第11話

「ただいま」

 あの後菜那と星森さんと分かれ自宅に帰った。

「おかえり健兄」

 家には風香しかいなかった。まだ両親は帰っていなかったのだ。

「近いうちに買い物行くから着いて来て」

「なんで」

「菜那姉さんの誕生日近いでしょ。どうせ私のアドバイスがないとろくなもの買えないでしょ」

 例年この時期になると風香と買い物へ行く。去年はハンドクリームとハンカチなどの雑貨をあげた。

 当初の俺はコスメとかの化粧品をあげようとしていたが知識がなく。またその人の好みの色や肌に合わないなどの問題があるとのことでおとなしく風香のアドバイスを聞いた。

「分かった。いつにする」

 こうして今年も風香との買い物が決定した。


 俺たちは映画館を含む大型商業施設へ買い物へ出かけた。俺と風香の都合から実際に買い物へ出かけたのはゴールデンウィークに入った五月五日だった。菜那の誕生日は五月九日なので今日買わなければ1人で買い物へ来ないといけなくなり的外れなプレゼントをあげる可能性が高くなる。それだけは絶対に避けたい。そう思っている。

「健兄は何にするか考えてきた」

「ハンドクリームなどがいいかなと考えているが去年と同じっていうのはな」

「そんなことないよ菜那姉さんは健兄からのプレゼントなら喜んで受け取るよ」

 それならいいが。そしたら去年のコスメはなぜ反対された。

「でも貰うことが嬉しいだけでプレゼントの中身が嬉しいわけではないと思う」

 確かに誰だってプレゼントは嬉しいもんな。でも要らないものを渡されても困るだけだからな。

「風香的には消耗品のほうがいいと思うのか」

 去年のハンドクリームみたいに使うことができるもののほうが嬉しいのか俺には分からなかった。

「一概にそうとは言えないけど無駄に使いづらいアクセサリーなどよりはいいかな」

「なるほどな。それなら去年と同じでもいいからハンドクリームなどのほうがいいのか」

「そういうこと」

 風香のアドバイスを聞きながら何買うか考えていた。ちなみに風香は事前に買うものを決めていて、いつも菜那が使うコスメのブランド品をあげるそうだ。俺には去年ダメだって言ったくせに。


「健兄からは花でもプレゼントしたら」

「そしたらプロポーズみたいにならないか」

「でも一番喜ぶよ。菜那姉さんが喜ぶ姿を見たくないの」

「恥ずかしいから却下」

「絶対喜ぶのに」

 嫌だろ兄妹みたいに過ごしてきた幼馴染から急に花をプレゼントされたら。

「それで何にするか決めた」

「無難に文房具がいいかなと思っている」

「もらって困らないからね。それだと健兄だけでも決めれるし」

「ただそれだと喜ぶのか心配だな」

 嬉しいけどなんか期待ハズレみたいにならないかな。

「困りはしないよ」

「それもそうだな」

 風香と一緒にコスメストアに買い物に行った後に雑貨屋に行き筆箱とかわいいマーカーペン、付箋、シャーペンを買いプレゼントとしてラッピングしてもらった。

「もうすぐ12時だしご飯食べて帰るか」

「早いね。私健兄の買い物が長引くと思っていたから最悪昼抜きだと思っていた」

「そう思っていたのか」

「思ってたも何も2年前はそうなったじゃん」

 2年前も菜那の誕プレを買おうと一緒に買い物していたらいつの間にか3時になっていた。たぶんそのことを言っているのだろう。

「とりあえずフードコートへ行くか」

「そうだね」

 菜那への誕プレを買い終わった俺たちは昼食のためにフードコートへ向かった。


「健兄は何食べるの」

「俺はラーメンでも食べようと思う」

「私もそうしよ。後で金渡すから買ってきて」

 こいつ兄をパシリにしやがって。断ってもめんどくさいだけだし買ってきてやるか。

「何にするんだ」

「私味噌ラーメンとチャーハン小で」

「はい分かりました」

 妹にパシリにされながらラーメンを買いに行った。


「買ってきたぞ」

「サンキュー健兄」

「今度からは自分で行け」

「でも優しいから頼めば行ってくれるじゃん」

 それは駄々こねるからだろ。断るほうがめんどいからな。

「健兄は醤油なんだ」

「そうだけど」

「一口ちょうだい」

「はいどうぞ」

「優しいじゃん」

 俺は皿を近づけて風香に渡した。決して「アーン」をしたわけではない。

「美味しいね」

「俺まだ一口も食べてないけどな」

 お詫びとして風香の味噌ラーメンを一口もらった。食べた後思ったが味噌ラーメンのほうが美味しいかった。

「健兄は寄りたいとこある?」

 食べている最中に書かれた。

「俺はないかな」

「だったら本買うから着いて来て」

「分かった」

 最近の俺は星森さんと新島さんの影響で家でも少し本を読むようになっていた。そのため俺も学校にない本でも買おうか悩んでいた。


「私漫画買うから着いて来て」

「荷物持てと」

「分かっているじゃん」

 そりゃあ何年家族でいるんだよって話だからな。こいうときは荷物持ちになれということなんだろうと分かりきっていた。

「私はこれでおしまい。健兄は何か買う?」

「買う気力失せたからいいよ」

 まさか漫画や小説、雑誌と計三十冊近く買うとは思わなかった。どこにそんな金あるんだ。

「じゃあレジ行こ」

 本を買い終えた俺たちは商業施設をあとに家へ帰った。ちなみに本は合計で2万円いかないぐらいの値段だっため本の数以上に俺は金額の安さに驚いた。

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