EITOエンジェル総子の憂鬱(仮)6

クライングフリーマン

潜入捜査

======== この物語はあくまでもフィクションです =========

============== 主な登場人物 ================

 南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。

 大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。

 足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。

 石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。

 宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。

 丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。

 河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。

 北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。

 久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。

 小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。

 指原ヘレン ・・・ EITO大阪支部メンバー。

 愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。通信担当。

 白井紀子・・・EITO大阪支部メンバー。資材・事務担当。

 芦屋一美(ひとみ)警部・・・三つ子の芦屋三姉妹長女。大阪府警からの出向。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。

 芦屋二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。

 芦屋三美(みつみ)・・・芦屋財閥総帥。総合商社芦屋会長。EITO大阪支部のスポンサー。総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。

 南部寅次郎・・・南部興信所所長。総子の夫。

 江角真紀子・・・南部総子の母。大文字伝子の叔母。

 横山鞭撻警部補・・・大阪府警の刑事。

 幸田所員・・・南部興信所所員。総子のことを「お嬢」と呼ぶ。


 = EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =


 午前10時。EITO大阪支部。会議室。

 「この中で、童顔の人?」大前が尋ねると、全員が総子を指した。

 「んな、アホな。」悦子が総子に鏡を見せた。

 「ホンマや。」一同が吹き出した。

 「天才的なボケツッコミやな。」と、幸田が言った。

 「お母さんに、セーラー服まだありますか?って聞いたら。ちゃんと取ってありますよ、ブラジャーもパンティもサイズ変わらんから、入る筈って言ってたわ。」

大前が言い終わらない内に、総子は大前をピコピコハンマーで叩いた。

 「変態おやじ。セクハラで訴えるぞ!」と、総子は憤慨した。

 「痛いがな。後で持って来てくれるってよ。」と大前が言うと、作戦室で監視モニターを見ていた、いずみが「コマンダー。来られました、チーフのお母さん。」と言った。

 「よっしゃ、通してんか。」

 いずみは、開放スイッチを押した。すると、入り口に江角真紀子が立っていた。

 「総子。セーラー服持って来たわよ。潜入捜査頑張ってね。それじゃ。」そう言うと、さっさと帰って行った。

 何の話をしていたかというと、大阪府警から「覚醒剤流通の囮捜査の依頼」が来たのだ。先日、覚醒剤を吸った高校生の集団が暴れ回り、総子達が平定したからだった。

 芦屋三姉妹は、総子が童顔であることを知っているし、EITO大阪支部の仕事があまりないことも熟知しているからだ。偽の『転校』の手続きは三美が行った。

 午後3時半。射手前高校。

 授業が終わり、瞬く間に仲良くなった、敷島徹と総子は下校した。

 「なあ。喫茶店、よっていかへん?パフェのおいしい店知ってるねん。」

 「うん。行く行く。」二人は学校から500メートル離れた、おしゃれな喫茶店に入った。パフェは、徹の言うとおり、美味しかった。

 「トイレ、行ってくるわ。」「うん。メールでもしとくわ。」

 2人の息はぴったりだった。色んな意味で。

 トイレに入った総子は「誘い出したで。多分、こいつが案内役やと思うわ。ICレコーダー、回収しといて。」と総子は言った。

一方、徹は仲間、いや、兄貴分に連絡していた。「今日転校してきた子が、ええカモやと思います。アニキの好みっぽいし。俺は手エだしませんよ。はい・・・はい・・・はい。」

 総子がトイレから帰ってきた。「総ちゃん、ライブとか行くことある?」「たまに。何で?」

 「僕の先輩がバンドやってんねん。今、ライブに向けて練習してんねん。一緒に観にいかへんか?」「でも、練習の邪魔をしたら悪いやん。」「ちょっとだけやん。ちょっとだけ。」「ふうん。何時?家抜け出す段取りがあるし。」「7時や。」「ほな、6時半に着くように、早めに家出るわ。」

 総子は、場所をメモしようとしたが、「靱公園や。」と言って、徹はメモに地図を書いて総子に渡した。

 2人は15分ほどしゃべって、出て行った。

 ウエイトレスに扮した稽古が、食器を回収しに来て、ついでにテーブル下のICレコーダーを回収した。

 バックヤードに帰ってきた稽古は、本来の従業員のウエイトレスと制服を交換して、裏口から出て行った。

 午後5時。喫茶店の外。

 稽古は、EITO大阪支部に連絡した。「こちら、稽古。2人は15分位前に出ました。二美さんと合流します。」

 「了解しました。」といういずみの声が稽古のスマホに返ってきた。

 午後6時。二美の車。

 「コマンダー。靱公園です。午後7時。」と、二美は自動車電話でフックオフにして話した。

 午後6時半。靱公園。ライブ北村。

 徹が総子を連れてやって来る。

 「この子か、徹。可愛いな。何て名前?」「総子です。変わった刺繍持ってはる、って聞きましたけど。」「ああ、これや。」

 北村は、傍らの箱から刺繍を出した。「これや、嗅いでみたら?ええ、匂いするやろ?」

 総子は目眩がして倒れた。

 「兄貴。『寝床』用意しましょか?」北村の弟分が言った。

 「気イきくやないか。おう。用意しとけ。ちょっとトイレ行ってくるわ。徹、帰ってええぞ。ああ、小遣いか。ほれ。この頃景気ええねん。」

 北村は、徹に10万円を渡した。「おおきに。ありがとうございます。ほな、明日。」

 ライブハウスを出た後、徹は振り返ったが、頭を振って歩き出した。

 「後悔する位やったら、止めといたらよかったのとちゃうか?」

 EITOエンジェルスの姿の、ぎんは、徹に言った。徹は声を失った。近頃話題の   EITOエンジェルスが目の前に現れたからだ。

 大前がバイクで現れた。「預かっとくわ、EITOエンジェルス。」と、大前は言った。

 大前は、バイクの後ろに徹を乗せ、何処へか消えた。

ヘレンが爆竹を鳴らした。

 北村と、弟分達が出てきた。手に拳銃を持っている。

 祐子、悦子。真知子が、次々とシューターを投げ、男達の拳銃を落した。

 シューターとは、EITOが開発した、うろこ形の手裏剣で、先に痺れ薬が塗ってある。

 唯一、ブーメランを使える真美が、北村の前頭部に命中させた。

 二美に開放され、EITOエンジェルスのユニフォームに着替えた、総子がコインを北村に投げた。

 そして、こう言った。「参上!EITOエンジェルス!!満を持して。」

 EITOエンジェルスは、それぞれ、バトルスティックを持って、男達に立ち向かった。

 手がしびれ、他の武器を持たなかった男達は、たちまち頽れた。

だが、北村は中に引き返してバットを持って来て振り回した。

 二美は、新しいバトルスティックを総子に投げた。「これを使いなさい!」

 総子は、新しいバトルスティックをロングモードにして、北村に対峙した。このロングモードに出来るバトルスティックはまだ、1本しかない。小柄な総子に合せて、長さを調節出来るように改良されたバトルスティックである。

勝負は一瞬で決まった。数秒後に北村は地面の上に寝ていたからである。

 一美たちが駆けつけ、逮捕連行していった。

 立ち去る前に、横山警部補が来て、総子に耳打ちした。「かっこ良かったで、総ちゃん。」

 警察官達が行った後、徹を後ろに乗せた大前がバイクでやって来た。

総子は、フードを脱いで、徹に言った。「徹。ウチを助けようとしたかった、でも、できんかった。でも、その気持ち、分かってる。ポケットの中にあるブローチでな。 でも、そのブローチは、他の人にあげてな。ウチ、こう見えて亭主持ちやねん。でも、友達や。友達のお願いや。もう変な奴らと付き合いするの止めて。」

 「捕まえへんのか?」「EITOに逮捕権はないからな、徹。今日のことは、忘れてまえ、ええな。お前の『潜入捜査官』の任務も終わりや。」大前は笑顔で応えた。

 総子は、大前の後ろに跨がった。

 いつの間にか、EITOエンジェルスは、いなくなっていた。

 「亭主持ちって・・・あいつ一体、いくつやねん。」と、徹は呟いた。

 午後8時。総子のマンション。

 三美と南部が出迎えた。「いつも、小鳥の餌みたいじゃパワー出ないものね。」

 オードブルがテーブルの上に並んでいて、芦屋家のシェフが横でフルコースの準備をしている。

 「小鳥の餌は、酷いなあ。」と言う南部に、「缶詰にカップライスを見たら、そう言いたくなるわよ。食料、殆どカップラーメンじゃないの?亡くなった父が見たら嘆くわ。たまには、贅沢しなさい。」と三美は言った。

 「え?どういうこと?三美ネエらのお父さんと、寅次郎は、どういう関係?」と総子は言った。

 「戦友・・・かな?まあ、ええやん。ゆっくり噛んで食べや。」南部は、にっこり笑って言った。

 「そうよ、総子。例え『トカゲの尻尾切り』になっても、覚醒剤取り締まりの切っ掛けが欲しかったのよ。奴らは『オレオレ詐欺』の要領で、ウケコを使う手口に変えたのよ。これは、危険手当。ご褒美よ。遠慮無く食べなさい。」と、三美は言った。

 総子のスマホが鳴動した。総子は、無視することにした。

 ―完―



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