第5話

 週明け、菜那と学校に登校するとクラスの男子から声をかけられた。

「君、藤村中学校出身だろ」

「なんで知ってるんだよ」

「君が同じ電車に乗ってきたからわかったんだ。自己紹介がまだだったね俺は藤堂卓也。大橋中学校出身サッカー部に入るつもりだ」

「俺は山城健人、中学はバスケをしていた」

 いかにもスポーツをしてそうな見た目の人だ。背も高く、体格も良さそうな雰囲気が漂う。

「バスケ部ってことは同じ地区なら浅見のこと知っているんじゃないか」

 入学式の日に名前を見ただけでは分からなかったが同じ地区のバスケ部か。

「ウチの話してたの。藤堂」

 隣の席の星森さんに話しかけていた彼女はこちらの会話に混じった。この前のショートボブの彼女は浅見さんだった。

「前見たときと髪型違うけど」

 中学時代は髪を結んでも肩まで届いていたが今ではその面影はない。

「これはね決別のために切っただけ。それより藤村中の山城でしょ。バスケ部入ってよ」

 俺はそこそこ有名だったりする。同じ地区のなかでは藤村中の山城というとバスケをしている人では知らない人はいなかった。

「健人バスケするの?」

 隣の菜那が5回目の質問をしてきた。

「健人君前に部活入らないって言ってたよ」

「そっか残念。気が変わったら言って待ってるから」

「うん。わかった」

 どういうことだ彼女はバスケしないのか?そんなことを考えてしまった。


「高木さんだったよね。私、浅見真里よろしくね」

 推しが強い彼女に圧倒されながら菜那は深呼吸してこう返した。

「よ、よろしくね真里ちゃん。菜那でいいよ」

「じゃあ菜那って呼ぶね星森さんも沙奈でいい?」

「あ、うん。よろしくね真里ちゃん、菜那ちゃん」

 菜那が人見知りを直したいと言っていたが勇気出したな。そうさせた浅見さんもすごいけど。

「健人であっているよな」

「あっているよ。卓也だよな」

「ああ、そうだ」

 たぶん聞きたいことがあるのだろうが、なに聞くんだ。変なことは聞かないだろうけど。

「健人は高木さんとはどんな関係だ」

 このことを聞いた横で菜那はびくっと驚きながらも平然を保とうとしていた。

「ただの幼馴染それ以上もそれ以下もないな」

「やっぱ家は隣なのか」

「近いが離れている」

 その設定二次元だけだから。誰だよ幼馴染=隣の家という設定考えたの。

「それにしてはやけに近いが」

「強いていうなら兄妹が近いかな」

 なんか納得してなさそうだったが間違ったことは言っていない。そう信じたい。

「卓也は浅見さんとはどうなんだ」

「同じ中学なだけだよ。そうだよね藤堂」

「そうだな。浅見とは何もない。あと急に入ってくんなよ」

「いいじゃん同じ中学同士仲良くしよ」

 本当になにもないのか?それにしてはやけに仲が良いが。

「というか藤堂彼女持ちだよ。まぁ、その子と仲良いから会うたびに惚気話される身にもなってよ」

「そういうことだから本当になにもない。大橋中からは俺と浅見の二人しかいないからこういうことになるんだ」

 納得した。浅見さんは誰とでも仲良くなれるタイプだから距離が近く見えるのか。そんな彼女でも同じ中学の人のほうが初対面の人よりもいいのか。

当たり前のことだが。


 1時間目が終わったあと、俺は卓也とは別の男子に声をかけられた。

「卓也から聞いたよ君、藤村中の山城だったんだね」

「ああ、そうだよ。君もバスケ部」

「違うよ、でも君のことは知っている」

 なんだコイツその言い方はストーカーかヤンデレぐらいしか言わないぞ。

「燈也その言い方はないぞ。ごめんな健人変なこと言われて、悪気はないんだと思う」

 卓也が俺が思っていたことを代わりに言ってくれたおかげで変な不信感を抱かずにすんだ。

「ああ、大丈夫だ。燈也っていうんだ」

「そう俺の名前は渡辺燈也、バドミントン部に入って全国に出るんだ」

 神野高校はそこそこのバドミントン強豪校だ。とはいえ毎年全国に行けるような強さではなく数年に一人行くぐらいの強さだ。近くの学校だとここ以上に強い学校はないためバドミントン目当てで入学する男子も多い。

「燈也はなんで俺のこと知っているんだ」

「練習試合で藤村中の山城に負けた。と中学のときにバスケ部の人が叫んでいたからね」

 それなら記憶に残るわけだ。ちなみに卓也と燈也は席が前後のため授業中に話していたときに俺の名前が出て興味が出たとのこと。その後の休憩時間や昼食のときも3人で楽しく会話をしていた。

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