第44話「後始末」

 ドット達との闘いの直後、大きな音がした。

直後、ラファエラからの通信が入り、


「艦長様、敵のロボを破壊いたしました」


そうキュロプスを操っているのは、彼女だ。

ちなみに後で聞いたけど戦いは、ほぼ一方的なもので、

大した抵抗もできずハンマーで叩き潰されたとのこと。


 通信を受けて、


「わかった」


と答えたあと、アニタさんがドットを拘束するのを手伝い。

その後、雫姫にこの場を任せた後、

僕らは盗賊のリーダー格の男の元に向かい。

中途半端だった拘束をきちんとしたものにした。ちなみに男はまだ眠っている。


 ここでカナメから連絡があって、ロボのパイロットを含め

残りの盗賊たちを拘束したという。

その後、みんなに手伝ってもらって、洞窟の前に全員を集めた。

そしてロボで護送しようかと思ったけど、

キュロプスだけでは手が足りないし、そもそも護送には向いていない。

新たなロボを準備するにしても、

アニタさんの目が気になる。すると、そのアニタさんが、


「そのライレムで護送は難しいでしょう。

村に戻って人を呼んできます。見張りをお願いしますね」


と言い、一旦その場を後にして、しばらくして村人を連れて戻ってきた。

なおここまでの事情は、魔物達は盗賊たちが操っていた事を話している。


「あれ?貴方達のライレムは?」

「先に帰しましたよ。護送向けじゃないで、いても邪魔になるだけですから」

「帰した?」


ここで思い出したように、


「そう言えば、雫姫さんは?」

「同じく先に」


と答える。嘘は言っていない。帰したのは事実だから。

人手があるなら、ロボは必要ないと思ったから、


 アニタさんは考え込むような仕草をした後、


「まあいいでしょう。連中を一旦村に護送します」


疑いは持たれたみたいだけど、取り敢えず盗賊共を、

一旦村へと連れていく。ちなみにドットとルシアナの両名は、

余計な事を言わないようにか、猿轡をつけられている。

その後、連中は衛兵に引き渡されるのだけど、

その衛兵が来るまでの間、僕らも監視の手伝いとして、村にいることになった。


 さてここでなぜ森に雫姫が居たのかと言うと、

キュロプスと言うかユイとラファエラは、機神城でここまで来たのである。

移動手段と言うだけでなく、遅れないように先に着いて、僕らを持つ形になるので、

その間の宿泊所としての役割もあった。

なお移動中や城の姿で待機している間は、光学迷彩を使っている。


 そして僕らが到着した際に、彼女達に連絡を取って、

ユイとラファエラは、行動を開始。ユイはキュロプスとなりラファエラが乗り込み、

光学迷彩で身を隠し、洞窟の傍で待機していた。

そして、敵のロボを倒した後は、機神城と一緒に先に帰らせた。


 ただ、居てもおかしくないとはいえ雫姫が行動をしていたのは予定外だった。

後に本人から聞いたところ、待っている間、暇だったので散歩していて、

僕らの事に気付いたと言う。


「危なくなったら、助太刀するところ、あまりに殿の事を、

奴隷、奴隷と言うのでのう。殿を愚弄され黙ってられんかったんじゃ」


との事。待つようには言ったが、おとなしくしてろとは言ってなかったから、

このような行動につながったんだろう。まあ助かったけどね。


 ちなみに雫姫の戦闘能力は鉄扇による近距離攻撃と

「法術」と呼ばれる。特殊な力による攻撃。

扇からが放たれたビーム攻撃が正にそれで、遠近揃った万能なキャラクター。

この情報はネットの攻略サイトで知ったんだけどね。


 さて話は戻って、衛兵たちが来たのは翌日で、僕らは一晩泊まる事となった。

ちなみにアニタさんは、自分の素性に関する部分は隠しつつも、

依頼人である村長に、今回の一件は自分を誘き寄せる為のものだと言う事を話した。


「すいません、私の所為で迷惑かけたみたいで」


と謝るも村長も、


「いえ、私たちも連中の策略にはまって、貴女を呼び寄せてしまった。

もし今回、貴女の身に何かあれば、私たちも奴らの片棒を担いだことになる。

だから、迷惑はお互い様ですから、気にしないでください」


と言われ、ちゃんと報酬は払ってくれると言う。

ただし、その報酬の取り分で、迷惑をかけたからと、

アニタさんは全額渡すと言いだし、


「いえ、連中は最初から僕らを狙っていたようですから、

取り分は予定通りって事で」

「それでは、私の気が済みません」


と言って引かず、取り分で軽くもめることとなった。

結局、当初の予定通りとなった。


 さて衛兵が来て、アニタさんと話をしたかと思うと様子が変わって、

彼女の前に畏まるようになった。

恐らくドットたちの事もあって素性を話したんだろう。

それと関係あるかは、この時わからなかったけど、

二人は他の盗賊と別に護送されていった。

後に知るけど、二人は王都のほうに護送されて行った。

この二人に関しては、他に殺人を犯しているのと、

王族を狙ったから、国家反逆罪もあって、王都のほうで取り調べるみたい。


 さて今回の一件の後始末が終わり、再びアニタさんが操縦する馬車で、

村を後にする。途中、アニタさんが


「ナツキさん。私の素性を知ったとき、あまり驚いてなかったですね?」

「実は、知っていました。あなたが王女だということに」

「最初にあった時から?」

「いいえ、その時はわかりませんでした。

ただどこかで見たことがあるような気がして、その日の夜に思い出したんです」


この言葉に嘘はない。


「どこで、私のことを?」

「王都です」


実物を見たわけじゃないがクロウが王都で撮った写真で見ている。


「あと、ほかのみんなも知っています」

「そうなんですか?」

「もちろん内緒にしておきますし、みんなにも箝口令を出してますから」

「ありがとうございます」


と礼を言いつつ、


「私たちの家ことに巻き込んですいません」

「いえ、あなたを助けたことが切っ掛けなら、

僕らの意思で飛び込んだようなものですから、気にしないでください」

「そう言ってくれるならうれしいのですが……」


と言いつつも、表情は暗い。


「この一件に、兄上が関わっている事が証明されれば、

幽閉は確実ですので、私はおろか、貴方達の安全も、

保証できるのですが、あの二人が口を割るとは……」


僕もそんな気がした。あの二人は最後まで関係を認めないだろう。

ちなみに盗賊団の方は、ドット達に頼まれたと言うだけで、

それ以上は知らないし、あとアニタさんの素性も知らなかったと言う。


 なお後に知るが、あの二人の素性は思った通り近衛兵で、

しかもアンスガル王子と懇意。

もちろんそんな人間はアレクサンドラ姫のお目付け役には選ばれないが、

二人が言う様に、本来選ばれた近衛兵を殺して、なり替わったと言う。


「兄上が指示したこと示す証拠があればいいのですが」


 懇意と言うだけでは証拠にならない。

アンスガル王子を探っているルビィによると、

特に動きはないと言う。ドットたちと繋がりがあるとしても、

時期的に考えて、ルビィが探りを入れる前の可能性がある。

それ以前に命令が口頭ならば、証拠は残らない。


 アニタさんは、


「本人を直接問い詰めても、認めようとしないでしょう」


そしてすまなそうな表情を浮かべ、


「すいませんが、しばらく、貴方達に迷惑をかけるかもしれません……」

「別に気にしてませんから、それに事が失敗続きなら、

そのうち焦ってボロが出るはずです。その時を待ちましょう」


この言葉は、慰めとかではなく本気でそう思っていた。

それに、王子の元にはルビィもいるし、

時期にその時は、すぐ来ると思いながら、僕らはリルナリアに戻った。







 王都にて、ドットたちが捕まったと聞いたアンスガルは、

王宮の部屋にこもって不機嫌そうにワインを飲んでいた。


(あの二人が失敗するとはな、俺が命じた事は話さないだろうが……)


二度に渡る失敗は、彼を苛立たせたが、


(しかし、なぜだ)


ドット達のしようとしていた事は事前に聞いていたが、

どうして失敗したかは、まだ分かっていない。


(アレクサンドラがAランク冒険者とは言え、一人でどうにか出来たとは思えない。やはりカラドリウスかDランクとは言え、

デスグレイドのガストンを倒したくらいだから侮れないな)


アンスガルはワインを一口飲み、


「やはりカラドリウスを先にどうにかすべきだな」


と呟く。


(だが一筋縄ではいきそうにないな。奴の力を使うか)


この翌日、夜遅くアンスガルはフード付きのローブを纏い、

秘かに王宮を出た。その後、秘かにルビィが付けていくのだった。

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