第14話「それぞれの夜」

…夜の宮殿


ここで暮らしている神話生物はいる。奈美、ニャルラトホテプ、クトゥルフ、ハスター、そしてクティーラ


別々の部屋にいる神話生物たち。その神話生物たちはそれぞれ自分の時間を過ごしている


クトゥルフはスマホでどこかの人に繋いでいた。画面越しから見れる自分の奥さん。クトゥルフは話していた


「…おう。そうか。なら安心だ。お前を本当なら連れていきたいが、自分の星のほうが一番だよな。イダヤー」


…クトゥルフには奥さんがいる。イダヤーと呼ばれる神話生物が。そのイダヤーから子供ができ、そして今子供たちがいる


「ゾスオムモグ、ユトグタは元気か?…そうか。あいつらも一応家庭的な息子たちだ。ここへ来てほしいんだけどな」


そう言ってクトゥルフは酒を飲む


「クティーラは元気さ。俺の娘だがよくできている。え?お前がそうしたって?あはは。その通りだな」


我が奥さんは元気そうで何より。病弱だが、決して悪くはなさそうだ


「何?本当なら着いていきたい?今いる惑星、まだ完璧には完成してないから来るのは難しいと思うぞ」


まだまだ完成には程遠い、惑星の建築である


「だがいつかは?わかった。お前が言うならニャルラトホテプと奈美に言っておくよ。だが無理するなよ?」


クトゥルフはそう言ってまた酒を飲む


「うん?あまり酒飲むなって?わかってるって。暴れるほど飲んでないからな」


クトゥルフはもう無くなった酒を見て言う


「お前もいつか…この惑星で会えるといいな。その時は家族全員でここにいよう。それは約束だぞ」


クトゥルフとイダヤー。夫婦水入らずの時が流れた



「…」


ニャルラトホテプはモニターを見ていた。このモニターはアザトースの宮殿から持ち寄りをしたモニター


モニターにはニャルラトホテプの化身の映像が流れる。この化身は一体何をしてるか。何かしでかしてないか。そんな監視である


この化身はただ寝てるだけだな。おや、この化身は何かしてるな。この化身は…一体何してるんだ?


化身とは言えど、ニャルラトホテプの半身に近い存在。だからこそこうやってモニターでチェックしている


もし何か悪いことをしたらすぐに駆けつけて注意する予定だが今のところは何もない


様々な惑星にいる化身。もちろん地球にも存在してる。ニャルラトホテプは黙ってそのモニターを見ていた


「…相変わらず多い化身共。こうやって俺が見ないと何するかわからん」


メッセンジャーでもあり多くの化身を持つニャルラトホテプ。その行動はどこかニャルラトホテプ自身から見つめてるような気がする


そういえばクトゥルフもハスターもシュブニグラスも化身を持っている。しかし監視をするということは無い


ほったらかしにしてるのか、監視しなくても大丈夫なのか。それは一切わからない


…もう見るのはやめておくか。明日もある。そう思ってモニターから離れようとした


…するとどこからか物音がした。誰だ?クティーラか奈美か?部屋のドアに行き、開いた


「お前は…」


「ニャルラトホテプ殿。俺でございます」


その姿は男性で黒髪ショート。目が赤い目をしており、地球の日本で言う忍び装束をした姿だった。ニャルラトホテプは名前を言う


「イクナグンニスススズ」


「どうも。アザトース様の宮殿からやってきました。ただの見回りでございます」


このイクナグンニスススズはアザトースの直属の部下。様々な監視や見回り、たまには敵の暗殺などそういうことをしている


「…どうしたスズ。俺に何か用か」


イクナグンニスススズはゆっくりと地に膝を着いて、言う


「実は今アザトース様があちこちでアザトース様の敵を排除せよ。という命令があります。敵…と言っても独立勢力のことですが」


独立勢力…そういえばそういう勢力があることはニャルラトホテプは知っていた


「俺がわかるのはティンダロスの猟犬共とタゴンとハイドラ、チョーチョー人のことか?」


「はい。最近その勢力が活発しています。ティンダロスの猟犬たちはあちこちの惑星で支配をしているようです。

タゴンとハイドラは海に面した惑星にいて惑星を次々と占拠。部下のインスマスの住人も増やしています。

そしてチョーチョー人。宇宙を支配せんと動きが活発になっております。このことをニャルラトホテプ殿に言おうとしました」


…なんてことだ。その勢力たちはなぜ仲良くできないのだろう。ニャルラトホテプは呆れると共に少し嫌な気持ちになった


「…この惑星に来る。という情報はないな?」


「俺の今の情報ではございません」


そうか。なら安全だ。しかしその勢力たちのことは気がかりだ


「わかった。今までどおりアザトースの側にいろ。地球には来ないだろうな?」


「はい。地球は大丈夫なようです」


イクナグンニスススズは引き続き腰をおろした状態でいた


「…ヨグソトースは?」


「未だにわかりません」


そうか…なら仕方ない。ヨグソトースの存在がいれば一気に壊滅できるであろうに


「ならよい。報告に来てありがとう」


「いえいえとんでもない。では、失礼します」


イクナグンニスススズはすっと立ち上がる。そして廊下を歩き、出ていった


きっとこれもアザトースの命令だろう。ニャルラトホテプは少々落ち着かない状態になった。クトゥグアが来ても落ち着かないわけではなかった


「…これは奈美に伝えるか。どうするか」



奈美はそろそろ寝ようとしていた。ベッドに座っている


ここへ来て充実するような日々を送っている。それはニャルラトホテプに感謝しないといけないし、ありがとうと言いたい


だからこそこの女王という地位を上手く扱いたい。もちろん無理はせず、頑張りたいと思っている


この惑星にも存在する夜という概念。色々な星が見えるこの世界。どこもきれいな場所なんだなと思う


コンコン


誰か来た。おや?クティーラだろうか?がちゃ…そこには意外な人物が来た


「クトゥグア?ハスター?」


クトゥグアとハスターが来た。なんだこの組み合わせ


「やっほー女王!」


「わたしとクトゥグアが来たよ」


クトゥグアは相変わらず姉御肌で普通の服を着ていた。ハスターももちろん黄色い服を着た姿だ


「こんな夜に!どうしたの?」


「何言ってんのさ。女王の姿がみたいだけさ!」


「わたしはただ女王の側にいたいだけだよ」


…こういうのはもう慣れていくしかないだろうか。でもこの光景、ニャルラトホテプが見たらどう思うのだろう


クトゥグアとハスターはゆっくりと奈美の座っているベッドの横にいた


クトゥグア…お姉さんだがどこか良い香りのする、甘い香りがあった。ハスターも気持ち良い香りがしていた


別に私はにおいフェチではないが間違いなく良い香りのする2人だ。女性神話生物とはこうなのか?


「女王、いや奈美。最初はニャルラトホテプに否定されたらどうしようかと思ったよ」


「そう?でも大丈夫だよ。彼、クトゥグアに対してそこまで殺意持ってなさそうだった」


奈美が言うとクトゥグアは更に奈美に密着した。ついでにハスターも密着した


「うふふ…あんた良い女の子だねえ。久しぶりに神話生物でない人間はとても良いものだ」


「奈美はとっても良い女の子。わたしがそう思うんだから、女王の名としてふさわしいんだよ」


…ああ~。なんだろうこの光景。ラブコメだろうか。いや、ラブコメならもっと逆ハーレムになるはずだが…


私は女性なのに女性が集まってくる、謎の光景。私って女性にモテる雰囲気がするのか?


「じゃあ一緒に寝よう?」


「そうだね。寝よう」


「わたしも側で寝たいな」


もうどうにでもなれ。奈美は3人で寝ることにした



奈美はこれからも女王としている


ニャルラトホテプはこのことをどう伝えるか考えていた




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