第14話

 昼休憩に教室で私、菜那ちゃん、真里ちゃんの3人で昼食を食べていた。

「沙奈ちゃんはどう新しい席」

「正直前のほうが良かった」

 健人君と話せるから。しかも今の私の隣の人ちょっと苦手だから。

「まあ、後ろのほうが楽だもんね」

 前回の席は一番後ろだった。今回は前から2列目の席になった。見られて困るようなことや物を持っていたわけではないが先生と離れている分だけ気持ちが楽だから菜那ちゃんの気持ちは分かる。

「菜那ちゃんはどうなの」

「特に不満はないかな。前回と似たような状況だから」

 菜那ちゃんの周りには話したことない人が多いらしく入学したての四月と状況が似ているらしい。

「真里ちゃんはどう。新しい席」

「一番前だけはやだった」

「「だよね」」

 誰だってそう。悪いことしてなくても監視されているような気持ちになるから。


「あっ、あの、菜那ちゃん」

「どうしたの」

「菜那ちゃんに聞きたいことがあって」

「うん。何でも聞いて」

 勇気を出すんだ私。健人君のことを聞くんだ。深呼吸して口を開けた。

「この前健人君が女の子と一緒に歩いていたの見たんだ。誰か気になっていて健人君と仲が良い菜那ちゃんなら知っていると思って…」

 本人に聞こうと考えたけど彼女だと言われたら今度こそショックで家から一歩も出れなくなるかもしれない。その点菜那ちゃんからならショックは小さいと考えたから。

「健人と一緒に出かける女の子は私か家族ぐらいだよ。でもどうしてそれ聞くの」

 やっぱりそれ聞くよね。

「たまたまこの前見たから。彼女いないと言ってたから本当は嘘ついていたのかなと思って」

 そんな会話はしていない。

「そういうことね。たぶんそれ健人の妹じゃないかな」

「え、妹?」

「うん。というかアイツ彼女いたことないよ」

 以外だった。てっきり過去に1人や2人ぐらいいると思っていた。彼女いたことないんだ。

「山城に妹いたんだ」

「うん。風香って名前の子なんだけど今中学3年生なんだけど来年に神野高校を受験すると言ってたよ」

「ということは山城と同じで幼馴染なんだ」

「そうだね」

 妹?血は繋がっているんだよね。私には兄弟いないから分からないけど普通の兄弟は一緒に買い物へ行くの。

 菜那ちゃんから妹の可能性が高いと言われたが、まだ違う可能性を否定出来なかった。


「健人君よかったら今日も図書室へ来ない」

 聞きたい。この前の子のことを。

「いいよ。ちょうど本返したかったし」

 ゴールデンウィーク前に本を借りていたらしく放課後に返そうと思っていたそうだ。

「だったら一緒に行こう」

「わかった」

 放課後になると教室には吹部の演奏以外の音はしていなかった。静かな廊下を歩いている私たち。その静かさが私にプレッシャーになっていた。

「星森さん俺の顔ずっと見てるけど何かある?」

「えっ、いや、何もないよ」

 あー、もう。健人君を無意識に見てたなんて。恥ずかしいすぎる。余計に聞きづらくなった。

「そういえばさ星森さんは菜那の誕プレ買ったの?」

「一様は買ったけど……」

「何買ったの?」

「えーと、アイシャドウとリップを」

「やっぱりそういう系がいいのかな」

「健人君は何買ったの?」

 幼馴染として男友達としてからのプレゼントを何送るのか気になるな。

「俺は文房具などをあげる予定だけど本当にそれで良かったのか不安だな」

「高校生が文房具をプレゼントされて嬉しくないことないよ。絶対菜那は喜ぶよ」

「とはいえ期待はずれみたいにならないといいけど」

 健人君も菜那ちゃんへのプレゼント不安なんだ。幼馴染だからこそ他の人よりいい物あげたいと思っているのかな。

「健人君はプレゼントいつ買いに行ったの」

「この前のゴールデンウィークの日」

 もしかしてあの日なのかな。

「えーと、1人で買いに」

「1人ではなく、妹と一緒に妹のアドバイスも貰いながら買ったよ」

 よ、よかった。でも五日とは限らないから。

「どこに何曜日に」

「すごい食いつくね。五日に家の近くのショッピングモールに」

 あのときの子は妹さんだったんだ。私諦めなくていいんだね。

「仲良いんだね」

「そうでもないよ」

 私の初恋は終わらなかった。私もいつかは健人君と並んで買い物に行きたいな。その時は手を繋いで……恋人として……。

 妄想に浸っている恋する少女は無意識に笑顔が溢れていた。


 ……隣にいる星森さんが何か変だ。風香と仲が良いと言った後に笑顔でスキップするかのような速さで歩いている。

 やっぱ高校生で妹と買い物に行くのは変なのかな。昼にも卓也と燈也にも言われたが……。

 少女の妄想の先にいる男子は勘違いをしていた。少女は一言もそんなこと言ってないのに。

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