第2話「転生先にて」

 目が覚めると、僕はベッドの上だった。どこかで見たことがある部屋だ。

しかも僕はパジャマ姿だったが、女性の胸があった。

そして、思わずズボンに手を入れ股間を確認すると、男のシンボルがあったが、

同時に見慣れないものもあった。


「まさか、両性具有」


僕のエディットしたキャラも両性具有だった。なお声も高くなっている。


 現状を確認しようと部屋の中を見渡した。ここはゲーム内の艦長室で、

主人公の部屋だ。そして鏡を見つけたので、そこに映る姿を見て驚いた。


「本当にゲームのキャラになってる」


僕は、「ナツキ」になっていたのだ。あの配達員の様な女神さまの言う通りに。

あと違和感は最初にしたくらいで、体は馴染んでいる気がする。

 

 そして、


「あっ……」


ベッドに膨らみがある事に気づいた。たしか最後にゲームをした時は、

戦艦がワームホールに飲み込まれるシーンだったが、

その直前は、主人公は眠りに着く場面だった。


(まさか……)


布団をめくると、ユズノがいた。このゲームには日常パートで、

眠りに着くと、ランダムで添い寝イベントが発生する。

朝起きたら、ヒロインの一人が横で寝ているというもの。

僕は、恐る恐る彼女の頬に触れた。

柔らかな感触と共に温かさを感じる。どうやら本物のようだ。

因みに彼女はパジャマを着ている。


 そして彼女は目を開け、僕を見た。そして、


「ナツキ~~~~~!」


と言って抱き着いてきて、


「おはよ♡」


とキスしてきた。ここもゲームと一緒だ。

しかし、現実の女性に対し免疫が無い僕は、

僕は慌てて引き離そうとするが、彼女はさらに強く抱きしめてきた。

その体は柔らかく良い匂いがして、僕の理性を削り取るが、


「ちょっと、こんな事してる場合じゃ、確かワームホールが……」


ゲームでは、戦艦がワームホールに飲み込まれたところで終わっていた。

その事も反映されている可能性があった。


「大丈夫だよ。このカラドリウスは丈夫だから、

ワームホールくらいなんてことないよ」


と笑顔で言う。カラドリウスと言うのは戦艦の名前で、

プレーヤーが自由に命名できる。だから僕がつけた名前である。

あとデザインも自分で選び、課金すれば更に外見を変える事が出来る。

僕は課金していないので基本のデザインで、見るからに宇宙戦艦という、

長細い二等辺三角形両脇に、同じく三角形のエンジン部分を持ち、

ブリッジ部分ピラミッドの様な形をしている。


 さてここでドアが開き、軍服姿のカナメが入ってきた。


「おはようございます……って、艦長、こんな大変な時に、

何してるんですか!」


と怒ってきた。添い寝イベントでは、他ヒロインがやって来て

ひと悶着と言うのがある。ユズノは、


「そんなに、怒らないでいいじゃない。カラドリウスは丈夫なんだから、

大した事ないんでしょ?」

「確かに、無事ワームホールを抜けましたが」

「じゃあいいんじゃない。カナメ先輩にも、おはようのハグ~」


と今度は、カナメに抱き着く。


「ちょっ、ユズちゃん!」

「カナメ先輩もいい香りがする~♡」


と言いながら顔を胸にうずめる。


「こら、離れなさい!」

「やだ!もっと堪能するんだから♡」


と言いつつ、ますます密着する。


「とにかく、こんな事してる場合じゃないの!」


と声をあげながらユズノを、どうにか引き離しつつ僕の方を向き、


「とにかく、周囲の状況確認が必要です!

艦長、着替えてからでいいですから、至急ブリッジに来てください」

「わかった……」


と僕は答え、顔を赤くしながらカナメは先に向かい、

僕はクローゼットにあった軍服を着て、ブリッジに向かった。

ユズノも着替えの為一旦出ていった。

なおゲームでは、ここまでのイベントは選択肢で、

「止める」という事もできるが、二人の好感度は下がる。

スキップしても同じ、なので最善の方法は見守るしかない。


 ブリッジに着くと、先に向かったカナメの他、

サファイアに、オペレーターが全員揃っていて、僕らの到着を待っていた。

僕は艦長席に着いた。直後、ユズノがやって来て隣にある椅子に座る。


 そしてカナメが口を開いた。


「艦長、現在位置は、海上であること以外、まったくわかりません」


と聞いて僕は、


(まあ、ここはゲームの世界から見ても異世界だからな)


正確にはゲームの世界から来たわけじゃなく、

彼女たちは、作り出された存在だけど、

余計な混乱を招くから、あえてこの事は秘密にしておく。


 とにかく今すべきことは、


「わかった。まず周辺海域の調査を行おう」

「了解!」

「それと、周辺の調査には、僕が出るよ」


ゲームでは、3種類の偵察がある。一つはドローンによる偵察。

これは一定時間放っておくだけで、周囲の状況がわかるというもの。

でもわかるだけである。


 もう一つは、ロボによる偵察。この場合は、状況の判明だけでなく、

アイテムを持って帰ってくることがある。

なお戦闘じゃないので、パイロットはオペレーターなど非戦闘員でもいい。

ただロボによる偵察は、任務に就かせている間に、

イベントが発生し戦闘となった場合。

当然、留守だから戦闘に参加できない。僕はまだ始めたばかりで、

経験はないけど、それで苦戦したというプレイヤーの話は聞いたことがある。


 最後の一つは、僕による直接偵察である。

この場合、僕がロボに乗って専用のロボットアクションステージに移行し、

偵察時間も早いが、その代わり戦闘を含めイベントが発生する。


 とにかく偵察である。出発前、早く行きたかったので

味気ないレーションを朝食として、


「じゃあ、一緒に来てもらうのは」

「は~い、私~!」


とユズノは元気よく名乗りを上げるけど、

彼女が変身するラグナロクは、偵察向けじゃない。


「いや、カナメと行く」


すると彼女は余裕の表情で、


「当然ですね」

「ええー、なんでよー」


ユズノは、不満そうな顔で文句を言うが。


「ユズノは、索敵能力が低いだろ、それに隠密行動はできないし」


ラグナロクは体がでかいし、光学迷彩やステルス機能もない。

とにかく戦闘では大活躍だが、索敵には向いていないのだ。


「うっ……」


と黙り込んでしまう。このやり取りは、索敵の際に、

良くある会話イベントだったりする。


「とにかく、偵察に行ってくる。ユズノは艦長代理を頼む」


戦艦はオペレーターに任せてもよかったが、対艦戦闘が弱いので、

いつ帰ってこれるか分からない時は、ヒロインに任せた方がいい。


「わかったわよ」


と了承しつつも、不貞腐れてるユズノを尻目に、格納庫に向かう僕とカナメ。

途中で、パイロットスーツに着替え、陸地に上陸したことを考え、

普段着と食事としてレーションも持っていく。そして格納庫に来ると、


「では失礼します」


と言うと、僕から離れた場所に移動し、しゃがみ込むと、

体が光に包まれると巨大化し、エクスレイドに姿を変えた。

なおしゃがんで、コックピットが開いた状態である。


 僕は、はしごを使ってコックピットに乗り込み、

ハッチを占める。操縦方法は、勝手に頭に張って来たし、

なにより体が馴染んでいた。


『艦長、よろしくお願いいたします』


とコックピットに響くカナメの声。

ロボに乗っている間は、変身したヒロインと会話ができる。


「ああ……」


と答える僕。


「それでは出撃するよ!」


僕は、機体を起動させ機体はすぐに立ち上がり、

カタパルトに移動し発進した。発進後、カラドリウスは海中に潜航し、

身を隠す手はずになっている。

外には報告通り、海が広がっていた。念の為、光学迷彩をオンにして飛行する。


 そしてしばし適当に空を飛んでいると、レーダーに反応がある。

見るからに、結構な大きさだ。


『おそらくは飛行船ではないでしょうか』

「とりあえず向かってみよう」


たどり着いた先に会ったのは、飛行船というか飛空戦だった。

カラドリウス同様に反重力で浮かんでいるような船みたいなもので、

武装はしていない民間の船と言ったところか、

このゲームにも出てくるが、ただデザインがおかしい。


 光学迷彩とステルス機能で、向こうにはこちらの事が見えてないから、

接近してよく見ることができたけど、

ゲーム中に出てくる飛行船はSF的なデザインなのだが、

目の前にあるのは、ファンタジックと言うか、

勇者が出てくる剣と魔法の世界的と言うか、

とにかくファンタジーに出てきそうなデザインであった。


(なんだ、異世界転生にお約束みたいな展開は)


僕は、もっとSF的な世界に飛ばされたと思ってたからだ。

実際、ロボット&ハーレムはそんな世界の話だから、

だから正直言って驚きだった。









 どこかの公園で、配達員のような格好の神様が、

スマホでゲームをしていた。その見た目のせいか、

宅配便の配達員が、公園でゲームをしながら、

休憩しているようにしか見えない。そこに褐色肌の修道女が、


「何やってるの?」


と声をかけてくる。


「いえね、ちょっと気になることがあって、

ここじゃなきゃこのゲームが遊べないから」


気になった修道女は、スマホの画面を、のぞき込む


「『ロボット&ハーレム』ってまさか、これに出てくるロボを再現する気じゃ」

「まあ、それもしたいけど、それよりも気になることがあるの」


神様は、夏樹に関することを話し、


「なんで転生先が、あの世界なのか気になっちゃって、

ゲームを再現するなら、テクノスガイアのある世界がいいのに」


修道女は、


「確かに、妙ね」

「おそらくゲームにヒントがあるのよ」

「まぁゲームもいいけどアンタさぁ、世界を持ってるんだから、

通販ばかりしてないで、世界の管理もキチンとしなさいよ。

偽神が現れたら、他の神が迷惑するんだから……」


と苦言を言うも、どこ吹く風と言った感じで、

ゲームを続け、夏樹がやっていたところまで来て、

その次の、ワームホールに飲み込まれた後まで確認した。


 すると神様は、妙に納得した様子で、


「そういう事だったのね。だからあの世界に……」


夏樹が見たかったゲームの続き、それはワームホールに飲み込まれた戦艦が、

剣と魔法の世界に飛ばされるというもので、

転生石は、この展開を再現しようとして、転生先を選んだようだった。

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