第9話「ロボ戦」
先に捕まった二人の証言から連中の居所が分かっていたが、
偵察の為にドローンを飛ばした。そこから得られた情報から、
残りの連中は、 村の近隣の森の中でキャンプを張っていた。
ロボの姿は、目視では確認できないが各種センサーによると、
側においてある。二人の話では魔法で身を隠しているそうだ。
あとキャンプには三人のうち二人、見るからに小物みたいな奴らだが、
そいつらがいるだけで、もう一人、リーダーの姿は無いが、二人の供述では、
何かあった時の為に普段からロボに乗って居るらしい。
これらの状況を、村人たちとも共有するけど一つ気になることが、
「こいつら、仲間の事が気にならないのかな?」
モニターに映る二人の姿は、仲間を心配してる様子はなく、
くつろぎながらおしゃべりしてる。
この映像を見ていた村人は、
「こいつら、仲間意識が薄いみたいだな。
捕まえた二人も、すぐに仲間たちの事を白状したからな。
普通ならもう少し粘っていいはずだがな」
たぶん金で繋がっているだけの存在なのかもしてない。
しかし、つながりが薄いとはいえ、
自分たちのことがバレてしまうと言う不安はないのだろうか。
妙に余裕ぶってて、その姿に腹が立った。
更に同じく映像を見ている村人は、
「しかし、許せねぇよな。こいつら……」
実は捕まった二人の証言から、連中は持って行った家畜や作物は、
売ったりもせず全部捨てていた。
家畜の一部は、殺して自分たちの食料にしたそうだ。
自分たちが育ててきたものを、持っていっただけでなく、
ひどい扱いをされて、村人たちは憤慨していたし、僕も腹が立っていた。
ここでカナメが、
「皆さん、冷静に事を運びましょう」
そう連中の余裕にはロボを持っていることが大きいと思う。
仲間が捕まって自分たちのことがバレても、
ロボを使えば逃げおおせると思っているのだろう。
だから、こっちも冷静に事を運ばねばならない。
頭に血が上って、突っ走れば返り討ちまま違いないから。
そして村人たちと作戦を立て、連中の確保に向かった。
なお先の二人と同じく、ロボの乗って居るボス以外は、
ドローンを使って、気絶させることを提案したけど、
「それじゃあ、気が済まねぇ」
村人の男性の一人が言い、他の村人たちも同意した。
家畜や作物を無茶苦茶にされた怒りは強く。冷静に、対処するとの事だが、
出来る限りではあるけど、自分たちの手で始末をつけたいらしく、
そこは譲れないらしい。
そこで、作戦と言えるかは分からないけど、
「分かりました。それじゃ……」
取り敢えず、敵のボスが乗っているであろうライレムは、
こっちで、相手をして、その隙に残りの連中は村人たちで確保する。
「こちらで敵の機体に接触するまでは、気づかれないようにお願いします」
と念を押し、行動を開始した。
まずはライレムを取って来るという名目で一旦村を離れ、
人気のない場所に来ると、
「じゃあカナメ、頼むよ」
「わかりました艦長」
そしてカナメの体が光に包まれると巨大化し、巨大ロボのエクスレイドに姿を変え、
そして僕は乗り込み光学迷彩を使い姿を消す。
その後、村人から借りた通信ができるマジックアイテムで、
村人たちと連絡を取って、連携を取る。
そして一足先に、ドローンで割り出していた連中の居場所に到着した。
敵のロボの位置は、目視では見えないものの、センサーで分かっている。
一定の距離を取りつつも、村人たちの到着を待つ。やがて
「こっちは到着した」
こちらもそれを確認した。村人たちは、外にいる二人に気づかれない様に、
囲んでいて、何時でも行けるとのこと。
「わかりましたこれより姿を見せ攻撃を開始します」
こっちは光学迷彩を解除、目視では何もない所に向かって、
機体のパンチを叩き込んだ。すると金属音が鳴り響き、
巨大な何かが倒れたような音と、地響きがした。
この時の攻撃の所為かは不明だけど、敵は光学迷彩を解いて姿を見せた。
それは巨大で、丸っぽくて、ずんぐりとしたロボだった。
それでも西洋の甲冑っぽさはある。色は灰色。
ずんぐりしているが、力のあるパワータイプと言う感じはした。
予測されるHPはあまり高くはない。そしてロボは起き上がり、
「何だてめえは!」
通信ではなく、異世界だからスピーカーと言っていいのか分からないけど、
とにかくスピーカーを介する形でパイロットの怒号が聞こえた。
「村に雇われた冒険者だ。アンタらを捕まえにきた。
家畜と作物を無茶苦茶にした罪だ。大人しくお縄に付け」
と同じくスピーカーで、思わず時代がかったセリフを言っていた。
「ふざけんじゃねえぞ。クソガキがぁ!!」
相手も負けじと言い返してきて、ロボは拳を振り上げながら、
こっちに向かって来た。
「オラァァァ!死ねやぁぁぁ!!!」
パワータイプ故か、動きは遅い。半面、エクスレイドの機動力は高いから、
振り下ろされる拳を軽々と避けていき、隙を見て逆に蹴りを入れる。
それは相手の胴体部分に直撃し、鈍い音をして、そのまま後ろに吹っ飛ぶ。
しかし、頑丈なのかダメージはあまり無いようで、HPも減ってないし
すぐに持ち直し、再び向かってくる。
遠距離攻撃は持ってないのか、基本的に拳による攻撃で、
動きの遅さもあって、こっちは、軽々と避ける。
時折蹴りや、パンチを喰らわせる。防御力が、高いとはいえ、
何度も喰らっていると、さすがにボコボコになっていくし、
HPも削っている。
『艦長、僭越ながらもっと強力な攻撃を使われては?』
とカナメから言われたが、
「やり過ぎて、殺してしまったらいけないからね。
今回の仕事は、あくまで連中の確保だから、
ロボを破壊しても、パイロットを殺すわけにはいかないよ」
ゲームの世界では気にしなかったけど、
ここは現実だし、それに最後は村人たちの手にゆだねるべきと言う思いもあった。
その後も戦いは続き、
「この野郎!ちょこまか逃げ回りやがって!!」
そう言うなり、右手を前に突き出し構える。
「食らいやがれぇぇ!!ブースト・ブロー!!!」
右腕が離れ、飛んで来たが、軽々と避ける。
そして、同じタイプの武装を持つロボ、
要はラグナロクを知っているから、次の展開が読めた。
(ドローンカノン。展開)
エクスレイドの装甲に、装着している射撃型のドローンを展開する。
コイツは、全方位、範囲攻撃ができる。
そして飛んで行った敵ロボの右腕が方向転換して戻って来たので、
コイツで撃ち落とした。
「なにっ!!!」
敵ロボのパイロットは驚愕の声を上げた。
飛んできた腕が、再び襲ってくるのは想像がついたが、
何処から来るか分からなかったから、この武装を使った。
「畜生があぁぁ!!よくもやりやがったなぁぁ!!」
そう言って、残された左腕で、殴りかかってきた。
当然、避けて、カウンター気味にキックが入れる。
「グッ……」
そして、また後ろへと吹っ飛ぶ。
「ちくしょう……俺様をコケにしやがって……絶対に許さん!」
そんな事を言っている間に、村人たちが奴の仲間たちを確保していた。
「さっさと終わらせよう」
ドローンカノンで敵ロボの右足を、集中攻撃させた。
防御力は強くとも、攻撃が集中すればひとたまりもなく足は破壊され、
「うわあああっ!」
バランスを失い、ロボは倒れ込んで、相手のHPは一気に減る。
「これで終わりだよ」
エクスレイドで倒れたロボの左腕を踏みつけた。
「おい、やめろぉぉぉぉぉ!」
とパイロットの声が聞こえるが、構わず踏みつけ続け、
バチバチと火花を散らしながら、左腕はバラバラになった。
これで戦う術を失ったからかHPは一気にゼロになった。
そしてコクピットと思える場所から、
スキンヘッドに顎髭で、上半身裸で筋肉隆々で、
プロレスラーみたいな体格の男が、出てきて逃げ出す。
話に聞いていた連中のリーダーと思われるが、
直ぐに村人たちに囲まれて、多勢に無勢で確保されていた。
取り敢えず、任務完了だ。
そして、村長宅に依頼完了の報告をしに行き、
依頼完了書と追加報酬の金貨を貰った。
依頼の完了はギルドの報告する場合と、依頼人本人に報告する場合がある。
本人に報告する場合は、完了書を貰いギルドに提出し、それが成績に関わってくる。
(この辺は、ファンタテーラと同じだな)
と僕は思った。
報酬をもらう際に村長から、
「しかし珍しいライレムですな。やはりあなたのメファミリアを作った方が……」
「はい……」
エクスレイドは、リアルロボット系の作品にはよくあるデザインだけど、
この世界では、珍しいものらしい。
「ところで、ご一緒の方は?」
「実は、別の依頼がありまして、彼女はそっちの方に、
ロ……ライレムを使うだけなら僕だけでもできるんで」
「そうだったんですか。足止めして申し訳ないですね」
「いえ、彼女は凄腕ですから、一人でも十分すぎるくらいです」
実際は嘘である。エクスレイドの見た目の珍しさで、人々の注目を浴びてしまい。
村人たちの目があるので、カナメの姿に戻せないだけであった。
だって、ロボが人になったら大騒ぎ間違いないから。
なお光学迷彩があれは、一旦姿を消して、
秘かに気づかれない場所に移動するのだが、
光学迷彩が再使用まで、まだ時間が掛かるので、それも出来なかった。
因みにエクスレイドは、村の外の開けた場所に置いている。
そして、村長から
「とにかく、ありがとうございます。
今後何かあったら、お願いしてもいいですか?」
「はい」
と返事をすると、
「また何かあったらお願いしますね」
と言って村長は深々と頭を下げた。
その後、僕は村人たちに見送られながら、エクスレイドに乗って村を後にした。
『さっきはお褒めいただきありがとうございます』
村長との会話を聞かれていたようで、嬉しそうに言うカナメ。
「誤魔化しとはいえ、本当のことを言ったまでさ。
実際に君は凄腕なんだから」
そう言って、僕は微笑んでいた。
とにかく、今回の依頼は無事完了した。
しかし、この依頼が後に異世界転生によくある。
いい意味でのやらかしである事を知るのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます