第32話「非常識なデブ」

ミーンミンミンミンミーン


街中のあちこちで聞こえる蝉の大合唱。

季節は7月上旬。

気温はすっかり上昇し

世間の人々は皆衣替えをしていた。


タッタッタッタッ


(あっち~……

今日は予報より

気温高いんじゃないか……?)


黒の短パンに

背中に天下統一と書かれた

白シャツを着て

外で日課のジョギングをしていた秀吉。


ピピピピッ


「目標距離の10kmまで残り1kmです」


スマホが残りの距離を知らせる。


(よ~し、もうちょっとだ!

頑張るぞい!)


そう意気込んで

いつものコースの

曲がり角を曲がった直後。


ドガァッ!!


「あだぁ!!」


ドサッ


秀吉は何かとぶつかり

地面に倒れた。


「痛ててて……何だぁ……!?」


パッと目の前を見ると

原付に乗ったノーヘルのデブがいた。

そしてそのデブは

秀吉に向かって言った。


「どこ見て走ってんだよ

殺すぞ」


「なっ……!?」


そこはぶつかってごめんなさい

お怪我はありませんか?とかだろ!

ていうかこの道

車両通行止めのはずだろうが!

何なんだこの非常識なデブは!

と思う秀吉であった。


「おっとやべぇ!

こんなカスにかまってる暇ねぇや!

約束に遅れちまう!」


ブオ~ン


デブは秀吉に

一言も謝罪する事なく

走り去って行った。


「…………カスだとぉぉ……!?

あのデブゥゥゥ………!!!

許さん………!!」






ブオ~ン


「あ~!あと15分くらい!

大丈夫大丈夫!間に合う間に合う!」


スマホで電話しながら

道路を運転していた先程のデブ。


「ノーヘル、ながら運転、デブ

トリプル役満ってとこか?」


「ああ……?

げっ!?!!??」


デブはパッと左横を見て驚愕した。

なんと先程ぶつかった男が

※ケルベロスに乗って走っていたのだ。


※ギリシャ神話に登場する

頭が3つある犬の怪物。


「こ、これは現実か!?」


「やれ、ケルベロス」


「ガルルルルルルァァァ!!!」


ドンッ!!!


ケルベロスは半回転し

デブに向かって

下半身を振り当てた。


「おわぁぉぁぁぁぁぁぁ!!!!」


原付もろとも空高く吹き飛ぶデブ。


「ケルベロス!!トドメ!!」


「ガルルルルル………!!!」


キュイイイイイイイン


「ガルラァァァァァァ!!!!」


チュドオオオオオオオオン!!!!


「おわぁぉぁぁぁぁぁぁ!!!!」


ケルベロスはデブに向かって

口からエネルギー波を放った。

それによりデブは

空の彼方へと消えていった。


「………安心しな……

加減はさせてあるから

死にはしないさ……

これに懲りてもう二度と

人に舐めたマネをしない事だな」


秀吉は空に向かって

そう呟いた後に

ケルベロスに乗ったまま

どこか遠くへと走り去って行った。

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