第37話 名前という共通点
岳春が大学へ向かってからしばらくしてフラフも出かけた。
蝶々に朝食を作って出てきたと言うコスモスと合流し、蝶々より一足早く料亭へと向かう。
「準備に抜かりはない?」
「ええ。蝶々さんのお母様が完璧主義なおかげで、事前にどの個室でお見合いをするのかがわかったので、その隣の個室を予約しておきましたよ」
のんびり食事を楽しんでいると、13時、隣の個室に人の気配がし始めた。
「来ましたね」
「うぅぅ…蝶々の着物姿見たい」
「やめろ。それに声を落としなさい。ここは庭で全個室が繋がっているんですから、大声を出したら聞こえますよ」
「くそぉ…コスモスに怒られるなんて…。でも蝶々に迷惑かけたくないから気をつける」
庭側に座布団を持って行き、聞き耳を立てるフラフを可愛げのあるやつだなと思いながら、お吸物に口をつける。
───2人が隣の部屋にいるとは知らない蝶々はというと…
「こ、こンにちヮ…」
いきなり声がうわずって、早く帰りたいと泣きそうになる。
断ること決めている相手と2時間弱食事するというのはかなり緊張する。申し訳ないし、変に気を持たせてもいけないという妙な緊張感だ。
「わぁ、素敵ですね」
「あ、え?この着物ですか?。素敵ですよね、レンタルなんですけど」
苦笑いしながら座布団に座ると、「いえ、野薔薇さんがお綺麗だなと」と控えめに笑う着物の男。
「
「野薔薇蝶々です。変わった苗字ですね?」
「ああ…花に星と書いてかぼしって読むんですけど、名前といい苗字といい小さい頃から女の子みたいだとよくからかわれまして…」
「ああ…わかります。私も野薔薇に蝶々なんで、最初に持たれるイメージが大体お嬢様とかで笑」
「そうそう、イメージを持たれてしまいますよね。それがまた自身とは全然異なるイメージで困ってしまって」
まさか名前の話で盛り上がるとは。
「でも気に入ってるんです、自分の名前。花星は桜のようですし、蜜野も花の沢山咲く野原みたいで。あ、僕花が好きで」
「私も自分の名前、苦労も多いですけど嫌いじゃないですよ。お花、好きなんですね?」
「ええ」
意外にも話はこの後も盛り上がり、箸も進む2人であった。
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