第7話「今後へ向けて」

 翌日、朝一番にユズノ達と一緒に、ギルドに向かった。

戦艦内に会った台車で、大きな魔石を二つ運ぶ。

一つはギガントオークのもので依頼完了の証。

もう一つは巨大リザードマンのもので、売却予定だ。なお冒険者ギルドは、

魔石の販売の仲介もしている。


 受付嬢に、魔石を見せて職員が鑑定する。


「確かにギガントオークの魔石ですね」


これに依頼完了で、報酬を貰いランク昇格の手続きをしておく。

報酬は金貨10枚、日本円にして10万円ほど。


「あと、これを売りたいんですが」


と言ってもう一つの魔石を見せる。


 職員の鑑定では、


「これは、ギガントリザードマンの魔石……どこで手に入れたのですか」


と場所を聞かれ、正直に話すと、


「そんな……!」


と驚いた後、


「詳しく教えてください!」


と血相を変えたので、


(異世界転生特有のやらかしかな?)


と思った僕は、場所と状況を説明した。一応、リザードマンが現れたあたりまでは、

本当の事を話して、


「ちょうど雨が降ってきて、剣を大きく振り上げた途端、

落雷が起きて、それで死んでしましました。

だから、自然死です」


と答えた。すると職員は、


「本当に?」


と言って納得いかない様子で、


「でも、あんた達が倒したわけじゃないですよね……」


と何気に失礼なことを言い、カナメが不機嫌そうな表情をする。


 しばし悩まし気にした後、


「確かに、雷の方が幾分、納得ができますね……」


と呟いたのち、


「それでは、くわしい査定しますので、少々お待ちを……」


と言い石をじっくりと見た後、一度場を離れ、


「金貨50枚で買い取らせていただきます」


と戻ってきて言った。日本円にして50万円


「そんなにするんだ……」


僕が驚くと、


「この魔物は、高位の魔物で、昨日勇者様が、敗北したんです」

「そうなんですか」

「状況から考えて、この個体は勇者様を負かしたものだと思われます」


僕たちが魔物と戦ってる場所の付近で、勇者も戦っていたという。


 勇者の実力が、どれくらいかは分からない。

恐らくかなりの実力なんだろう。それを破るほどの魔物だ。

それを新人の冒険者が倒すとは思えないのだろう。

詳しく話を聞くと、雷に極端に弱いとはいえ、

落雷一発で死ぬような魔物じゃないらしい。

トールサンダーの威力が思いのほか強かったという事を、感じながらも、


「勇者様との戦いで弱ってたんじゃないですか……」


と誤魔化した。すると職員は、


「あの戦いで、弱らせていたとも思えないんですよね」


と実際の戦いを見て来たかのような事を言うので、


「見てたんですか?」


と聞くと、驚いたように職員は


「勇者様の戦いは、魔法で中継されてるんですよ。ご存じないんですか」


と当然のように言う。なんでも、この街では中央広場だが、

各町の人が集まる場所に、スクリーンのようなものが表示され、

勇者の一族の戦いが、映し出されているらしい。

なお生放送のようなので、活躍だけでなく醜態もありのまま流れるとか。


 そして巨大リザードマンとの戦いはボロ負けだったようで、

弱らせたようには思えなかったとの事。

しかし、僕らが倒したとも思えないので、

納得はできないが、落雷の方が幾分か信じられるとの事。


 その後、僕たちは、魔石の代金を受け取り、ギルドを出た。

ギルドを出てからユズノが、


「どうして、正直に言わないの?私たちが倒したって……」

「言ったところで信じてはもらえないさ、

それに、強い力を持っているとなれば、警戒されるよ。

僕らは、侵略者じゃない。今は抑え気味にして、友好に接するべきだよ。

もちろん相手次第だけどね」


するとカナメが


「さすが、艦長!その通りです」


と言ってきた。サファイアも、黙って頷く。

ユズノは、少し不満そうにしていたけど、 それ以上は何も言って来なかった。

ギルドでの用事は終わったけど、まだ昼前なので艦に戻らず、

四人で、街をうろつく事にした。街には様々な店があり、

武器屋や防具屋などの戦闘に関わるものもあれば、薬や雑貨を売るお店もある。


 店を見ていると、ふと思い出すことがあった。


(そう言えば、商店経営ってのもあったな)


ゲーム中では商店を開き、ゲーム中に入手したアイテムを販売したり、

プレイヤー同士で売買ができるシステムがある。

ここで特殊なアイテムを手に入れる事も可能だった。


(冒険者だけでなく、こっちの方でも稼げたらいいな)


とも思ったが、商店を開いた場合、モブに運営させることもできるけど、

より稼ぐためには、商売上手なキャラを配置する必要はある。

ただユズノ達では難しかった。


(ショップでそんなキャラを手に入れる事が出来たな)


ショップでキャラカードと言うアイテムが入手可能で

ガチャでロボが当たった際に使用する事でカードのキャラが、化身となる。

つまりヒロイン目当てで入手するのものである。

ここでそれを手に入れるためには、専用のアイテムを入手する必要が有る。

このアイテムは、ゲーム内でのイベントで入手か課金。

恐らくこの先イベントは無いから、課金一択だろう。


 まあ商店の方はさておき、引き続き、街を散策するが、

途中で、サファイアが腕をつかんで、


「ここ……」


彼女が指さす先には、歓楽街があった。

昼間だから静まりかえっているけど、夜になったら賑わう場所だ。


「こういうとこ好き?」


好きと言われても、生前の僕は病気で酒は厳禁だし、

こういう店にいったことが無い。


「いや……行った事がないかな……」


と返すと、


「そう……」


と言うだけだった。


(何がしたかったのかな)


と思いつつも、「酒場」の事を思い出した。

扱いとしては商店の一種で、こっちはお金を稼ぐだけではなく、

情報収集の場所となっていて、ゲーム中では、

レアアイテムが登場するサブミッションへの情報を得る事が出来たりする。


(酒場と言っても、実質はキャバレーだけど……)


モブの他、ユズノ達もキャストにできるけど、

抵抗があるので、やるとしたらキャスト向けのヒロイン、

特に課金専用キャラにもそう言うのがいるので、

そっちに任せようと思う。


 時間帯もあってか、歓楽街に行くつもりはなく、

一通り街を回った後、艦に戻った。

そして一休みした後、今後の方針を伝える。

ロボ好きとしては、この世界のロボが欲しいという思いはあったが、

それは抑えておくとして、

僕とユズノ達で冒険者をすることは、決定事項であるが、


「まずは建物を確保したいと思う」


そこに住むわけじゃない。戦艦への転移ゲートは、

人気のない場所に、出現させているが、万が一見られる可能性もある。

出入りだけならすぐだが、物資の積み込みとなると、

そうもいかない。だから人目の付かない場所として、

屋内に設置する必要があり、建物の確保が必要なのだ。


「具体的には、どのような?」


とカナメが聞いて来たので、


「出入りだけなら、アパートの一室でいいけど、

今後物資の運び込みを考えたら、怪しまれないようにするためにも、

商店くらいの大きさかな。大きくなくてもいいけど」


今後、実際に商店をするだろうし、あと最初から大きいと、

目立ち過ぎので、そこそこの規模でいいと思った。


「とにかく不動産の相場を調べ、物件の入手を目指して、

お金を稼ごうと思う。もちろん戦艦の維持も忘れずにだ」


カラドリウスには、自己修復機能が付いているので大規模な破損でもない限りは、

戦艦のメンテナンス自体は、問題はない。

必要なのは、僕を含めた乗員の生活関係だろう。

とにかく、金を稼がなければならない。


「その為には、冒険者ランクを上げる必要はある。

いきなり高ランクは、まずいからとりあえずDランクを目指し、

しばらくそれを維持したい」


カナメは


「わかりました。艦長の方針に従います」


ユズノは、


「私、頑張るから!」


サファイアも


「……がんばる」


とそれぞれ返事をした。


 とにかく方針は決まった。ここからが本番だ。

僕は戦艦や彼女たちを使って、この世界をどうこうする野心はない。

とにかく今は彼女達と、この異世界で過ごしていこうと思う。

そしてロボ好きとして、いつかこの世界のロボを手に入れる。

その思いを強く胸に秘めていた。

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