第3話「偵察」

 一旦、飛空船から離れるが、


「飛空船の航路を予測してほしい」

『わかりました』


とカナメは返事し、すぐに、


『現在の進路を維持すれば、東へと向かいます』

「わかった」


僕は、そのまま東に向かい、

そう飛空船の向かう先には、必ず陸地があると思われるからだ。

しばらくして、大陸らしきものが見えた。

さらに進むと港町がみえてきた。ある程度、接近し望遠カメラで様子を見る。


(やっぱり、剣と魔法の世界だ……まさかファンタテーラ)


言うまでもないが、光学迷彩のお陰で、向こうには気づかれてない。


『ちょっと待ってください。大型の機動兵器の反応があります』

「えっ?」


直後、僕は気づいた。街の何か所に巨大な騎士がいた。

ファンタジー世界によく似合うロボットだ。この街を守っているようだった。


(リミマキシみたいなものかな。)


とそんな事を思った。街中だけじゃなく、郊外にも街中の騎士とは違って、

それでいてファンタジー世界によく似合うロボが多く、

それらが無造作に置いている他に、建物があって、

その中からもロボの反応がある。ともかくこの世界にもロボがあるという事。


(ファンタジックなロボも悪くないな)


ロボ好きの僕としては、ワクワクした。


 そしてロボのあるこの世界をもっと見てみたくて、


「上陸しよう」


人気のない場所に着陸し、パイロットスーツから、

普段着と言うか、シャツにジャンバーにジーンズと言う格好に着替え、

周囲に人がいないのを確認し、コックピットを出た。

すると、エクスレイドは光に包まれ小さくなっていきカナメの姿になり


「ご一緒させてください」

「ああ、頼むよ」


と言う訳で、彼女と行動する事にし、

出発の際に持って来た朝と同じレーションを食べたのち、出発した。

街に入ると、中世ヨーロッパ風の街並みが広がっている。

そして、街中で耳を澄ませる。人々はどんな言語を使うかを確認するためだ。

実際に聞こえてきた言葉、日本語だった。


(会話には不便はなさそうだ。あとは文字だな)


僕は街を見渡し看板を見ると、そこには訳の分からない文字が書かれていた。

言葉は日本語と同じだが、文字は違うようだった。


(ファンタテーラと同じみたいだけど、でもあの世界の言葉じゃない。

ここはファンタテーラとも違う世界)


文字は、訳が分からないものだったが、

視界に字幕が表示され、何と書いてあるか読む事が出来た。


(真性異言か)


設定では、艦長とヒロインは真性異言と言って、

あらゆる言葉を理解できるという設定だから、それが再現されているようだった。

そして看板から、この街の名前はリルナリアと言う事が分かった。


 その後も、カナメと街を見て回りながら、


「お金はどうすれば……」


異世界なわけだから、お金がない訳で、つい口走っていた。

無ければ稼げばいいのだが、

直ぐに雇ってもらえる訳でもないし、この世界に冒険者があるかは分からなかった。


 すると、カナメが、


「僭越ながら、宝石や金塊を換金してはいかがでしょう」


ゲーム内通貨に、換金する為だけアイテムと言うのが存在する。

確かに、宝石や金はこの世界でも売れそうだが、


(そう言えば、何処に置いてるんだ?)


すると脳裏に、ステータス画面とアイテムボックスの事が浮かぶ。

どちらも、これまたファンタジーでおなじみ奴で、

ステータス画面は、宙に浮かぶ半透明のモニターみたいな感じで、

僕の意思で呼び出せる。そして、アイテムボックスは能力としての収納スペースで、

先のステータス画面に項目があって、それを選択するとリストが出現し、

取り出したいものを選ぶ。

 

 試しに宝石を選択すると、目の前に宝石が出現した。


「おぉっ!」


と思わず声を上げてしまう。


(スキル『収納』ってこんな感じなのかな)


と思う。因みにゲームの要である鉱石も、

このアイテムボックスの中にある。


 ともかく換金である。確か街を見て回る過程で、

貴金属の買取の店を見かけていたので、そこに向かった。

身分証明を求められるが不安だったが特に何事もなく、

宝石一つを換金してもらえた。


「金貨十枚か……」


でも、今後の稼ぎは考えとかないと、換金アイテムには限りがあるし、

ゲームならミッションをクリアすれば、お金がもらえるけど、

ここでは、そうは行かないだろうし、


「さて、これからどうしようか……」


冒険者の事も調べようとも思ったが、


(服を買いに行くか)


僕の服装やカナメの軍服も、この世界ではかなり浮いてる様だった。

あと買い物して、貨幣の価値を確認する必要もあった。

因みに買うのは、今日買うのは僕だけで、

カナメは、ユズノ達が一緒の時に買う事にした。

特別扱いのような感じになって、ユズノ達の機嫌を損ねては悪いからだ。


 服屋を見つけ、僕のセンスで服を選ぶ。


「お似合いですよ艦長」

「そうかな?じゃあこれにするか」


と購入した。シャツにズボンとかなりモブっぽい格好である。

こういう地味な服が僕は好きだ。


「やっぱり艦長は男装がお似合いですね」


一応、両性具有だけど、見た目は完全に女の子だから男装となるらしい。


 因みに、貨幣価値は、金貨が一万円、銀貨、千円。銅貨が大中小の三種類あって、

それぞれ、百円、十円、一円に相当する様だ。


 服を手に入れたところで、次は冒険者の方だ。

冒険者ギルドは、すぐに見つかった。看板を見かけたという事もあるが、

建物に入ってみると、見るからに冒険者ギルドと言う建物だった。


 問題は冒険者登録だ。ここでも身分証明が気になるところだが、

そういったものは必要なく、書類を描くだけだった。

因みに、文字が読めたように自然とこの世界の言語を、書けるようにだった。

ここも設定道理である。


「はい、登録完了です」


と書類を提出すると受付の女性が言う。思いのほかあっさりとしていた。


 今回登録したのは僕だけで、カナメは見ているだけだったが、


「あの受付、なんだか艦長の事を馬鹿にしてたように見えました」


僕はそうは思わなかったけど、

今の僕の見た目は、強そうに見えないから

そう思われても、おかしくないのかもしれない。


 その後、今日の所は戦艦に戻ろうと思ったが、

その前に腕時計型の通信機で、連絡を取り食料の備蓄を聞いた。

ヒロインたちは人の姿の時は食事をとるし、食事イベントもあった。


「食料なら十分あるよ」


とユズノから返事があった。もしなければ、買って行こう思ったからだ。

ここで、


「良かったら、私が夕食作るけど……」


僕は血の気が引いて、


「いやいい、食事係に任せて!」


と断る。

実はユズノの料理の腕は壊滅的、彼女の食事イベントは、

凄まじいものだったのを覚えている。


「えぇ~~~~」


と不満そうだが


「命令だ!」


と強い口調で言うと、渋々納得してくれた。

その後、エクスレイドに乗ってリルナリアを後にし、

戦艦に戻った。なお戻って来ると、戦艦はいったん浮上し、

僕らを格納すると、再び潜航する。


 そして戦艦に戻り、僕が機体を降りた後、

エクスレイドはカナメの姿になり、そして


「おかえり、ナツキ~」

「おかえりなさい。艦長……」


とユズノとサファイアが出迎えてくれる。


「ああ、ただいま」


と答え、一旦自室に戻り、部屋着に着替え、

ちょうど夕食の時間になってので食堂に行く。

因みに今日の夕飯はカレーだ。朝昼レーションだったので、

ようやくまともな食事を食べれた気がした。

そして食べながらみんなに、見てきたことを話し、


「皆にも、冒険者になってほしい。この世界じゃミッションは来ないからな」


ヒロインたちは人間の姿でも、戦闘能力があるし、

サファイアは、実際は超能力だが、魔法みたいなものも使え、

ファンタジーの冒険者としても十分やっていける。


「分かったよ!」


と元気よくユズノが答える。


「了解しました……」


とサファイアが淡々とした口調で答え、


「分かりました。艦長」


とカナメが言う。こうして、全員冒険者にすることになった。


 夕食後は、一人で艦内の探索もした。外は確認したが、中はまだだったから、

内装は、ゲーム通りであったが、気にある場所があった。

それは、格納庫と直結している部屋で、部屋の中心に巨大な丸い台があって、

側には、コンソールがある。最初は分からなかったが、

直ぐに脳裏に、これが「召喚機」と呼ばれるもので、その詳細も頭に入って来る。

ここで鉱石を消費し、ロボを召喚する。要は、ゲームにおけるガチャで、

しかもコンソールには、現在のピックアップロボの画像も表示されている。


(これは……)


あれから、更新されたようで死ぬ前に見たのとは違うロボが表示されていた。

なお、化身が決定されているロボで、ヒロインの姿も表示されている。


(うーん、欲しいけど)


今、鉱石は、そんなにないので、後回しにして、

側の壁には妙なものがあった。

それは縦長の大きなモニターと、右下には大きな取り出し口があって、

更に入金すると思われる場所もあるので

自販機の様に見える。


 脳内に情報が入ってくる。


「こいつがショップか」


ゲーム中には、アイテムを買うショップがあるのだか

そこではゲーム内通貨だけでなく、

課金アイテムを買うことができる。情報によると、これはお金さえ払えば、

無限にアイテムを購入できる代物だ。

なお、おつりは出ないがお金はこの機械にチャージされ、後の買い物に使える。

ちなみに僕にしか使えない。


 あと値段表記は日本円だが、別のお金を入れても、

そのお金の価値に合わせて日本円に、換金され使えるという。


「この金貨も使えるのかな……」


と思い今日、宝石を売って手に入れた金貨を試しに入れてみた。


「えぇ!?」


思わず声を上げてしまった。金貨一枚入れると、

10万7千570円入れたことになった。

しかし今日買い物した感じでは、金貨一枚は、

ちょうど一万円の価値しかないと思えた。


(貨幣的な価値じゃなく、材質で判断したのだろうか)


つまりこの世界の金貨は、元の世界では、

10万円くらいの価値のある金でできているという事か。

ただ情報が入ってこないので、何とも言えなかった。


 とにかく10万円分課金したことになる。

なおショップでは、課金で鉱石を手に入れることができる。


(これだけあれば、ガチャも天井は余裕だな)


ガチャは、特定の回数を回すと、ピックアップされているロボやキャラが、

必ず手に入るようになっている。これを天井と言う。

僕は、天井分まで鉱石を貯めないと、ガチャを回す気にはなれなかった。

以前記した鉱石が足りないというのは、天井分の数という事である。

それと鉱石だけでなく、チート性能な、武器などもあるけど、


「まぁ今回は、いいか……」


いずれ必要な時が来たら、そのときは使おうと思った。


 とにかく、明日も忙しくなりそうだから、今日は寝る事にした。

その前に、風呂に入る。お風呂は大浴場だ。

これも、エディットの際に、設定したもの。

そして大きな湯船に入って、


「やっぱり広いお風呂は、いいな」


と言っていると、


「ナツキ、一緒に入ろ!」


とユズノが、入って来た。


「〇△□×!」


突然の事に、思わずわけのわからない声が出る。


「ナツキどうしたの?」


とキョトンとした顔で聞いてくる。


「いやなんでもないよ……」


と誤魔化す。


(そう言えば、お風呂イベントがあったな)


「ふぅ~~~」


とユズノが気持ちよさそうにしている。

一応、タオルを巻いているけど、

生前、病弱で、彼女いない歴と年齢が同じ僕としては、

刺激が強く、まともに彼女の姿を見れなくて、


「ねえ、ナツキ、背中流してあげよっか?」

「いや、いい、自分でするから!」


と言ってなんとか断った。


「えぇ、なんでよぉ」


と不満そうだが、これ以上は身が持たない。

その後どうにか、一人で体を洗って、先に上がり、

部屋に戻りベッドに横になり、眠った。

そして明日から僕らの冒険者生活が始まる事になる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る