第12話「豊穣の神」

…今日もまた始まるのかあ


奈美はゆっくりと目覚める。この世界?に来てから全然寝坊などせずにいられた


うーん…まずは背筋を伸ばす。女王という存在になってから、最初こそ受け止めることが難しかったが、邪神たちと会って色々と変わった


元々人間として生きて、そして死んで、女王になり邪神と仲良くしてるうちによくなっていった


だんだん女王としての自覚を持ってきた。この調子で何もないといいなあとは思った。何もなければ、ね


だが、そんな『何もない』が今、崩れ去ることになった…理由は…


「…ハスター!」


そう。ハスターが横にいた。また奈美の寝顔を見ようとここへ来たのだ。またクティーラに怒られる!


なおかつ、横にまた気配があった。はっ…!奈美は気づいた。もうひとり、横にいることを。奈美がいるすぐ横を見た


…銀色の髪がとてもきれいで、大人な女性だった。どこか、高貴な姿をしていて、それは神格なのだろう


「しゅ、シュブニグラス!?」


そう。シュブニグラス。いつの間にかここへ来てたのだ。前に会ったのに、もう再会してしまった


奈美を挟んだこの2人の神格は目覚めた。心地よいのだろう。ハスターとシュブニグラスは笑顔で言う


「おはよう奈美」


「目覚めた?おはよう」


ハスターとシュブニグラスはゆっくりと起き上がり、奈美を見た


は、はわわ…これは人間のときにはまず経験のない神話生物同士のベッド。両手に花?でも私女性だし!


で、でもどうしてシュブニグラスがいるのだ?昨日そんな情報、ハスターにもニャルラトホテプにも聞いてないし


「ど、どうしてシュブニグラスいるの?」


「実はね。魔王様経由なんだけど、もう宇宙を旅する必要ないぞって言われてこの惑星に来たの。だから来たのよ」


…あの魔王ってわりかし簡単な理由を言うのか…


「これからわたしとシュブちゃんで奈美のことを守るからね」


もうなんだかよくわからない。しかもハスターとシュブニグラスってパートナー同士なのになぜ奈美を守ろうとするのか


がちゃ


「おーい奈美。そろそろ…ってあー!ハスターとシュブニグラス!どうしてここにいるのよ!」


クティーラが来ちゃった。ああもうどうにでもなーれ


「だって奈美と一緒にいたいもん」


「奈美を守るのも私の役目なのよ」


この邪神2人はうふふと笑う。ほんと邪神なのかこの2人は。しかも女王とは呼ばず本名で言うからなおさら変な気分


「とにかく!早く離れなさい!全く!」


朝から早速何かあった奈美だった



「…というわけで私はこれからあなたたちと一緒になるわ」


王の間でシュブニグラスが言う。気の所為かたくさん集まったなあとは思う


「これからシュブちゃんといれて嬉しいな」


ハスターは喜んで言う。まあそうだろうパートナーだしね


ニャルラトホテプとクトゥルフは顔を合わせる。なんだか急に来たな、と


奈美も含めて女性が多いとは言えど、まあ男性もいるからそこまでバランスが悪いわけではない


「わかった。じゃあシュブニグラス、これからよろしくね」


「ええ」


そう言うとシュブニグラスが笑顔になる


「シュブニグラスって何かできる?」


「私?私、農業が得意なのよ。実際私が神話生物になってるときは、黒い仔山羊を引き連れて宇宙を飛ぶわ」


へえ。黒い仔山羊かあ。きっと普通の黒い山羊なんだろうなあ。という表情をしたらニャルラトホテプが言う


「奈美。こいつの黒い仔山羊ってやつは化け物だぞ。れっきとした下級神話生物だ。肉にならんし乳も出ない」


…やっぱり怖いこの人!


「うふふ…。でも今は仔山羊たちは惑星にはいない。いつでも私から出せるのよ」


そうが言われても怖いものは怖い。だが農業が得意というのなら…?


「シュブニグラス。畑や畜産が得意ってこと?」


「そうよ」


だったら畑と牛舎?を作らせたほうがいいだろうか。イグへ相談に乗ってみよう


「おーい!女王!」


シュブニグラスの後ろから誰かの声が来た。蛇人間、イグだった


イグは王の間まで近寄り、言う


「おや?シュブニグラスじゃないか」


「こんにちはイグ。私、この惑星にいることにしたのよ」


彼女が言うとイグははっとした顔になる


「もしかして…農業、するのか?」


「ええ。そうしたいわね」


何かあったのだろうか?イグが奈美のほうに向いて言う


「実は畑を作ったんだ。そしていつか来てほしい動物の舎も作った。シュブニグラスがいるならちょうどいい!」


なんてバッチリタイミングなんだ


「わかった!早速シュブニグラス、畑に行って!」


「ええ。わかったわ」



シュブニグラスは畑へ向かい、早速豊穣の祈りをした。彼女は邪神だが豊穣の神格でもある


奈美とハスターとイグと共にその祈りを見た。するとどうだろう。畑からもう芽が出た。これは神格ならではの能力だろう


動物の舎はまだ誰もいないが、きっとシュブニグラスがもってきてくれるだろう。黒い仔山羊は置いて


イグはシュブニグラスの存在を喜んだ。ハスターは相変わらずの能力でニコニコしていた。奈美はびっくりするしかなかった


「す、すごい…!」


「まあ、こんなもんよ」


シュブニグラスは余裕そうにしていた


「何かリクエストがあったら畑の作物、動物を追加してあげるわ」


「うん。今は特別ないから後でよろしくね」


豊穣の神なのだろう。シュブニグラスの能力を改めて実感するしかない。イグは言う


「そういえばおもだしたが、発電機能が全然無くてな。誰かいたらいいんだが」


発電?そういえば電気があまり存在しないとは思った


「発電ねえ…」


「あら。だったらイタクァ呼べば?風力発電なら彼に任せればいいし」


しかし彼はどこにいるのだろうか。ハスターに向いた


「彼ならわたしの呼び声ですぐに駆けつけてもらえるよ。…だったら太陽光発電も追加しよ!」


なるほど、風力発電と太陽光発電でこの惑星の電気をまかなえばいいのか。しかし太陽光発電は誰が?


「私の友人のクトゥグアを呼べばいいんじゃないかしら?」


クトゥグア。初めて聞く神話生物だ。その言葉を聞くとイグは困った顔をする


「どうしたのイグ?」


「実はニャルラトホテプとクトゥグアって仲悪いんだ。前にニャルラトホテプが管理した森を焼失してから嫌いになったんだ」


あ~…そういう理由があったのか


「だが今は神話生物同士仲悪くする必要はない。きっと大丈夫だと思うぞ」


「どんな神話生物?」


奈美が言うとイグはすぐに答える


「いつもは大きい火球になって宇宙にいるが、人間の姿は姉御肌の人さ。火球が宇宙から照らしてくれれば、太陽光発電もできるはずだ」


なるほど。仲悪いニャルラトホテプには申し訳ないが、彼女も誘うのも一番だろう


奈美は畑を見ながら思う。よし、じゃあイタクァとクトゥグアを呼ぼう。そう思った



新たな事業


シュブニグラスを迎い入れて楽しみになってきた







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