第4話「初仕事」

 翌朝起きると、ベッドの横に膨らみ、


「………」


布団を剥ぐと、


「艦長、おはようございます……」


今日は、サファイアが添い寝していた。しかもウサギのぬいぐるみを持ってだ。


「どうしてここにいるの?」


僕は思わず正座してしまう。


「わかりません。多分寝ぼけたんでしょう……」


と淡々とした口調で言う。ゲーム中のイベント通りだ。

そうだとすれば、次に待ってる展開は。


「ナツキ!おはよ!」


と扉が開き、ユズノが部屋にやって来た。


「あ~ちょっと何やってるのよ!サファイア!」


すると淡々とした口調で、


「寝ぼけて、ベッドを間違えたの……てへっ……」


表情を変えずに言ったが、僅かに口元に笑みを浮かべた。

なおサファイアは、あざとい所がある。


 その笑みに気づいたのか、ユズノは


「アンタ、ワザとでしょ!」


と怒鳴り、サファイアに飛びかかるが避けられ、

しばらく二人の追いかけっこが続き、そこにカナメがやって来て、


「貴女達、何やってるの」


と二人を一括した後、説教をし、


「艦長も、二人を甘やかさない様に!」


と僕まで注意された。まあここまでがサファイアの添い寝イベントである。


 この後、着替えて食堂に向かい朝食を食べた後、 ブリッジに向かい、


「全艦発進!」


取り合えず、リルナリアの近くまで、

戦艦を気づかれないよう潜航したまま移動させ、

人気のない場所に、転移ゲート生成し、そこから僕らは外に出た。

この転移ゲートは、艦との出入りに使うもので、

戦艦から、一定の範囲にしか生成できない。

なお転移ゲートは格納庫と繋がっている。


 その後、僕は、ユズノ達を連れて、また貴金属店で今度は金塊を売却し、

更に20枚の金貨を手に入れた。

まあ昨日、手に入れたお金で十分な気もしたが念の為である。

とにかく、これを元手に装備を手に入れる。


 装備と言っても、武器は既に持っているから、

服とか防具とか、見た目に関わる部分を買うつもりだ。

今の三人の見た目、ユズノはカジュアルな、シャツに半ズボン、

カナメは昨日と同じく軍服は、どちら悪くはないけど、

ファンタジーの世界観には合わない。

サファイアのゴスロリ衣装は、この世界でも違和感はないけど、

戦闘向けじゃない。だから新しい衣装が必要だった。


 取り合えず僕が方針を決めて、彼女たちのセンスで選ぶ。

ユズノは、格闘技の使い手だから拳闘士で、

カナメは、剣の使い手だから剣士、

サファイアの超能力は、魔法の様だから魔法使い。

昨日と同じ店に入り、この方針で服選びをしてもらった。


 結果ユズノは、チャイナ服を思わせるようなデザインの衣装を購入。

カナメは、中世の騎士を思わせる鎧を購入し、

サファイアは、ローブの様なものを購入した。

これで準備は完了。見るからに冒険者パーティーの出来上がり。


 しかしユズノは、自分たちと僕を見比べて、


「なんかさぁ、似合ってはいるんだけど……」

「なに?」

「いや……その……」


ここでサファイアが、


「男装の使い走りみたい……」


サファイアは毒舌なところがある。確かに僕の格好は地味な男性物の服で、

冒険者としたら良くて下っ端と言う感じである。


 カナメは、


「貴女、艦長になんてことを!」


と言うが、


「良いんだ」


と僕は制す。自覚があるからだ。でも僕は派手な衣装は好きじゃない。

地味で、それでいて最強と言うのが好きだ。


「とにかく、冒険者ギルドに行こう」


三人の冒険者登録が必要だし、仕事を探さなければならない。


「わかりました。艦長」


とカナメも同意する。そして四人で冒険者ギルドに向かった。

冒険者ギルドでは、まず三人の登録を行う。これはあっさりと終わった。

 

 次は仕事探しだが、これにはランクが関わってくる。

なお世界にもアルファベットが存在していて、

それでランク付けがされていた。ランクごとに受けれる仕事が決まっている。

ランクはGからA、最後はSまでの8段階あり、 実績によって昇格していくらしい。

それは、依頼の数か、あるいは昇格用の難しい依頼を一つでも達成すれば、

次のランクに上がることができる。


 つまり実力があればすぐに高ランクになれるし、

地道に頑張っても上に上がる事はできる。

なおランクアップには、その度に申請が必要だ。

なおこれらの話は、僕が冒険者登録した時に受付嬢から聞き、

3人が冒険者登録した時も、同じ説明を受けていた。


 こんな僕たちの最初に仕事は、Gランクで、あと昇格用依頼は、

二回目以降になるらしい。さっそく掲示板を覗くと、

Gランクの討伐系のクエストと収集系クエストが大量にあった。


「どれにする?」


と聞くと、ユズノとカナメが少し考えて、


「これが良いんじゃない?」


とユズノが選んだのは、ゴブリン退治だった。

冒険者としての最初の仕事としては、最もポピュラーなものだ。

 それはゲームの世界だけでなく、この世界でも同じようである。

だから僕も、それを選ぶことに決めた。


「じゃあ、これにしよう」


と僕が決めると、受付に行き手続きを済ませた後、早速出発した。



 僕達は、町から離れた場所にある森の洞窟に来ていた。

そこがゴブリンの巣だった。ユズノは手甲を、カナメは日本刀、

サファイアは、超能力を増幅するペンダントを武器にする。

僕はビームガンを装備した。あとゲームでもそうだったが、

僕らは暗視能力、僕の場合は後付けだったが得ているので明かりは必要ない。


「じゃあ行こう!」


全員の準備が出来ている事を確認して、僕らは洞窟に突入した。


「ギギッ!」


と奥の方から声が聞こえた。


「近いわね!」


ユズノは、一気に加速して、駆け抜ける。

するとこっちに気づいたのか、前方から数匹のゴブリンが向かってくるが、


「テヤァー!!」


ユズノが拳と蹴りで、次々と倒していく。カナメもそれに続く。


「セイヤッ!」


カナメの斬撃が、更に複数のゴブリンを倒していく

僕とサファイアは、射撃をする。


「当たれ!」

「シュート……!」


僕達の攻撃は、ゴブリン達に確実に命中し、次々と倒していき、

あっという間にゴブリンは全滅した。拍子抜けするくらい、アッサリとしているが、

ゲーム中で僕自身も含め、皆すでにレベルを上げていて、

それが反映されているわけだから、当然の結果である。

なおヒロインの多くは、ロボにならなくとも十分強い。


 そして倒したゴブリンは石の様なものを残して消え去った。


「これが魔石か」


この依頼は、魔石の回収と言うのもあった。

魔石がゴブリンの死骸がわりで、討伐の証明となる。

なお魔法で、魔石が元は何であったか、

いつ倒されたかが分かるという。これも受付嬢から聞いた情報。


 僕らはそれらを回収し、ギルドへと戻った。

魔石を引き渡して、得た報酬は金貨一枚、銀貨五枚。

日本円にして、日給一万五千円と言うところか、

これが、この世界にとって安いのか高いのか、いまいちわからない。


 ただ今後の事を考えると、もう少し稼いでおきたいもの。

戦艦には、僕とユズノ達だけじゃなくて、

他にも乗員はいる。全員女性でゲーム中ではモブであるが、

現状においては、れっきとした生きた人間なので、

彼女たちの面倒も見なければならないからだ。


 より多く稼ぐには、やはりランクアップを目指すしかない。

二回目以降は、昇格用の依頼を受けれるので、

それを受ける事にして、依頼が乗っている掲示板を見るが、


「ライレム推奨?」


掲示板に乗っている昇格用の依頼は、すべてライレム推奨と書かれていた。

なお、翻訳された文字にそう書かれている。この世界の固有名詞のようだ。


「何ですか?ライレムって?」


と受付嬢に聞いてみると、


「知らないんですか?」


驚かれてしまった。


「すいませんね。田舎者なので」

「ライレム知らないってどれだけ田舎なんですか?」


と益々驚かれつつも、説明してくれる。


「魔力で動く巨大な鉄の巨人です」


要はロボットの事で、街のあちこちや、郊外においてある奴で、

動力は魔力で直接だけでなく、蒸気機関で動くのもあって、

ただ魔力で、水を沸かして発生させた水蒸気を使うらしい。


「ライレム推奨ってのは」

「ライレムを使わないと、成功しないであろう依頼です」


因みにライレムの値段は、機体によって言葉なるが平均して金貨170枚、

日本円にして170万円かかるという。


「それと借りる事も出来ますよ。業者によりますが、

だいたい一日、金貨一枚です」


話を聞いた僕は、


(なんだか車みたいだな)


と思った。因みに街の外に置いて有るロボには、

貸し出し用のもあるという。


 ともかく、僕らにロボはあるので、さっそく依頼を受ける事は、

可能だが、さっきまでライレムを知らない僕らが、

似たような存在であるロボを駆っていたら、

おかしく思われそうなので、少し間を空ける必要があるだろうと思い。

今日の所はギルドを後にした。


 それと余談だけど、掲示板の内容は日々変わっていく、

今回こそ昇格用依頼は、ライレム推奨だったけど、

日にとって、そうじゃない依頼もあったりする。

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