第35話 お見合いは決定事項

「え…」


「き、綺麗すぎる…」



戻ってきた彼女は美形の男性にしか見えない。



「本当に蝶々?」


「そうよ。私、男装が趣味でAGEHAとして活動もしてるの」


「あ!AGEHAってあのAGEHAですか?知ってます知ってます!!」



友達に勧められて、生放送を見たことあった。心地いい声音だから、勉強しながらいつも流し聴きをしている。

こんなに身近にAGEHAがいるなんて。しかもエイリアンを居候させているという共通点まであるとは…。



「あら嬉しい。ありがとう」


「声までかっこいい…ぼく蝶々のこともっと好きになっちゃう」



野薔薇さん曰く、前回のお見合いの時にはこの格好で向かったらしい。趣味が男装であることを隠すのは相手にも自分にも失礼だと思い真摯に向き合った結果らしいが、野薔薇さんのお母様はよっぽと彼女がお見合いが嫌でふざけているのだと思ったらしい。



「でも今回はお母さんのチェックが入るはず。たぶんそろそろ…」



物凄い勢いで通知音が鳴り続ける。

「ほら」と蝶々さんはげんなりしながらお母様とのメッセージを俺たちにも見えるように見せてくれた。



「こっちで着物用意してるから早めに来なさいとか…他にも色々書いてあるね」



丁寧に、着物を写した写真まで添付してある。綺麗な紫色のお着物だ。



「お見合いの日程は次の土曜日の13時!?」


「あー終わった……。配信の予定してたけど、日曜日に変更しなきゃ」


「蝶々さん…そちらの心配も大事でしょうが今はお見合いの方をどうするか考えないと」


「考えたところで、お母さんが持ってくるお見合い話は決定事項なのよ」


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