同じ空を見ていたい
@barabara29
第1話
まだ肌寒い日々が続く三月某日。今日は中学3年生にとっては大事な日だ。そう合格発表の日だ。天気は朝は日がさしていたが正午を過ぎたあたりから太陽が雲に隠れていた。
今時ネットで合格発表されるが学校に行くまでは不安でしかない。そんな気持ちと共に俺、山城健人は幼馴染の高木菜那と一緒に神野高校へ向かった。
「健人は高校でもバスケ続けるの」
菜那にこう聞かれた。ちなみにこの質問はこれで4回目だ。
「バスケは中学でお終いだ。菜那だってフルート辞めて違う楽器したいんだろ」
「私は吹部には入るもん。健人と一緒にしなで。」
菜那はちょっとご機嫌斜めだった。でも、菜那の気持ちは分かる。俺の身長は176センチと中学生にしては高いほうだと思う。小学三年生から始めたバスケを高校で辞めるのは惜しいと思うから。
「代わりになにするの」
これも4回目だ。それに対し俺は
「入学してから決める」
「またそう言ってどうせ部活やらないでしょ」
こんなやりとりを電車で15分徒歩で20分ほどし、神野高校へ着いた。見たことない制服を着た生徒が入学の手続きをしている。そんなとき黒髪ロングの眼鏡をかけた女子生徒が何やらものを探していた。
それを見て俺は
「すみませんどうかされましたか」
そう聞くと、女子生徒は「早くしろ」と受け取ったのかすぐさま
「ご、ごめんなさい。すぐしますのでごめんなさい」
うわ〜絶対怖がられている。それもしょうがない。なにしろこの背だ。150センチもない彼女から見れば高圧的な態度と見られてもおかしくない。
そんな彼女の足元には印鑑らしき物が落ちていた。それを拾い彼女に
「これを探していましたか」
と渡すと、彼女は大きく目を開き
「あ、ありがとうございます」
と言ってすぐさま逃げるように歩く彼女はこけてしまった。そんな彼女の手をとり立上らせると先ほどよりも大きく目を開き
「あ、あ、ありがとうございます」
彼女は先ほどよりも早く歩いていった。
「こけたのは健人のせいだから」
「俺悪いことしたか」
その後、菜那とちょっと言い争いになったが入学手続きを終え二人で家に向かった。俺と菜那の家は少し離れている。幼馴染=隣の家ではない。とはいえ歩いて1分ぐらいだから互いになにかあれば家に行く関係なのには違いない。
人生の中でも大事な分岐点である合格発表という1日はこれで終わった。
母さんは「菜那ちゃんと一緒なら安心ね」と菜那と同じ学校に行くことに喜んでいた。
まず自分の息子が合格したことを祝えよとそう思いながら俺はこれから始まる高校生活に胸を躍らせながら今日を振り返った。
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