第3話
数学科の教師である橋本先生が1-Dの担任だ。タレ目で髪ボサボサでやる気なさそうな印象を受ける。声を張って喋っている姿から見た目よりはしっかりしているように見える。
「基本的に俺は放任主義だ。忘れものや居眠りは多少は目を瞑るが遅刻や無断欠席は許さん。困ったときは頼れ、以上」
良い先生だとは思うけど。教師が寝るのを公認するとは思わなかった。やっぱ適当な人だな。
「健人君は部活なに入るの?」
「俺はなにも入らないかな。星森さんは入る部活決めているの?」
「私は文芸部に入ろうかなと思っているの」
「本読むの好きなの?」
「うん。だからこの学校の図書室の本が楽しみ」
聞けばミステリー、恋愛、ホラーと幅広いジャンルの本を読んでいるとのこと。家よりも学校のほうが落ち着いて読めるとのこと。
こんな会話をしていると太陽の沈みと共に入学式の一日が終わった。星森さんは人気者だ。クラスの8割ぐらいの女子が席を囲って話しかけている。男子たちからは近寄りがたい存在だと思われていたことが後にわかった。
「今からカラオケに行かない?」「星森さんのRINE教えて」とみんなの反応から仲良くなりたいと伺える。
「わ、私、今日は用事があるからまた今度誘ってください。」
「そっかごめんね。また今度遊ぼうね」
とショートボブが特徴の彼女が言った。
「ならRINE教えてよ。ね、いいでしょ」
押しが強いなこの子。星森さんちょっと困っているぞ。
「私のでよければ教えます」
その場にいた女子全員と交換し下校の準備をしていた。すると彼女から声をかけられた。
「健人君もRINE交換しませんか」
先ほど同様彼女から言われるとは、
「俺のでいいなら」
彼女と交換した。沙奈という名前で猫のアイコンだった。後から知ったがどうやら家で飼っている猫らしい。名前はミナミでミーちゃんと呼んでいるらしい。
「健人君また明日」
「うん。また明日」
明日は学校休みなのだがそんなのはどうでもいい。なぜならクラス1の美少女ともいえる彼女から交換しようと持ちかけられたのだ。あれ、恋愛ってイージー?
遡ること3週間ぐらい前。合格発表の帰り道、俺は菜那にこう話した。
「俺、部活入らないや目標が出来た」
「何、日本の大統領にでもなるの」
「この国大統領いないじゃん。そうじゃなくて、しょうもない目標だと思っているんだろ」
「うん」
俺が菜那といるのが心地よいと感じるのは本音で話し合える仲だからだ。互いに秘密はあるけどストレスの捌け口でもあり良き理解者だからだ。
「確かに人によっては簡単だし、現に今もいる人もいるだろう」
「いる?」
「ああ、俺は高校在学中に彼女をつくる」
「うわ〜あんだけ恋愛に興味がなかった健人が」
中学までの俺はバスケしか頭になかった。しかし、中学でバスケ引退後彼女持ちの奴らが羨ましく思った。ひとつのもの(人)に夢中になる姿がこんなに美しいと思わなかったからだ。
「恋人がいると世界が変わるというだろ」
「それ好きな人がいるときのはなしだから。恋は盲目っていうでしょ」
「俺と同じで彼氏いたことない癖に」
「でも、好きな人はいるもん」
初めて知った。菜那にも好きな人がいたんだ。なんだろう背中を押したほうがいいだろうけどこのモヤモヤは…。
「それこそバスケしたほうがいいんじゃない。カッコいい姿を見せたほうが告白される確率は高いと思うけど」
「ダメだ。そしたら中学みたいにバスケしかしなくなる。だっていうだろバスケは盲目と」
「それあんただけだよ。そんな言葉初めて聞いた」
後悔しない高校生活を送れるように頑張ろうと誓った。こんな会話をしていたときはまさかあんなことになるとは思わなかった……。恋愛って難しい。
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