第8話「女王の素質として」
…夜
すっかり日が無くなったこの星にて奈美は食事を済ませる。とはいえ、ちゃんと食べることができる人たちの食事だった
ニャルラトホテプなんぞ口が無いからどこでエネルギーを接種してるのかちっともわからない。どこで接種してんの?
奈美、ハスター、クトゥルフ、そしてクティーラと食事をとっていた。うーんクティーラの作った料理おいしい
そういえばクトゥルフが作ってくれたたこ焼きも美味しいが、クティーラはどこか優しい味がして美味しかった
今日の食事は牛タンシチュー。これを不味いだなんてとても思えない。美味しい食事だ
4人は食べ終えると美味しかった~という満足した表情になり、そしてスプーンを置く
「クティーラ、ごちそうさまでした」
「ええ。満足してくれたら何よりだわ」
そう言うとクトゥルフは言う
「お前の食事は美味しい。さすがお母さんの元でいたことはあるな」
「何言ってるのよお父さん。こういう人間が食べる食事じゃないとお母さん元気にならないって言ったじゃない」
「そうだったな。あっはっは」
クトゥルフが笑った。このクトゥルフという神話生物は本当にお父さんみたいな感じで奈美は親代わりのような存在だった
もちろん、地球にいたころ奈美は父母といたが今では親みたいな気持ちだ。クトゥルフとニャルラトホテプがお父さん
クティーラは姉代わり、ハスターは…同じ同級生という感じだ
シュブニグラスあたりはどうもお母さんっぽいイメージはあるが、会ったのみなのでそうとは思わなかった
「食器、片付けるから奈美はお風呂に入ってね」
「うん」
~
…ふー
奈美はクティーラの指示どおり風呂に入る。とても大きくて湯船に浸かるには良い風呂だった
おまけにどこで調達したのはわからないが温泉の素を入れて1日の疲れが無くなるような気持ちになった
これは地球だろうか?だが、今いるこの私が地球に来たらどうなるのだろうか?
地球では死んでしまった私。でも、ここに来て女王として存在してる私
決して、家族関係は悪いとは思ってなかった。だが、私は確かに死んだ。病気になり、何もかも終わってしまった地球の私
…ふー
なんだかため息が多い。考えたら考えるほどちょっと落ち込んでくる
すると風呂場のドアが開いた。誰?そう思っていると…
「は、ハスター!」
「やっほ奈美。わたしも入るね」
いや、あまり女性でも凝視したくないが、ハスターってこんなにスタイルが良かったんだ!?
しゅっとした出で立ち、肌は灰色だが全然がさがさしてなさそうな体。やけに大きい胸。細長い足。モデル体型なのか!?
だがこの灰色の肌というのもあの猫っぽいイメージがある。猫耳付けたら猫になれるんじゃないか?
そういえばクティーラの肌は見たことないが、きっとハスターのような体なのだろう。あのクトゥルフの娘だし
そう思ってると肌を見せたハスターはゆっくりと湯船に浸かり、隣同士で奈美といた
「…ハスターの体つきって、モデルだね」
「そう?わたし、あまり体つきに関してはそこまで気にしてないよ」
こんな立派な体つきをした神話生物を部下にするのはなんだか申し訳ない気分になってくる
ニャルラトホテプとクトゥルフはわかるとおり筋肉質だ。そういえば…会ったイタクァもまあまあ体格の良い神話生物だ
「ねえ奈美」
「どうしたのハスター?」
ハスターは顔を横に向いて奈美を見た
「わたしたち神話生物っていうのはマレウス・モンストロルムっていうの」
「そんな名前があるなんて」
マレウス・モンストロルム…今後覚えておいたほうが良さそうだ
「わたしたちはね。昔は気ままに勝手に暮らしていて、人間にも悪事をしたぐらいなんだよ」
ハスターは言うと更に言う
「わたしみたいなのを神格って言って。グレードオールドワン、外なる神、化身、そして旧き神がいるんだ」
「…ハスターは?」
奈美が言うとハスターは笑顔で言う
「わたしはグレードオールドワン。ニャルラトホテプは外なる神。クトゥルフとクティーラはグレードオールドワンだよ」
なんだか色々と種類豊富だなあ。女王の奈美はそう思った
「でもね。今は人間に危害を与えるのは禁止。だからみんな穏やかになった。シュブニグラスも、イタクァも」
…この神話生物というのはそうなったのか。きっと長い年月をかけて、そうなったのだろう
「人間に危害を与えず、モンストロルムたちだけで暮らそう。そう決めたのが腹心のニャルラトホテプの命令なんだ」
「そうなんだ。嬉しい。ハスターも優しい性格になったんだね」
「わたしは元々優しい性格だよ?あっちから攻撃しなきゃ、何もしないから」
確かに攻撃をしなければ…という行動前提での話だ
「そ、そうだね。でも…人間の私からしたら、嬉しいことだよ」
「うふふ…」
そう言って2人の風呂の時間が流れていく
~
「…ニャルラトホテプ」
ここはニャルラトホテプの部屋。奈美の部屋があるとおりニャルラトホテプにも部屋があった
あまり飾りのない部屋だった。神話生物なのだからそういうのはいらない。ニャルラトホテプとはそういうものだ
「どうしたクトゥルー」
「俺はあの奈美というのを最初は心配したが、今ではすっかりどっしりと腰が座るようになったな」
クトゥルフは酒を用意してぐっと飲んだ。神話生物なのであまり酒には酔わないタイプだった
「これは俺がそうしたまでだ。あいつは最初から俺を見てなんも思わなかった。そして女王のなったまでだ」
「ふん。アザトースも何考えてるかわからんが…だが今となっては良いことだったな」
魔王アザトースを思い出していた。あの大きすぎる魔王は何言い出すかわからない
「これからお前、奈美をどうするんだ?」
「奈美をもっと女王としての威厳を深めて、これからモンストロルムたちを導く。それだけだ」
できることだろうか?いや、大丈夫だろう
「そうか。だがヨグソトースみたいな副王はほったらかしにしてまず会えるであろうモンストロルムを会わせようぜ」
「俺が考えるにはまだまだいる。…お前の息子たちはどうだ?」
クトゥルフにはクティーラの他に子供がいる。子供と言っても立派な神話生物だが
「ガタノゾーアあたり紹介するか。あいつが一番わかりやすいタイプだ」
「わかった。彼は今どこにいる?」
「これより別の惑星で静かに暮らしている。あいつ大きいからな」
クトゥルフは酒を飲む。一方のニャルラトホテプは黙ってクトゥルフの飲む酒を見ていた
「ならそうしよう。クトゥルフ、ガタノゾーアを連れてきてくれ」
「オーケー。大きいとは言えどちっこくできるからまずは呼んでみる」
そう言うとこの2人の神話生物の夜は過ぎていく
次はガタノゾーアだろう
クトゥルフは早速連絡を入れた
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