第10話
「健人と沙奈ちゃん?一緒にいたの?」
「菜那ちゃんも帰り」
「うん。でも私てっきり健人はバスケ部の見学に今日も行ってるのかと思ってたけど」
「ああ、図書室にいたんだ」
吹部帰りの菜那と下駄箱で会った。俺バスケ部入らないって言ってたんじゃん。
「あっ、あの…」
星森さんの横にいた新島さんが声を出していた。たぶん彼女も人見知りなんだと思う。
「健人そこにいる人は」
「新島さんのこと?」
「うん」
菜那も人見知りだ。本人に声をかけずに俺を経由するあたり直ってはいないのだろう。
「わっ、私、に、新島有紗です。よ、よろしくお願いします」
「たっ、高木菜那です。よろしくお願いします」
名前もそうだがもっと他の情報も言わないと。
「菜那ちゃんは私と同じD組で吹奏楽部に入っているの。有紗ちゃんは私と同じ文芸部でC組の子だよ」
星森さん大切な補足ありがとう。
「というわけだから2人とも仲良くしてね」
星森さんその無茶振りは無理がある。今時の幼稚園でもそんなこと言わないぞ。
「うん。分かったよ沙奈ちゃん」
「わっ、私も分かりました。さ、沙奈さん」
星森さんの無茶振りがよかったのか分からないが、その後の2人はちょっと打ち解けたようで互いの部活やクラスのこと趣味について話していた。
「私たちだけ除け者みたいになったね」
「だな」
徐々に打ち解け合う2人の後ろで俺と星森さんは話していた。
「2人で抜け出す」
「しないよ俺は」
俺の発言後に何かボソッと言っていたが何を言ってたか分からなかったためそのことは言及しなかった。
「菜那ちゃんと一緒に帰るんだ」
「そうだね」
「やっぱりただの幼馴染にしては仲良すぎる気がするんだけど」
「本当に何もない」
「ふーん。でもいいなそんな幼馴染は私にはいないからね。それでも健人君と菜那ちゃんみたいな関係の人はあまり見ないけどね」
言われてみれば俺たちは特殊な関係なのかもしれない。多くの幼馴染男女は年が経つにつれて疎遠になることのほうが多いため高校も同じでその上一緒に登下校する人はごく少数だろう。
とは言え俺たちには家族に近い感情しか存在しない。他の感情があれば今の今までこの関係が成り立っていないのも事実だった。
「確かにね。でも星森さんにも同じような共通点を理由に近づきたい人はいそうだけどね」
俺と菜那の共通点の一つは幼馴染だ。共通点を理由に仲良くなるケースも少なくない。
「そうだとしても私は下心丸見えの人は嫌かな。共通点やその人の外見も大事だけど私は中身を見て判断して欲しいかな」
星森さんは顔<性格で人を選ぶらしい。「美人は3日で飽きる」という言葉があるぐらいだから外見より中身ということなのだろう。
「長く付き合うなら性格のほうが大事だもんな」
「健人君もそう思うんだ。これも私と健人君の共通点だね」
「そうだな」
些細なことでも人と人はなんらかの共通点がある。恋愛に対して同じ考えという共通点が俺と星森さんにはある。
「わっ、私はバスなので、お先に失礼します」
早口になりながらも丁寧に礼をするあたり新島さんの生い立ちの良さが透ける。
「うん。またね有紗ちゃん」
「バイバイ有紗ちゃん。また話そうね」
「さよなら新島さん」
俺たち3人は言葉こそ違えど挨拶をして新島さんと分かれた。
「健人と沙奈ちゃんは何話してたの」
新島さんと分かれてすぐに菜那がこちらの会話に交じった。
「私たちは共通点について話ていたかな」
「共通点?」
「あーあれだ俺と菜那の共通点が幼馴染みたいにその人と自分の共通点について話していた」
「わけが分かんない」
そうだよな。「共通点の話をしてた」なんて言われたら頭に?が浮かぶよな。
「でもそんなの誰だってあるんじゃない。例えばこの3人は同い年だったり同じ学校だったり探さなくてもいくらでもあるんじゃない」
確かにそうだ。共通点なんてないほうがおかしい。小さな括りでいえば家族や兄弟とかだけど大きな括りでいえば同じ食べ物が好きとか同じ年に生まれたとか誰とでも数えきれないほどあるはず。
「菜那が言いたいことは分かる。でも俺たちが話していたのは共通点がきっかけに恋愛に発展するんじゃないかって話だから」
これで菜那も納得してくれたかな。というかしてくれ。
「だったらさ同じ共通点があっても恋愛に発展しないのはどう説明するわけ」
「それは…」
さっきの俺の言い方だと共通点=きっかけみたいになってしまう。菜那が言っていることのほうが正しい。
「菜那ちゃんの言う通りで共通点が恋愛に発展しないことのほうが多いからね」
星森さんは菜那の味方なんだ。あれさっきは「私と健人君の共通点だね」って言ってたんだけど。
「きっかけか」
「どうした菜那」
「私はどうすればきっかけが出来るんだろう」
星森さんは何の話っていう感じだけど、たぶん前に言ってた好きな人のことについてだ。雲に覆われた空は今の菜那の恋模様を表しているそんな感じがした。
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