第25話「雑魚田 ~後編~」

ガチャッ


自宅へと着き

玄関の扉を開けた雑魚田。


(今日は何か疲れた………

もう休もう………)


そう考えるながら

自室へと向かって行く雑魚田。


ガチャ


「おっす」


「!?」


扉を開けて

部屋に入った雑魚田は驚愕した。

なんとそこに秀吉がいたのだ。


「ナ、ナリヤン……!!

どうしてここに………!?」


「どうしてだと思う?」


秀吉が問うと

雑魚田は咄嗟に

彼に近づき胸ぐらを掴んだ。


「質問を質問で返すな!!

出てけよナリヤン!!

気持ち悪いんだよ!!

警察呼ぶぞ!!」


「おいおい……何で警察呼ばれなきゃ

いけないんだよ?」


「不法侵入だろうが!!

人の家勝手に入りやがって!!」


「え?いやいや

俺はちゃんと正面から

正々堂々と入ったぜ?

なぁ"朱美"?」


秀吉はそう言って

視線を雑魚田の後ろに向ける。

そして雑魚田が振り返ると

そこには母親の朱美がいた。


「マ……ママ?」


「プッ!!お前母親の事

ママって呼んでんのかよ!!

きっしょ!!」


「うるせえ!!

なぁママ!!何でコイツの事

家にあげたんだよ!?」


「……別にそんなの人の勝手でしょ

腐れ低能が」


「え?」


「ていうかママって

呼ばないでくれる?

気持ちの悪いったらありゃしない

このボケが」


「………え?」


普段とは違う

母親の邪険な態度に

困惑する雑魚田。

そしてそんな雑魚田を尻目に

母親は秀吉の元へと近づく。


「秀吉様~、なんかあのチビ男

クッソ気持ち悪いんですけど~

息も臭いし」


「ハハハ!!あの容姿で

息も臭いとか終わってんな!!」


仲良さそうに

雑魚田を馬鹿にする2人。


「な……何でそんな

仲良さげなんだよ……!?」


不思議がる雑魚田。


「何でって……

そりゃあ俺ら運命共同体だから」


「……ふざけた事

言ってんじゃねえ!!

ママから離れろ

ナリヤン陰キャ!!」


雑魚田は秀吉の胸ぐらを掴み

殴りかかろうとする。


ベチィン


「がっ……!?」


雑魚田が胸ぐらを掴んだ瞬間

母親は雑魚田の顔にビンタをかました。


「秀吉様に触るな無礼者!!」


「マ、ママ……!?どうして……!?

どうしてそんな奴の事……!!」


「フ~……だからさ~……

ママって呼ぶなって

言ってんだろクソアデノイド!!!」


「ク……クソアデノイド……!?」


「ハァ~………ったく………

アンタなんか産まなきゃよかったわ

チビ、アデノイド、団子鼻、口臭い

こんな良い所が何1つもない

"劣等種"が息子だなんて

末代までの恥ねホント

ていうか今すぐに

この家から出てってくれない?

アンタがこの家にいると

近所中で噂になっちゃうのよね

「あそこは劣等種屋敷だ~」って」


「………!!!」


愛する肉親から

これ以上ないくらい

罵倒されたショックにより

床にヘナヘナと座り込んで

絶望顔になる劣等種。

そしてそんな劣等種に

秀吉は近づいてこう言った。


「まっ、そういう事だからさ

とっととこの家から出てけよ劣等種さん

あとそれから最後にな………

もうこの世にお前の居場所なんてものは

ねぇんだよバ~カ」


秀吉がそう言うと

雑魚田はその場から

ゆっくりと立ち上がり

フラフラと歩きながら

どこかへ去って行った。





~翌日~


「いや~、花と蛇2は面白いな~」


秀吉は学校をサボって

自室で官能小説を読んでいた。

するとそんな読書中の彼の元に

寧々が駆け寄って来た。


「秀吉様~!」


「ん?どうした寧々?」


「これ見てください!」


寧々はスマホで

あるニュース記事を

秀吉に見せた。


「え~なになに?

昨夜ビルから高校生が

飛び降り死亡………

死亡したのは都内の高校に通う

迫田裕希さん(15)……

マジか………」


どうやら雑魚田は昨日のあの後

自殺を図っていたようだ。


「……なぁ寧々………

これって……俺が殺した事になる……?

俺がアイツの周りの人間を洗脳して

アイツの精神を追い詰めたから……」


「え!?まさか!!

秀吉様は殺しなんてしてないですよ!!

あのアホが勝手に自分の意思で

命を断っただけですよ!!」


「……そっか……そうだよね……

俺は何も悪くないよね……」


「……秀吉様」


ギュッ


寧々は秀吉に優しく抱きついた。


「寧々……?」


「秀吉様……ひょっとして

罪悪感感じてるでしょ?」


「え……?い、いや……別に……」


「……その反応……

やっぱり感じてるんだ……

全く……秀吉様は優し過ぎるんですよ」


「え?」


「いいですか?

冷静に考えてみてください?

あのカワハギは

何かしたワケでもない秀吉様の事を

日頃からずっと侮辱してたんですよ?

だから死んで当然のクズなんです!!

なので秀吉様が

罪悪感を感じる必要なんて

一切ないんです!!」


「……そ、そう………?」


「そうです!!」


「……そ……そっか……

そうだよね………

ハハハ……!そうだそうだ!!

俺をナリヤンだの陰キャだの

馬鹿にしてたアイツが死んだんだ!!

むしろ喜ぶべき事じゃないかこれは!!

ハッハッハッハッハ!!!」


「アハハハハ!!!」


秀吉が笑うと寧々も笑った。

朝からハイテンションになる2人。

そんな2人の元に

眠りから目を覚ました

茶々がやって来た。


「おはよう2人共

何だか随分テンション高いね」


「あ!おはよう茶々!

ビッグニュースビッグニュース!

なんと雑魚田が自殺したそうです!」


「お!ホントに~?

それはおめでたニュースだね!」


「でしょでしょ!?

だからさ!これから3人で

雑魚田死亡記念パーティーって事で

カニでも食べに行かない!?」


「お!いいねそれ!」


「あ!私も賛成で~す!」


「よっしゃ!

じゃあ早速行きまっしょい!」


この後3人は高級カニ料理店に行き

カニをお腹いっぱい食べた。


ちなみにこの日

秀吉の通ってる高校では

緊急全校集会が開かれ

校長が雑魚田の訃報を

全校生徒に知らせたが

悲しんでる人間は特にいなかった。

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