第24話「雑魚田 ~中編~」

~学校の屋上~


秀吉、寧々、茶々は

昼食をとっていた。


「秀吉、さっきの雑魚田とかいう奴に

この後復讐するの?」


「うん」


「残りの2人は別の日にですか?」


「うん、そうだね」


「そうですか………

ところで雑魚田には

どんな感じの事してやるんですか?」


「洗脳でいこうと思ってる」


「この前の玉木みたいな感じにですか?」


「………いや……今回はアレとは逆でいく……」


「逆?」


「うん、玉木の時はさ

アイツ自身に洗脳を使ったじゃない?

だから今回は逆パターン

アイツ以外に洗脳をかける」




~中庭~


雑魚田、長部、中村は

ベンチに座っていた。


「ハァ~………

あのクソ徳川マジうぜぇんだけど

てかアイツ最近なんか調子乗ってね?

ツーブロにして

陰キャのくせにヤンキーぶってて

マジキモいわ

大人しく坊主にしとけって感じじゃね?」


長部と中村に

秀吉の悪口を言う雑魚田。


「「……………」」


沈黙する2人。


「おい聞いてんのかよ?」


「「……………」」


「おい長部!中村!」


「………お前さ……クソだの陰キャだの

ヤンキーぶってるだのって

"徳川君"の事悪く言ってんじゃねえよ」


長部が沈黙を破って迫田にそう言った。


「……は?と、徳川君?」


「……顔が良いワケでもない

背が高いワケでもない

勉強ができるワケでもない

金を持ってるワケでもない

そんな何もないお前が

よく他人の事そういう風に言えるよな」


「は……?お、お前何言ってんの?」


「……というかさ、お前何で

ここにいんの?ウゼェんだけど

どっか消えてくんね?」


「え?」


「……おい、行こうぜ中村

ここにいたら雑魚田菌が伝染る」


「ああ、そうだな」


雑魚田の元を去ろうとする2人。


「お、おい!

どこ行くんだよ!?」


ガッ


長部の肩を掴む雑魚田。


「ぐあああああああああ!!!!

雑魚田に触られたあああああ!!!!」


「!!!大丈夫か長部!?

てめぇ!!!!」


ドンッ


中村は雑魚田を蹴り飛ばした。


「いって……!何すんだよ!?」


「それはこっちの台詞だボケ!!

雑魚田の分際で人に触ってんじゃねえよ!!

死ねよゴミ!!」


そう言って中村は

長部と共に去って行った。

そしていつもと違う

2人の態度に呆然とその場で

立ち尽くす雑魚田。


「………ど……どうなってんだよ………」



~1-A教室前~


ガラガラガラ


扉を開け中へと入る雑魚田。

そして自分の席に座り

ポケットからスマホを取り出し

ソシャゲをやり始めた。

すると教室内にいた

他の生徒達がそんな雑魚田を見ながら

ヒソヒソと悪口を言い始めた。



「見て、アイツ1人で

スマホいじってる(笑)」


「プッ!ぼっちきっしょ(笑)」


「アイツの横顔きもくね?

アデノイド前より悪化した?」 


「カワハギみてーな顔(笑)」


「学校辞めればいいのに

あの腐れ低身長」


ガタッ


悪口を聞いていた雑魚田は

急にバッと席から立ち上がり

そのままトイレへと駆け込んだ。


「ハァ………ハァ………」


トイレ内で呼吸を荒くする雑魚田。


(ど、どうしてクラスの連中が

俺の事を悪く言ってるんだ……!?

い、いや違う………!

あれはきっと聞き間違いだ!

落ち着け……!冷静になれ……!

俺はイケてる!俺はイケてる!

俺はイケてる!俺はイケてる!

俺はイケてる!俺はイケてる!

俺はイケてる!俺はイケてる!

俺はサッカー部に入ってるし

インスタもやってるし

TikTokもやってる!!

だから俺は間違いなく陽キャだ!!

そんなイケてる陽キャの俺が

悪口なんて言われるワケがない!!

俺はあのナリヤン陰キャの

徳川とは違う!!)


「お前哀れだなぁ~」


「!!」


必死に自己暗示している

雑魚田の元に秀吉が現れる。


「と、徳川……!!」


「俺はイケてる俺はイケてる

俺はイケてる俺はイケてる」


「!?」


「サッカー部に入ってる=イケてるってのが

まさにキモ人間の発想よな」


「!?!?」


「インスタや

TikTokやってる=イケてる……

これもまたキモ人間の発想だ」


「!?!?!?」


自身の心の声を

読み上げていく秀吉に

驚きの表情を隠せない雑魚田。


「……どうして俺の心の声が

分かるんだって顔してんな………

教えてやるよ……チートを使って

読み取ったのさ」


「は!?チート!?

何言ってんだ!?」


「そんな事よりよ~……

さっきも言ったけどお前哀れすぎだろ」


「ああ!?」


「陰キャだの陽キャだの

そんなくだらない事を

過剰に気にしながら生きてるんだもんな」


「は!?死ねよナリヤン!!」


ガッ


雑魚田は秀吉の脇腹を蹴った。

それにより

その場にうずくまる秀吉。

さらにそのタイミングで

クラスのイケてる組である

伊藤という男とその仲間3人が

トイレへと入って来た。


「ああ~ションベンションベン……ん?」


伊藤達は

うずくまってる秀吉に気付いた。


「お、おい!?徳川君!?

大丈夫か!?」


秀吉の元に心配そうに寄り添う

伊藤とその仲間達。


「………ああ……

肋骨が数本逝っちまったが

何とか………」


「ろ、肋骨が!?

ひどい………!!

一体誰にやられたんだ!?」


伊藤が問いかけると

秀吉はパッと

目の前にいた雑魚田に指を指した。


「てめぇ雑魚田!!!」


ガッ


伊藤は凄まじい勢いで

雑魚田の胸ぐらを掴んだ。


「雑魚田!!

てめぇ何してんだゴラァ!?」


「だ……だって……!!

あの陰キャが俺の事

馬鹿にしてきたから………!!」


「ああ!?

お前徳川君の事

陰キャ呼ばわりしてんのか!?

ざけんじゃねえぞカス!!

てめぇみたいな

チビでアデノイドのアニメオタクが

よく他人を陰キャ呼ばわりできるな!!」


「コイツオタクのくせに

イケてる奴気取ってて

前からうざかったわ」


「死ねよ

陽キャ気取りのキョロ充」


「生きる価値なし

ド腐れアデノイド」


伊藤に便乗して

仲間達も雑魚田を罵倒。

そしてイケてる連中に

面と向かって罵倒され

半泣きになる雑魚田。


「なぁ雑魚田………

てめぇにも徳川君と

同じ様な苦しみを

味わわせてやる……オラァ!!」


「待って!!」


伊藤が雑魚田を殴ろうとした瞬間

秀吉が叫び止めた。


「と、徳川君……?」


「伊藤君……そして他のみんな……

もう十分だよ………

それくらいで

彼を許してやってくれないか?」


「え?い、いやでも………

このイキりチビアデノイド

徳川君の事を怪我させた上に

陰キャとか言って侮辱したんだぜ?」


「もう気にしてないよ

綺麗さっぱり水に流す事にしたよ」


「な、なんて聖人なんだ………!!」


バッ


伊藤は雑魚田から手を離した。


「オラァ!!とっとと失せろ雑魚田!!

許してくれた

ぐう聖徳川君に感謝するんだな!!

というかお前明日から

学校来んじゃねえぞ!!

今日中に退学届出せやゴラァ!!」


伊藤に怒鳴られ

慌ててその場から逃げ去る雑魚田。

そしてそんな雑魚田を見ながら

秀吉は思っていた。


(くっくっく………

これだけで終わりと思うなよ雑魚田?)







「今日は変だ……何かおかしい……

何でみんなあのナリヤンに対して

親身なんだよ………

いつも狸猿とか言って

馬鹿にしてたじゃねぇか………」


学校を早退して

ブツブツと独り言を言いながら

自宅へと向かって歩いていた雑魚田。

しかしこの時雑魚田は知る由もなかった。

自宅でさらなる地獄が待ち受けていた事を。

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