第33話 鳴り響く電話

「あら、ダメじゃない。特にコスモス」


「蝶々さんの心は読んでませんよ?」


「うぅ…確かに他の人の心を読んじゃダメってルールは設けてないけど…」



ルール?



「ああ、そうだわ。岳春君、フラフ君との間にルールは設けた?」


「こいつ約束守ってくれないんで」



拗ねてみせると「告げ口最低〜」とフラフに怒られる。理不尽…



「フラフ君、お互いにとって居心地のいい居候ライフを送りたいならルールは設けたほうがいいと思うわ。じゃないと、岳春くん疲れちゃうよ」


「……」


「岳春くんのところにいたいんでしょう?」


「…わかったよ」



野薔薇さんに諭されて、ルールを設けることを了承した言質を取れた。野薔薇さん、恐るべし。



「さ、難しい話はおしまい。アフタヌーンティーを楽しみましょう」



ゼリーを食べながら紅茶を楽しんでいると、電話の着信音が鳴り響いた。



「うっ…」



野薔薇さんが呻くと「何方からですか?」とコスモスさんが問う。



「お母さん」


「蝶々のママ?。僕も話したい」



色々ややこしくなるからやめろと言う前に、野薔薇さんが震えながら電話に出る。

彼女のお母様の声は大きく、俺たちにも会話の内容が聞こえてしまう。



『蝶々元気?』


「う、うん。元気だよ」


『次の週末予定とか入ってないわよね』



断定だなぁ。



「デ、デートの予定が…」


『そんなわかりきった嘘つかないの。またお見合いの話が来てるから、今度こそ前回の時みたいに男装なんてしてこないこと。いいわね?』


「え、ちょっと…」


『じゃあね』



無慈悲に切られる電話。

野薔薇さんは大きな深呼吸をすると、真顔で俺たちを見る。



「緊急事態よ」

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