第23話「雑魚田 ~前編~」

「秀吉様~!好き好き!」


「秀吉……I love you………」


「ちょっ、2人とも……

あんまくっつくなって……

歩きにくいよ」


俺は現在寧々、茶々と共に

昼休み中の学校の廊下を歩いていた。

実は2人には前々から

俺と一緒に学校生活を送りたいと

言われていて

最初は拒否していた俺であったが

(2人の前で同級生達への復讐時の自分の

醜い姿を見せたくないため)

2人のあまりに熱いアプローチで

この学校の俺のクラスに転入生という形で

受け入れる事となった。

もちろんチートを使って。


「秀吉様~、パンはパンでも

食べられないパンってな~んだ?」


「腐ったパン」


寧々の質問に茶々が答えた。


「アンタに聞いてないっつの

てか答え違うし」


「ハハハハハ」


そんな風に3人でじゃれあいながら

廊下を歩いていると

前方から3人組のチビ男達が

歩いて来るのが見えた。


(アイツらは………

迫田、長部、中村………)


迫田……迫田裕希(さこだ ゆうき)。

1年A組、サッカー部所属。


特徴:チビ、低能、アデノイド。


長部……長部翔(おさべ しょう)。

1年A組 サッカー部所属。


特徴:チビ、鼻の近くにでかいホクロ。



中村雄精(なかむら ゆうせい)。

1年A組、サッカー部所属。


特徴:チビ、眉毛が太い。ワキガ。



この3人はミラン達の様に

暴力こそ振るってこなかったが

俺の事を陰で滅茶苦茶侮辱していたので

死ぬ程嫌いだ。

昼飯食った後で

1人1人順番に復讐してやろうかしら。

というか今ふと冷静に思ったんだが

俺の嫌いな奴って大体サッカー部だな。


そんなゴミ3匹とすれ違う俺達3人。

するとすれ違いざまに迫田が

聞こえるか聞こえないかのギリギリの声で

俺に向かって「死ねよ」と言ってきた。


「おい待てよ」


ガッ


俺は即座に迫田の肩を掴んで

その場に止めさせた。

すると迫田は俺の方を

睨み付けながら言った。


「は?何?」


「お前今俺に死ねよって言ったろ?」


「ああ、言ったよ?

だから何だよ※"ナリヤン"」


※・本当はヤンキーではないのに

ヤンキーになりきっている人。

・ナリ(格好)だけの見せかけのヤンキー。


「は?な……なりやん?」


初めて聞く単語に戸惑う俺。


「"陰キャ"のくせに

ヤンキーぶってんじゃねーよ

クソ狸猿」


「?!?!?ヤンキーぶってる?

意味が分からん

俺のどこがヤンキーなんだよ?」


「髪型」


どうやらコイツは

今の俺のツーブロックヘアを見て

ヤンキーぶってると感じたらしい。

ツーブロック=ヤンキー。

もう意味が分からないでしょ?

ツーブロックなんて

清潔感あって女子ウケも良くて

世間の男達は皆やってる髪型なのにな。

上記の発言だけでコイツがオシャレとは

いかに無縁だというのが分かる。

つーかコイツ髪ボサボサだし

ワックスも付けてねーし

ホントキモいわ~ん。


「別にヤンキーぶってないんだが

ただのオシャレでやってるんだがこれ」


「似合わねぇんだよ"陰キャ"」


「…………お前さ………

その言葉ホント好きだよなぁ~……

俺以外にも色んな奴に使ってるよな……

なぁ、聞きたいんだが………

他人に対してその言葉使うって事は

やっぱ自分はイケてる人間とでも

思ってんの?」


「は?死ねよ」


「ハァ~………ダメだこりゃ………

言葉のキャッチボールができねぇ………

マジで低能だわコイツ」


「は?死ねよナリヤン陰キャ」


「フフフ………」


「キモ、何笑ってんだよ」


「……いや~、だってさ~………

低身長、団子鼻、アデノイド

ワックス付けない、眉毛整えない

ソシャゲ好き、アニメ好き、アイドル好き

クラスの中で

面白い事言ったりするワケでもない……

そんな奴が他人を陰キャとか言って

馬鹿にしてくんだもん

マジで滑稽だな~って思って」


「~~ッッ!!!」


ガッ!!


よほど刺さったのだろうか

迫田は顔を真っ赤にして

俺の胸ぐらを

ものすごい勢いで掴んできた。


「調子乗んなよ………!!

殺すぞ陰キャ………!!」


「やめとけって………

そんな度胸ねぇだろうよ………

なぁ?※"雑魚田"君」


※雑魚+迫田=雑魚田


「~ッッ!!」


バキ

ベキ

ボキ


キレた雑魚田は

俺の顔に5歳児並の

なまっちょろいパンチを

連打で浴びせてきた。


「お、おい!!迫田!!」


「暴力はマズイぜ!!

教師に見つかったら退学になんぞ!!」


雑魚田を制止させるチ◯カス2人。


「秀吉様!!大丈夫ですか!?」


「秀吉!!大丈夫!?」


そして殴られた俺を心配する美女2人。


「ハァ……!ハァ……!

女連れだからって

調子乗ってんじゃねーぞナリヤン!!」


「別に調子に乗ってませんよ~?

身長170cm未満の人権ない系男子の

雑魚田く~ん」


「……~ッッ!!!」


俺のさらなる挑発に

怒りボルテージ限界突破の雑魚田は

長部と中村の制止を振り切って

さらに俺に殴りかかろうとする。


「フーッ!!フーッ!!

殺すぞ糞陰キャ!!!」


「落ち着けって迫田!!

もうこんな奴ほっとけって!!」


「寧々、茶々、もう行こうか

ごめんね付き合わせちゃって

2人共お腹ペコペコだろう?」


「いえいえ!お構いなく!」


「口論する秀吉凄い格好良かったよ

またさらに惚れちゃた///」


その後俺達3人はキレる雑魚田を尻目に

購買へと去って行った。


「おい!!逃げんじゃねえよ!!

ヘタレ陰キャ!!」


まだ言ってんのかよ……

哀れ………。

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