入学前に健人が「俺は高校在学中に彼女をつくる」と言ったときは焦ったと同時に期待もした。私のことを1人の幼馴染としてではなく1人の女子として見てもらえるかもと思った。しかし実際は私のことをただの幼馴染としてしか見ていない。
私と健人の共通点は幼馴染。それは他にも同じ共通点を持つ人はいると思う。でも私たちはそれだけではない。兄妹みたいな幼馴染。
今は私が姉かもしれないけど昔は健人のほうが兄だった。
今も昔も対等ではない。どちらかが差し伸べ、どちらかが手を取る。私たちはいつもそう。
健人と対等になったときに私たちは変わる。でも簡単ではない。10年近く続いたこの関係を変える。
この関係を変えるのが私の目標。どれだけ時間がかかってもいい。
長年片思いをしてきた私の恋を叶えたときには恋人として対等へ。
叶えれなかったときは互いに気まずくなり疎遠になる可能性がある。
それだけは避けたい。だから今の関係のままでもよかった。もし沙奈ちゃんが健人のことを好きだとすると私はなりふり構わずに健人と恋人になりたい。
対等な関係に大事な幼馴染から恋人へステップアップすることが私の目標。
明日は私の誕生日。距離を縮める絶好のチャンスだ。
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