第2話
四月七日の金曜日である今日は神野高校の入学式だ。合格発表同様に菜那と一緒に学校へ向かう。
「クラス一緒ならいいね」
と菜那は言った。身長160センチで長いポニーテールが特徴の彼女は以外にも人見知りだったりする。神野高校は地元から少し離れていて同じ中学からは俺と菜那の他二人しかいなく、その二人も互いに関わりの少ない人のため菜那の気持ちは分かる。
「そうだな」
「適当に返さないで」
「まあ。知らない人しかいない環境よりも一人でも知っている人がいたほうが心強いし」
本当にそう思っているのだが、菜那は「思ってないでしょ」と言い返してきた。言い返したら喧嘩が起きかねないため何も言わなかった。
「やった今回も一緒だね」
「お前の人見知りは直らないのか、3年前にも聞いたぞ」
小学校からへ中学校へ上るときも仲良い友達もいたがそんな友達よりも俺が一緒のほうがいいらしい。あのときも同じクラスで喜んでいたっけ。まあ、一番付き合いが長く兄妹みたいなところもあるからなんだろうけど。
クラスの名前を見ていると見覚えのある名前があった。
「浅見真里ってどっかで聞いたことあるけど…」
「知り合い?」
「分からん。勘違いの可能性もあるけど」
俺は引っかかりながらもこれから始まる入学式に
遅れないように体育館に向かった。
校長の挨拶やPTA会長の挨拶など正直どうでもいい話を聞きながら先ほどの名前について考えていた。
小学校のときに転校した同級生?小学校卒業後に違う中学に行った人?しかし、どう考えても分からなかった。
次は新入生代表スピーチだそうだ。さっきの挨拶など同様どうでもいいが一様同級生だしちょっとは聞くか。そう思い前を向くと驚くほどの美少女がいた。
幼馴染というのをなしにしても菜那は可愛いほうだがそれを上回る。ちらほら「あの子可愛いくね」とそんな声が聞こえる。
背は高くないが彼女からはオーラが出ているような雰囲気がある。演壇の前に立ち深呼吸をして原稿を取り出し落ち着いた口調で
「春の暖かさが感じられる今日……新入生代表星森沙奈」
彼女の礼と共にこの日一番の拍手が起きた。会場のみんなが彼女に目を奪われていたからだ。校長、PTA会長、入学したての高校生に負けていいの。と俺は心の中でつっこんだ。
入学式が終わり1-Dの教室へ向かい自分の席に座った。鞄を置きふと、隣を向くとさっきの美少女がいるではないか。間近で見ると演壇の前でスピーチしていたときよりも背が低く小動物かともいえる愛おしさが溢れていた。
「あ、あの、君の名前は?」
「俺?山城健人だけど星森さんであっているよね」
まさか彼女から声をかけられるとは思いもよらなかった。新入生代表スピーチのときは完璧少女という印象を受けた。そのときと打って変わって今は親しみやすい印象を受ける
「うん。あっているよ」
「さっきのスピーチすごく良かったよ」
「本当?あのとき頭真っ白で上手く言えてたか不安で」
「そうには見えなかったよ」
「よかった。私人前で話すの苦手なの」
「むしろ慣れてそうなのに」
彼女ぐらい言えたら過去に何回か経験してそうなのに。ちょっと意外だな。
「本当のことなのに」
「ごめん。そういうつもりでいってないから」
「それ追い打ちだよ」
頬を膨らませながら拗ねた顔も可愛い。じゃなくて今の俺好感度最悪じゃね。
「本当にごめん。許してほしい」
「いいよ。許すけど、そのかわり健人君って呼んでいいかな?」
真っ赤になりながら弱々しい声に変わっていく彼女が先ほど以上にかわいく見えた。
「うん。いいよ。よろしくね星森さん」
「よ、よろしくね健人君」
周りの男子が睨んでいたが彼女しか見ていない俺はそのことに気づいていなかった。
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