第8話

 次の日には元気な星森さんも見れて一安心したがそれでも心配はしてしまう。

「星森さん大丈夫だった」

「うん。ごめんね心配かけて」

 いつもの彼女だ。俺はほっとしたのもつかの間後ろから肩を掴まれた。

「ウチの沙奈に何をした」

 浅見さんから声をかけられた。いつもは笑顔だが今は見なくても分かる。やばいやつだ。

「真里ちゃん大丈夫だから健人君は悪くないから」

「そうなんだ。山城お前沙奈に変なことするなよ」

「わかっているって」

「ならいい」

 こいつ星森さんの何だよ。でも、悪いことしたのは確かだがその理由がわからずどうすればいいか悩んでいた。原因が分からず改善することは出来ないため原因の可能性の高い合格発表の日については彼女の前では話すのをやめようと誓った。


 少し時間が経ち朝のホームルーム後に星森さんから声をかけられた。

「あ、あの、この前の話は健人君は悪くないよ。ただ臆病な私を責めていただけだから」

 何に対して臆病なのかが分からなかったが少なくとも俺のせいではないことだけは理解した。

「そっか。でも、それでもごめん」

「こちらこそ改めてごめん。でも…」

「でも?」

「ううん、なんでもない」



 やっぱり私は臆病だなこれだけはすぐには変われないよね……。



 昼休憩、俺、卓也、燈也の三人で食堂に行き昼食を食べていた。

「昨日健人と星森が一緒に帰っていたのを見たっていう人がいたが、二人はどういう関係なんだ」

 卓也が聞いてきた。燈也も「バドミントン部の同級生も見た」と言っていた。

「ただ一緒に話していただけだから」

「本当かそれ」

 燈也は納得してなさそうだった。

「高木のときも同じようなこと言っていたが」

 卓也はあのときも納得してなかったが今回も納得してないようだ。

「星森さん健人に何かあるんじゃねか。だって同じクラスの男子で星森さんのRINE持っているの健人だけだし」

「まさか、弱みに漬け込んでいないよな」

 卓也がそれを言うとはその発言は燈也が言うもんだろ。

「そんなことするわけないだろ」

 深くは考えたことなかったがなんで他の男子とは交換してないのだろう?他の人は聞かなかったのか?

「だがな燈也、他の男は聞いても教えてくれないそうだ。その中で健人だけが知っていることに加え星森から交換しようと言われたんだぞ」

「なんだお前ら嫉妬か」

「別に嫉妬はしてねぇよ。というか俺は彼女持ちだし、燈也も彼女いるし」

「そうなのか」

「それりゃそうだ。俺の彼女はバドミントンだからな今はそれ以外眼中にねぇよ」

 普通部活を彼女と言えるやつはただものじゃない。逆にいえばそれほど熱中してると捉えることが出来るが。俺だけじゃなかったんだ彼女いないの。

「話を戻すけど。少なくとも星森さんが俺以外と交換していないことについては俺は分からん。だけど、勝手な憶測は立てないでくれ俺だけでなく星森さんにも迷惑がかかる」

「それもそうだな。何せ入学して日が浅いもんな」

 卓也の言う通りまだ四月。高校生活に慣れ始める時期ぐらいだからな。

「そうだな健人はいいとして、星森さんに迷惑はかけたくないからな」

「おい燈也、俺はいいってどういうことだ」

 だが今は星森さんの真意が分からず疑問が残る話題だった。


「ご飯も食べたし、まだ時間あるから図書室に行かね」

「俺本嫌いだぞ」

 卓也は現文の教科書ですら読むのがきついと言うのだからその発言は理解できる。

「漫画やラノベもあるのに」

「それをはよ言え。燈也はどうするんだ」

「俺は体育館で練習をするよ」

 本当に全国に行く人は休憩時間も練習にあてたい。実際に昼休憩は部活の練習している人もいる。燈也も同じ気持ちなのだろう。

「分かった。また今度一緒に行こうな」

 燈也と分かれ俺と卓也の二人で図書室へ向かった。


「人多。図書室ってこんなだっけ」

 噂どおりの人の多さだ。学校にもよるが俺が通っていた藤村中の図書室は人が少なかった。多分卓也も同じだったのだろう。

 俺はある女子生徒に目がつきその子のところへ行き、また本を取ってあげた。

「これでいい?新島さん」

「あっ、はい。あ、ありがとうございます」

「なんだ知り合いか」

「紹介するね。こちら新島さん1-Cの生徒で文芸部に所属している。で新島さんこちら藤堂卓也、俺と同じ1-Dでサッカー部所属」

 一通り二人を紹介し軽く挨拶をしてから新島さんと分かれた。どうやら彼女も俺たちと同じで本を探しに来たそうだ。


「おお、あるじゃねえか」

 卓也はお目当ての漫画があったらしい。漫画に興味のない俺でもタイトルぐらいは知っている有名作品だった。

「健人は漫画読むのか」

「俺はあんまり」

「それにしてはこの学校の図書室のことなんで知っていたんだよ」

「それはこの前星森さんと一緒に来たから」

「ふーん。やっぱり何かあるんだな星森が健人に対して」

「ただの隣の席に座るクラスメイトだろ」

「それだけとは見えないけど」

 卓也が見えないが俺には分からなかった。違う中学だし初めて出会ったのも入学式の日が初めてだし。ほんと何がなんやら。

 図書室には菜那、星森さん、浅見さんが来ており一緒に本を探していた。彼女ら三人はそれぞれ本を持っていた。菜那はまだしも浅見さんも本読むんだ。てっきり卓也みたいに現文の教科書ですら苦痛を感じていそうなタイプなのに。

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