第36話 コスモスさんってやっぱり…

涙目になっている彼女の考えていることはなんとなくだけどわかる。 野薔薇さんのお母様の〝今度こそ娘にきちんとお見合いをさせるんだから〟という強い意志に勝てそうな感じがしないんだろうなぁ。



「私がお見合いに乗り気じゃないのに、真剣に私とのお見合いを考えてくれてる相手に申し訳ないなって…」


「蝶々のママが勝手にセッティングしたんだから蝶々が罪悪感を感じる必要ないよ!。それにぼくが心配してるのは相手が蝶々のこと気に入っちゃうことだよっ」



しばらく俯きながら黙っていた野薔薇さんは、顔をあげて「お母さんの注文も全部聞いた上で、お見合い、行くわ」と覚悟を決めた様子で告げた。



「私にその気がないし、お見合い相手に申し訳ないから、もう今後お見合い話を持ってくるのはやめてって説得する。私の話を聞いてもらうためにも、今回はお母さんの言う通りにするわ」





────エイリアン2人と大学生の前でそう断言してから数日が経過し、お見合い当日。



「俺はゼミがあるから大学行くけど、フラフは今日どうするの?」


「はぁ?蝶々が他の男に取られないように見張るって朝も言ったでしょ?」



言ってた。本気じゃないだろうと思った俺が馬鹿だった。



「迷惑になるといけないし、やめろって」


「大丈夫。コスモスも一緒だからお前は来なくていいよ」



なんだよそれ。ていうか…



「コスモスさんが?」


「うん。もし蝶々がお見合い相手と上手くいっちゃったら、もう居候出来なくなるんじゃない?って言った」


「それで行くって言ったのあの人?」



「違う」と苛立たしげに続けるフラフ。



「お見合いするりょうてい?ってとこの料理が気になるから、ついて行ってやるって」



コスモスさんってやっぱり……いや、本当に料亭の料理が食べたいだけな可能性もある。

なんせ相手は地球外生命体。読めねぇ



「野薔薇さんに迷惑かけんなよな」


「うん。野薔薇の嫌がることはしないよ」


「ん。じゃあ気をつけて行けよ」


「はーい」



物凄く心配だが、コスモスさんからもらっていた連絡先に「今日はフラフをよろしくお願いします」とメッセージを入れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る