第1章「異世界に転生する」

第1話「転生の時」

 僕の名前は、八坂夏樹、病弱な僕が好きなのは、ロボとゲームだった。

特にロボは大好きだ。ロボットアニメは好きだし、プラモデルも作っていたし、

アニメだけでなく、ロボの出る漫画、ラノベ、特にゲームは大好きだ。

いつか、ロボに乗って活躍してみたいと思っていた。


 この街、S市は、異世界と繋がる穴「ゲート」のお陰で、

ファンタジーやSFが現実に存在するから、

そう言う夢も現実出来だった。


 でも今、僕は不治の病気で余命幾ばくもないから、

その夢のかなわぬもの、残りの時間をゲームに没頭する日々で、


「ゲームばっかりやって」


と苦言を言っていた親も、僕が余命幾ばくとなると、

何も言われなくなった。

今も病室で、スマホでゲームをやってる。

なお僕の病室はスマホの使用が許されている。


 そして僕のやってるゲームは、「ロボット&ハーレム」、

アクションとシミュレーションを混ぜたようなゲームで、

ロボ好き故に、このゲームを始めた。あとハーレムも好きだったりする。


 ゲームの内容は、主人公は、飛行戦艦の艦長となり、

様々なヒロイン達と一緒に様々な任務をこなす。

この世界では、ヒロイン達は、一見人間の姿をしているが、巨大ロボットが変化した存在で、

しかも、自由に元の姿に戻る事もできる。

ただロボの姿になっても、自立起動はできないのでパイロットを必要とする

主人公は、ヒロインが巨大ロボットに戻った際のパイロットでもある。

またヒロインたちも自分以外のロボを操縦する事が出来る。


 ゲームの構成は、ヒロインか主人公を操るアクションパート、

巨大ロボットに変身したヒロインたちを指揮するシミュレーション。

更に主人公が巨大ロボに乗るロボットアクションパート。

そして、ヒロインたちと交流する日常パートがある。


 ちなみに主人公の姿は自由にエディット可能で、性別の他、恋愛対象も設定可能で

先の説明で、ヒロインと言ったが、これは、僕が恋愛対象を女性にしているので、

そうなってるだけで、恋愛対象を男性にすれば、男ばかりになる。

また両性にしたら、半々となる。

 

 また、エディットできる性別は、男女の他、両性具有もある。

僕が主人公として作ったエディットキャラは、

見た目はショートカットで可愛らしい顔の少女、

中肉中背だが胸はそこそこ、髪の色も青にして、目は茶色に設定し、

性別は両性具有にした。名前は、僕の名前から取って「ナツキ」。


 因みにこのゲームは基本料金無料、アイテム課金制。

僕は、今のところ無課金である。初めて、間もないんだけど、妙にガチャの運が強くて、

しょっぱらから人気キャラを手に入れていた。

一人目はユズノ、ロングヘヤーに茶色い髪に、胸は大きくDカップはある。

青い瞳で顔立ちは整っていて、目鼻口のバランスが取れている。

明るい性格の正統派ヒロイン。カジュアルなTシャツと、

半ズボンがトレードマーク

彼女が変身するのはラグナロク、黒くがっちりとした体格で、

強力な火力を持ち、カッコイイ必殺技も使う。

これぞスーパーロボットという感じの機体だ。


 二人目がカナメ、黒髪のおかっぱ頭で、切れ長の目をしていて、

瞳の色は黒で、眼鏡を付け、スレンダー体型で胸はBカップくらいの大きさ。

落ち着いた雰囲気のクールビューティー。彼女は軍服を着ている

彼女が変身するのは、エクスレイド、リアルロボット系のロボで、

攻撃力はそこそこだが、高い機動力を持ち

デザイン的にもミリタリー的な雰囲気が感じられる。


 三人目はサファイア、セミショートの金髪碧眼で、背は低く、胸も小さく、

幼く見え、可愛いゴスロリ衣装の女の子といった容姿だが、

無表情で、どこか冷めた印象を受ける。

変身する機体はエンジェリオ、

背中に大きな羽を持つ天使のような女性型ロボ。

強力な遠距離攻撃を使う。


 この三人が、最初のガチャで手に入った。初回特典で、三人までは無料だ。

後はゲーム内で鉱石を手に入れるか、課金で鉱石を買って、

それを消費してガチャを回す。

このゲームの特徴は、ヒロインとロボが、別々のガチャになっていて、

鉱石を消費して、ガチャを回しロボを手にいれ、その後再度ガチャを回し、

化身となるヒロインを決まる。この時ヒロインの方のガチャは最初に一回は無料、

気に入らなかったら再度回せるが、その時は鉱石が必要である。

因みに、ロボの入手には鹵獲もあり、

この時はヒロインの方のガチャに、最初から鉱石が必要となる。


 またロボによってヒロインのガチャが回せない。

すなわち、どんなヒロインになるか決定済みのロボもある。

実は、ユズノ、カナメ、サファイアが、それに該当する。

だから、僕はヒロインガチャを回したことがない。


 ちなみに設定では、ロボは艦長が鉱石を使って人間に変身できるようにしているという。

それともかく、今は鉱石が足りないので、この3キャラで遊んでいる。

彼女たちは強いので、ゲームは問題なく進んでいる。

ただゲームの使用上、ラグナロク、エクスレイド、エンジェリオが、

並び立つことは、現時点ではない。


 そして何時ものようにゲームをしていると、

一人の少女が声をかけてきた。


「おや、珍しいものを持ってるわね」


その少女は、赤毛のミドルショートの中々の美少女であった。

歳は、まだ十代後半くらいかな。


「貴女は?」

「私、身内がこの病院に入院してて、見舞いに来たんだけど」


つまり見舞客との事。


(そう言えば、最近二人の番長が入院したって聞いたけど、

どっちかの親戚だったりして)


とそんな事を思った。


 そして少女は、


「それより、その石……」


僕のベッドのそばのテーブルに、置いてある石を指さした。

この石は、以前に、家の庭で拾ったものだけど、

綺麗で、不思議な気配のする石。

お守り代わりに、いつも持ち歩いている。


「懐かしいわね。この石のお陰で、愛する人と再会できたの」

「はぁ~」


願いをかなえる石だと言いたいのだろうが。

この後、散々、聞きたくもないのろけ話をして、


「長話しちゃったわね。貴方にも幸せが訪れるよう」


と言って去って行ったけど、


(幸せが訪れるか……僕は、先が無いんだよね。

魔法でも、超科学でも治せない病気だから)


このあと僕はゲームに集中する。


 ゲームの展開は、戦艦が突如現れたワームホールに吸い込まれるという展開で、

次回が気になるところだったが、


(……あれ?なんか体が熱いぞ?息苦しい……意識が遠のく……ああ、もうだめだ……)


そしてゲームの続きが気になったまま、僕の意識は途切れた。


 次の瞬間、僕は真っ白い空間にいた。


「もしかして僕、死んじゃったの……」


すると、


「その通りよ」


突然、その人は現れた。金色の長い髪に碧い瞳、肌の色は白く、

絶世の美女という言葉にふさわしい人だった。


「あの~あなたは?」

「私は神よ。あなたのいた世界とは別の世界のだけど」

「はぁ~?」


確かに女神さまの様な容姿だけど、服装は、運送会社の配達員のような格好だった。


 僕は、思わずその人に尋ねていた。


「その格好は?」

「これから、配達に行くのよ」

「神様が配達?」

「私ねえ、通販サイトを運営してるの、商品の開発から配達まで一人でやってるの」

「え!そんな事してるんですか!?」

「そうよ」


と言った後、


「それより、説明しないとね。あなたは、生前、転生石を拾ったのよ」

「転生石?」

「こんな奴」


頭にビジョンが流れ込んでくる。それは僕が昔拾い、

お守り代わりに、病室に置いていた不思議な石である。


「今頃、役目を終えて、砕け散ってるはずよ」


転生石を拾った者は、死の間際の願いを、記憶をそのままに、

転生と言う形で望みを叶えてもらえるという。

つまりは異世界転生ができるって事だ。


(物語だけじゃなくて『来訪者』には、実際に異世界転生したって人がいるけど、

まさか僕が経験する事になるとは)


なおこの石は、とある神様が、

自分の命と引き換えに産みだし数多の世界にばらまいたという。

因みに、転生先の神様は、説明役をするとの事。


「かなう願いには限界があるけどね」


とも言った。ここで僕は、病室であった人の事を思い出す。


(もしかして、あの人は、この転生石で転生した人なんじゃないか、

おそらくファンタテーラに転生して、ゲートで戻って来た)


もちろんそれを確認するすべはないけど、間違いないと思った。


 そして、


「貴方の願いは、ゲームの続きがしたいだったわね」


確かに、意識が遠のく中、ゲームの続きの事を考えてたから、

それが願いになったんだろう。でも続きが気になるのは事実だったから、


「はい!」


と答えていたけど


「残念だけど、それはかなわぬ願いだったわ」


その答えを聞いてがっかりしたが、


「まあ、代わりにゲームの存在を現実化させて、私の世界の一つに顕現させ、

貴方を主人公として、転生する形になるわ」

「えっ?」

「でも、転生石が叶える願いは、私の管轄外だから、

文句は言わないでね。私は説明役に過ぎないんだから」


と言いつつも


「それじゃあ、新しい人生を楽しんで」


次の瞬間、再び意識が遠のいた。

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